ミスマルカ興国物語 (12) (角川スニーカー文庫)

【ミスマルカ興国物語 12】 林トモアキ/ともぞ 角川スニーカー文庫

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エーデルワイスとキラに連れられミスマルカへと帰還したマヒロが目にしたのは、魔物に蹂躙され変わり果てた祖国の姿だった。全世界規模の災害から民を守るためにキラとの交渉に乗り、管理者として聖魔杯の秘密を語りだすマヒロ。一方パリエルとルナスは、マヒロ救出のためにミスマルカへと駆けていた。はたして聖魔杯は蘇るのか、そして魔物の侵攻を受けた世界の命運は―!?これはただ一匹の、牙よりも、理性を信じた蛇の物語。
こ、この大嘘憑きめーっ!! こ、これほど信用ならん主人公がかつて居ただろうか。マジか、まさかあれがほんまもんの聖杯やったんか。それを、しれっと今の今まで。いや、嘘はついていないのか? 単に本当のことを言わなかっただけで、あれを聖杯だと、ちゃんと明言はしてたのよね。る、ルナスさまーー! あんた、わりと洒落にならないことしてましたよ。
恐るべきは、彼はこれらの秘密を徹底的に理性を以って運用しているところなんですよね。確かに同じ非暴力主義という意味では川村ヒデオと同じはずなんだけれど、そのベクトル、根本はまったく違うキャラクターなんだよなあ、マヒロ王子という人は。やっぱり尋常じゃないわ。
そして、同じく尋常じゃないのはシャルロッテ第一王女。この人が本物の聖杯について把握していたとは思わない。というか、そんなこと頓着してないんですよね。聖杯の真実とか、そういうのはあくまで手段。彼女はその最終目的をマヒロと完全に共有していて、その目的のために必要なのは真実だの何だのじゃなくて、マヒロ王子その人そのものだというのを一切ブレずに一貫して捉え続けている。
必要とあらば、帝国だろうと自分自身だろうとマヒロその人だろうとぶっ潰すつもりで、だ。そこにあるのは、完全なる理性。マヒロにしてもシャルロッテにしてもちゃんと情を持っている「人間」でありながら、尋常ではない理性の怪物として成立している。
正しくこの二人、相棒で共犯者だわ。そりゃあ仲良しにもなろうというもの。この二人がセットになると際限なく暴走してはしゃいじゃうのもよくわかる。一番最後のところで相手の理性を完全に信用しているからこそ、マヒロにしてもシャルロッテにしても、あれだけ感情の赴くままに振る舞える、といえるんでしょうね。

にしても、うむむ、自分、未だここに至ってなお状況を甘く見ていたのかもしれない。どれだけ人類の危機とうたわれても、そんなポッと出の魔王なんて円卓クラスのアウターたちに比べたらどうってことないじゃない、と危機感が湧いてこなかったんですよね。実際、マリーチが復活の際にみせた暴威などかつてのそれと全く見劣りしてませんでしたからね。だからこそ、その円卓がまさか一度あちら側の魔王に敗北していた、という情報はこちらの危機感を根底から揺さぶるものでした。あのリップルラップルをして、そこまで言わせるか!!
円卓のメンバーの質が落ちているんじゃ、という考えも頭にちらついたんだけれど、古参もそれなりに残ってるっぽいしなあ。沙穂が円卓入りしていたのには仰天しましたけれど。単に長生きしてただけじゃなかったんかい。
エーデルワイスに関しては、さすがにそのケースは頭にはなかった。というか、ここまでメンタル弱々だったとは。ここまで一切弱みを見せてこなかったからこそ、敵にしても味方にしても手強い相手ではありましたけれど、事こうなってしまっては蛇の餌食となりますか。

しかしまあ……マヒロが正しく鈴蘭の意を汲んだ後継者かー。マリーチがあれだけ推すのも意外だったけれど。鈴蘭やヒデオと、マヒロやシャルロッテはその冷静さや理性の信奉者という意味で全然違うんだけれど、何が鈴蘭たちの後継者たらしめているのかというと……途方も無い理想主義者だということなんでしょうね、これ。夢見がちと思われるような途方も無い理想を、叶えるべく走り回ってる。それこそ、尋常ではない現実的判断と理性を以って。でも、決して情を捨て去ることなく、あくまで心ある人間として。
ラストシーンは、なんというか感無量でした。行き着くところまで行き着き、辿り着いたなあ。
第二部はこれにて幕。第三部は、やはりタイトル変わりそうな感じだけれど、主人公も変わってくるんだろうか。

シリーズ感想