落ちてきた龍王と滅びゆく魔女の国VII (MF文庫J)

【落ちてきた龍王と滅びゆく魔女の国 7】 舞阪洸/よう太 MF文庫J

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レンスールの街で五会頭との会談を終え、ついに“魔女の国”を建国したナーガたち。国都の補強、新たな魔女の一族の勧誘、レンスールの街の商館の設立、エインの砦の維持と、やるべき事が山積みの中、旧教会がカサンドラ王国を異端として討伐するという報せが届く。カサンドラ王国が滅びれば明日は我が身―早くも訪れた“魔女の国”の存亡の危機を前に、ナーガはカサンドラ王国との同盟を提案する。次なる敵は、“最凶”と悪名高きグリスタン率いる第七旅団を含む旅団三個。敵方の兵力は味方の三倍という状況下で、ジュエルジュードと並び称される戦上手を相手取り、凄絶な戦の火蓋が切って落とされる―!大ヒット戦乱ファンタジー、覇道開幕の第7弾!
こ、これはまた思い切った展開へと舵切ったなあ。これはまったくの予想外。フラグとか全然感じ取っていなかった。今となってみればフラグだったのか、という話や設定もありましたけれど、正直あの人に関しては替えが聞かないという意味では、ハリガンやヴィータの族長たちよりも重要な立ち位置だと考えていただけに尚更に。
ギリギリなんとか、実利面でも感情面でも将来に向けての筋道は立てられたものの、これはダメージでかいですよ。一応、後継者候補というべき人材は確保出来てはいるものの、まだ顔合わせが済んだくらいの段階で仕事にしても想いにしても、きっちりと継ぐだけの時間がまるでなかったのが気がかりといえば気がかりなんだけれど、当初の段階に比べると人間側も魔女側も受け入れ体制はかなり整ったといえるので、本当にギリギリ滑り込みセーフ、と言ったところか。それでも、ナーガからしたらとてつもなく痛いはず。ただの部下である以上に、奇跡のように巡りあった同志だったもんなあ。
とはいえ、そのへんの人死の割り切りについては、戦国時代の人間だけあっていつまでも引きずらないのはさすがである。失われたことを惜しみながら、その死に様を見事と賞賛する精神性こそ、戦国時代の人間だわなあ。
ユウキはいつか痛い目みるとは思っていたけれど、ここまでギッタンギッタンにされるとは思わなかった。これも予想外。自業自得の自分が傷つく形で終わるならまだマシだったのよね。でも、自分の増長した考えが死ぬ必要のなかった味方を死なせてしまったのだから、これはダメージデカイわ。
でも、面白いことに彼女の暴走に等しい行動は、結果的に見ると偶然なんだけれど味方の戦線の崩壊を防ぎ、負け戦になりかねなかった状況を辛うじて支え、勝利へとつなげる重要な鍵となりえているわけである。
彼女が調子に乗って無茶しなければ、この戦、負けてしまっている可能性が高かったんですよね。この一筋縄ではいかない行動と結果の因果は、なるほど戦場という混沌をよく表しているなあ、とちと感心した次第。
そして、単に戦場の勝敗のみならず、ユウキの暴走とその代償によって現出した光景は、魔女と人間の歴史においてのターニングポイントにもなったのかもしれないわけで。単に損得のみによって結ばれていた旧教会に対する魔女たちとカサンドラ王国の共闘だったものが、それ以上のもの、個人個人の人の心に新たな時代の火を灯した転換点だった、という意味できっと無駄ではなかったのだと思いたい。
ユウキも、これで大いに覚醒しそうだし。

シリーズ感想