ワールドウォーカーズ・クロニクル 異世界渡り英雄記2 (HJ文庫)

【ワールドウォーカーズ・クロニクル 異世界渡り英雄記 2】 翅田大介/い〜どぅ〜 HJ文庫

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次なる“異世界”は現代日本!?

元の世界から“塔”を通じて、エリザ、ミュートと共に3つ目の異世界へ移動したヴィル。そこは現代の日本、東京のとある家の浴室だった。他の人には見えないという“塔”が3ヶ月前から突然見えるようになった天才少女・月詠ナナミは入浴中の闖入者に驚くものの、“塔”が見えるというヴィルたちに興味を持ち、共に“塔”の謎に迫ろうとする。
後書きでひたすらにろくでなしについて語りつく作者が何かに目覚め始めていてワラタ。うん、そりゃあねえ、かっこよくて自立した女性を書くことに関して前作以前から一流のものをもってるこの作者さんがさ、あんまり惰弱なヒロインを書けるとは思わなかったですよ。このヴィルみたいなガチのロクデナシに惚れてしまう女性って、それはそれで相当にダメな人しか無理だと思うんですよね。だがしかし、メンタル的に弱い系のダメ女性をヒロインとして翅田さんが描けるかというとどうしてもイメージ湧かないわけです。だから、このロクデナシがモテるためにはどうしたらいいか、と首をひねった結果としてヒロインもロクデナシにしてしまえばいいんだ! となる思考展開には思わずゲラゲラと笑ってしまいましたがな。ひどいなあ、もう。
というわけで、メインキャラが押しなべて「ロクデナシ」揃いというとんでもない作品に。
前回、ヴィルにこっぴどく振られた結果、堅物真面目キャラから異世界デビューを果たしてしまったエリザのロクデナシ度が留まるところを知らないアゲアゲ状態に。もう、凄いキャラになっちゃってるよ、これw
開き直った女怖い。
こっぴどく振られた仕返しに、振ったのを後悔させてやる、と奮起する女性は少なくないかもしれませんけれど、振った当人にここまで直接的にガンガンイビリ倒そうとする人はそうそういないですよ。もう引きつった笑いが止まらないというかなんというか。超肉食化すぎるw 色仕掛けどころじゃなくガチで襲いかかってるしw
一方で、ヴィルの相手以外だとナナミやその友達への丁寧で礼儀正しい振る舞いを見せていて、元々の生真面目で品行方正な女騎士だったころの性質はきちんと残っているんですよね。
好きな相手を振られてもなお未練がましく追いかけている、というのならもうちょっとみっともないというかアレな部分もかいま見えると思うんだけれど、エリザの場合はガチで恨みつらみ入ってるからなあ。もちろん、今でも好きという気持ちは残っているんだろうけれど、あの酷い振られ方が「思い知らせてやる」という方向に感情値を全振りさせてしまっているだけに、本当に面白いことになってる。
しかし、ロクデナシになるということはそれだけ倫理的にも捨ててしまっているモノも多いわけで、そのせいかしらないけれど、今回のエリザ、メインヒロインとして大丈夫なのか、と思わず心配になってしまうほど裸族状態で。エリザさん、あんたそれだけロクデナシになってしまいながら、その乙女めいた初体験幻想はちょっと無理がありますよ?

確か、行く先々の異世界で現地妻をゲット、とかいうアレなコンセプトがあったようななかったような気がしないでもないですけれど、その辺はちょいとズレてきてる気がする。なにしろ、ナナミってば現地妻じゃなくてこの場合完全に共犯者とか同類とか似たもの同士、という感じでしたもんね。まだ、自分の異常性を気に病んでいたあたり可愛げがあったのかもしれませんけれど、そういう自分を受け入れてしまって開き直ったあとの有り様ときたら、殆どヴィルとおんなじレベル、方向性のロクデナシでしたもんね。下手に科学知識を持った天才な分、マッド・サイエンティスト方向にぶっ千切っていきそうな気配もあるし。
これだけロクデナシな人間を揃えていってしまうと、ストーリー進行が暴れ馬の如く振り回されそうで、いいぞもっとやれってなもんである。

今回、訪れた異世界はまさかの現代日本、とは言い切れない伏線がチラホラと幾つかのセリフから伺えたのだけれど、ともかく最近は中世レベルの異世界やゲーム世界に行くばかりで、そっちサイドの住人が現代文明レベルの世界に迷い込む話は珍しかったので、そのあたりのギャップ体験もなかなか楽しかった。と言っても、ヴィルにしてもエリザにしても、適応能力がありすぎて文明レベルの差に戸惑う様子はあんまりなかったんですけどね。むしろ、よく馴染んでいるからこそ、時々垣間見せる驚きの様子が面白かったというべきか。その馴染みっぷりが面白かったというべきか。いずれにしても、一度こうして現代レベルの技術や概念に触れて理解を得ている以上、今後訪れる異世界でも現代で得た経験値は色々と役立ちそうで興味深い。

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