竜は神代の導標となるか (電撃文庫)

【竜は神代の導標となるか】 エドワード・スミス/クレタ 電撃文庫

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地方郡主の子カイ。武道はからっきしだが、頭はよく回り口も達者。幼馴染のエレナを許嫁とし、ささやかな領地を継ぐ。待つのは平凡だが幸せな人生。だが王都の政変により、それは一変する。王国軍戦略参謀ウェイン・グローザが王位を狙い兵を挙げたのだ。エレナが王位継承権を持つ血筋であったことから、カイは戦乱の只中に巻き込まれていく。統治者たちは絶対的な武力を有している―鉄騎竜と呼ばれる巨大兵器を保有するのは領主以上の階級だけ。地方郡主が太刀打ちできるものではない。だが、カイは違った。彼には鉄騎竜を超える竜とそれを乗りこなす才能があり!?
作者、もろに外国人そのままの名前なんだけれど、メディアワークス文庫などから本を出している人で、少なくとも翻訳本じゃあありません。どうしても初見、あれ?と首を傾げてしまうと思うんですけどね。タイトルも非常にわかりにくいんだけれど、かなり正統派の戦記もの。それも、中世的時代背景に巨大人型兵器が運用されているタイプ、ということで古くは【聖刻】シリーズ。最近では【ナイツ&マジック】シリーズなんかに類する戦記モノですなあ。わりとサクサクっと進む上に、群像劇や戦国モノと違ってあっちこっちに有力者が点在しているという誰が敵で誰が味方か安易に判断できない複雑な構造のものではなく、シンプルに強大な敵に対して辺境から旗を上げ、勝利を重ねて戦力をまとめあげて反抗勢力を作り上げていく、というお話。
珍しいのは、主人公がヒロイン一筋というところですか。元々婚約者だった幼馴染が、王都の政変で王位継承権一位に繰り上がってしまい、権力を握った反逆勢力に命を狙われてしまったところを、逆に旗印にして彼女を女王として対抗することになるのだけれど、この二人がまた仲睦まじいことでちょいと他が割って入る隙間ないんですよねえ。ともかく、幼馴染を守るため、という大義と自分と祖父が創りあげた新たな兵器を実戦で試したい、という欲望、それに野心がうまく調和して、ブレなく戦いに挑める態勢が整っているので、余計にサクサクと進んだ印象が強いのかも。特に、好きな女の子を守るために戦う、という理由は動機としては実にパワフルになれるものですし。一方で、自分と祖父が研究で発見した新たな動力源を、今までの産業、ひいては一般人の生活レベル、文明レベルを発展させるための起爆剤にしたい、という大きな志を持ち、同時にその新技術・新概念が戦争をより酷いモノにしてしまうだろうという恐れを抱き、と少年の身にとっては大きすぎる大望とそれに伴う責任を背負ってる子なんですよねえ、この主人公。でも、そんな彼の夢と恐怖を、ヒロインのエレナがきちんと理解していて、一緒に共有しようとしているのが、本当におしどり夫婦めいてきて、微笑ましいというかほわほわしてしまうというか。普段はハツラツとして強気でカイの背中を叩いて叱咤するような娘でありながら、いざとなると凄く抱擁力が大きい子で、このカップルは思わず見ていて目を細めてしまう二人です。
今のところ、彼らの周りには両者の親や家臣、近隣の親戚づきあいしている諸侯などしっかりとした大人が揃っているので、決して人材として足りてないわけじゃないのですが、もうちょい特徴的な将帥文官が出てきてくれるといいんだけれど。なにしろ、敵さんの方が基本有能な人ばっかりなんですよねえ。
一応、カイたちの側にはカイと爺さんが開発した新エネルギーが、わりと量産きく形で存在しているのですが、はたしてそれをどこまでアドバンテージとして利用できるのか。まだはじまったばかりですし、本格的に動き出すのはこれからか。