監獄学校にて門番を (2) (電撃文庫)

【監獄学校にて門番を 2】 古宮九時/やすも 電撃文庫

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監獄学校の危機を救ったクレト。ニートだった彼も、門番として仕事に慣れてきた矢先――突然、身体が小さくなった。彼の監督役である羽人族の指輪生・ジリアからは、ブラコンチックに普段よりも"良い子良い子"と可愛がられる始末。そんなドタバタの中、監獄学校に一人の少女がやってくる。
彼女は、死んだはずのジリアの幼馴染みで、最強の≪腕輪生≫――。
監獄学校に潜む巨大な魔物や、地下牢に封印されていた種族英雄が復活!
熾烈なバトルも注目の第二巻!

功罪相半ばする。どんな物事にも往々にして良い側面と悪い側面が混在するものです。また、善意によって作られたものが悪しきものを生み出すこともあれば、決して良い思惑で作られたものでなかったとしても思わぬ良い結果が伴うものもあるでしょう。白か黒かなんて、簡単に分け隔てられるもんじゃない。
しかし、悪である1面をばかりあげつらい、それに伴うすべてを全否定しようとする者は決していなくならない。
間違いは正すべきでしょう、それは当然だ。しかし、間違いを糾弾する人の言う事がだからすべて正しいなんてのは、また見当違いの話なのだ。

それは間違っている、だからそれを指摘する私の考えは正しい、だから私の考えを否定する者は間違っている。

この物語に登場する彼女、ルルゥのロジックを端的にしてみれば、こんなもんじゃなかろうか。彼女の確信に満ちた学園の在りよう、そして羽人族が置かれた状況に対する糾弾は、おそらく正しいのだろう。彼女の語る悪しき形は、正されるべき社会の歪みなのだろう。だが、彼女の滑らかで澱みのない物言いは、迷いも躊躇いもない思想は、だからこそこの上なく気持ち悪い。
彼女の理論武装はジリアに対話を試みているようでいて、その実まったく聞く耳を持っていない。答えは既に出ていて、それにそぐわぬ意見は一顧だにされない。理解しようとする素振りすら無い。
対話が成り立たず、会話すら噛み合っていないような気持ち悪さが付きまとっている。
凝り固まったそれは、いわば不変の一つなのだろう。先の大戦の終焉に不死の呪いをかけられたクレトたち、クレトはその呪いの本質を、何が最も最悪なのかを、決して変わらないことと言っている。肉体の不変以上に、思索思想、そういった精神・意識に変化が生じない、考えが変わらない、停止してしまっている事こそが呪いなのだと、語っている。
改変を、革命を語りながら過去へと戻ろうとし、その手段として不死を求めようとしているルルゥが、既に不変に足を踏み入れているのは、皮肉なのか必然なのか。

でも、クレトが自身を不変の怪物と思っているのなら、それはある意味ジリアの言葉をまったく見向きもしないルルゥとクレトも同類、という事になるんですよね。本当の意味で、クレトにも生きている者たちの言葉は届かない、と。セーネが抱いている苛立ち、絶望はやはりそれに類するものなのか。
でも、セーネは自分で思っている以上に良い仕事をしていると思うけどね。本当に彼が何も受け付けずに変わらない、その場に立ち尽くして変わっていくものたちを見送っていくだけの存在なら、果たして生徒たちを信頼して、なんて振る舞いがあの危機的な場面で出来ただろうか。
彼の言葉を受けて、あの道を外れてしまっていた竜人の青年ディサロスが、自らを省みて新たな道を模索しはじめることがあっただろうか。心変わらぬ者に、幼馴染との決別に傷つくジリアへ、毅然と立ち向かう芯を与える事ができただろうか。

クレトはまだ、自分を過去の牢獄の中に閉じこもったまま、現在から未来へと歩いて行く現代の若者たちを見送っているつもりなのだろう。隔離された不変の時の中に置き去りにされて、佇んだまま遠ざかっていく者たちを見送るつもりなのだろう。
でも、そうなのかな。
一巻の時よりも確実に、クレトの立っている位置は未来に向かって走ろうとしているジリアたちの側にあるように見えた。過去に無かって逆走しようとしているルルゥとジリアたちとの対比の中で、クレトは離れた場所ではなく確かに、ジリアたちの傍らにあったように見えたのだ。
今回、青年版の人形の肉体を壊されて、一時的に子供バージョンの人形で活動していたクレトだけれど、表紙のようにジリアが随分と構って彼を抱き寄せたり、膝の上に乗せて撫で回していたけれど、そうしたスキンシップが不思議と薄皮一枚分なにかが挟まったように隔てられていた、クレトとジリアたちとの間を自然に埋めていたような気もするんですよね。ただのふれあいだけれど、シンプルに触れ合うということが彼と彼女らが同じ時間の流れの中にいるという実感を伴わせてくれたというべきか。
クールな女性であるジリアは、決して情熱的にクレトを引っ掻き回し引っ張りまわして、閉じこもろうとする彼を「此方側」に引きこむなんて真似はしなかったけれど、それでも十分、彼を無意識に口説いていたようにも思えたなあ。
何気に、異種族婚について興味津々な素振りも垣間見えましたし。いったい、何を考えてました、ジリアさんw

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