遠野誉の妖怪騒動記1 (講談社ラノベ文庫)

【遠野誉の妖怪騒動記 1】 幹/しきみ 講談社ラノベ文庫

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両親が残してくれた洋館に一人残され、慎ましやかな生活を送っていた遠野誉のもとに、突然知らない少女が妹と称し現れた、しかも三人も。特に小春は兄妹に対しておかしな認識を持ち、一日中誉にベッタリ。その光景に違和感を持つ者はおらず、オタク上級者の先輩は「ギャルゲー設定に目覚めたか!」と盛り上がる始末。困惑する誉の前にやっと現れてくれた理解者は幼馴染の御玉音々だった。彼女が陰陽師であったことも初耳の誉だが、更に妹たちは妖怪だと聞かされる。妹を演じる妖怪娘たちの目的を問うと、彼女らを誉のもとに送り込んだ者が居たことが判明する…。誉の周囲で妖しい陰謀が渦巻き、穏やかだった日常は闘いの生活へと変貌する!?
しがらみにも御役目にもルールにも縛られる必要はない。それが正しいと信じたのなら、正しくなくても大切だと思ったのなら、それを貫けばいい。というと無法になってしまうんだけれど、前例に拘ることが秩序の維持につながるわけじゃないんですよね。時として前例を無視して柔軟に対応することで、破綻から脱し障害を乗り越えることが出来る、というのを示したのが前前作の【神様のお仕事】であり、前作の【ユア・マイ・ヒーロー】だったわけなんだけれど、実のところ判断を試されそうなのは主人公の誉氏ではなくて、御玉音々の方っぽいのよねえ。誉の方は、その手のしがらみから根本から解き放たれているようなんですよね。その出自のせいなのか。これまでの作品の主人公が「神様」「ヒーロー」であるのに対して、今度は「魔王」となるのですから、そりゃ秩序を守る立場ではないもんなあ。彼の揺るぎのない流されっぷりは、芯が無いのではなく真芯があってその他は鷹揚としているから、という風にも見える。普通、いきなり朝起きたら見知らぬ妹達が以前から居るように家でくつろいでたら、どれほど肝が据わってても混乱したり動揺したりするものなのに、動じる素振りすら見せずに成り行きに任せてしまったあたり、なんて気合の入った流され方だろうと逆に感心させられたほどだもの。
でもなるほどなあ、この超然とした態度は、神様のたぐいと似ているといえば似ているわけで、ちょいと俗から踏み外してるわな。音々さんが若干ストーカーっぽく密着するほど目が離せなくなってしまったのもわからなくはない。わからなくはないけれど、御剣家の妹もかなり病んでたきらいがあったのを考えると、護三家の女性陣は概ね並外れた執着心の強さの持ち主なのかもしれない……やあ、でもデビュー作の巫女さんが一番なんだかんだと病んでたのを思うと、この世界の女性の半分くらいはヤンデレ気質があるのかもしれないなあw
まあどう考えても、音々姫さまが幼馴染よりも家の御役目を優先するとは思えませんけれどね、これっぽっちも。自分の人生の大半を、誉のために費やしちゃってるのを見てしまうと、どう考えても千鳥とか茜サイドのヒロインですw

しかし、誉の正体となる妖怪って、マイナーなのかメジャーなのか微妙なところですよね。【うしおととら】には出てましたけれど、【稲生物怪録】を知っている人なら、というレベルの知る人ぞ知る、という知名度なのか。
むしろ、正体が気になるのはオモイカネ様の巫女さんの方なんですけどね。あの人、絶対何かしらの背景というか設定がございますよ。

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