ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 5 (GA文庫)

【ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 5】 大森藤ノ/ヤスダスズヒト GA文庫

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「リリ達は囮にされました! すぐにモンスターがやって来ます! 」
「…そんな」
「おいおいっ、冗談だろ?」
鍛冶師のヴェルフを加え中層へと進んだベル達。しかし他パーティの策略により一転、ダンジョン内で孤立してしまう。ヘスティアはベルを救うため、Lv.4の元冒険者・リュー、さらには神・ヘルメスと共にダンジョン侵入を試みるが……
「──階層主(ゴライアス)!?」
立ち塞がる最凶の敵が、ベル達を更なる絶望へと追いつめる。希望を求め、決死行が繰り広げられる、迷宮譚第五弾!

『限界まで──限界を越えて己を賭けろ』
暖まってきた!! そう、作品そのものが暖まってきた。これまでは、ベルくん個人の物語だったんですよね。彼を一人前に鍛造していく話だった。それが、リリというはじめての仲間が加わり、ヴェルフが参加することでパーティーとなった。ここで、微妙にうねりが変わってくるんですよね。いや、変わり始めたのはミノ戦からか。あれで、ベルくんの戦いを見て、ロキ・ファミリアの上級冒険者の面々のヤル気に火が着いたように、ベルくんの存在は他者へと大きく影響を与えるものになりはじめていた。彼の「冒険」は、ベルくんだけを飛躍させるものではなく、その冒険を目撃したもの、その冒険を共にした者の成長、そしてハートの飛躍にも繋がりだしたのである。その最初の結実が、まさにこの巻。第五巻。ベルくんの冒険が、リリとヴェルフとの三人のパーティーだけじゃない。タケミカヅチ・ファミリアの、リューさんやヘルメス・ファミリアのアスフィ、そしてあの時18階層のリヴィラにいたすべての冒険者たち、そうモルドのような行き詰まり燻っていたような冒険者たち全部を巻き込み、火を着け、皆を「冒険」へと誘ったのである。
誰もがその背を目で追う、誰もがその場に立ち止まって居られずにその背を追いかけてしまう。居てもたってもいられずに、体の芯に火が灯ったようにがむしゃらに前に突き進みたくなる。誰もがいつしか忘れかけていた「冒険」を、彼の戦いは思い出させてくれる。ただ強いだけじゃない。ベル・クラネルという冒険者の持つ光は、彼個人を輝かせるものではなかった。
階層主(ゴライアス)との予期せぬ激闘は、そんなベルくんの冒険者としての、いや「英雄」としての資質を確信させてくれた。ベルくん一人が頑張り、ベルくん一人が活躍する話だったら、こんなに盛り上がらなかっただろう。彼のパーティーだけでも、これだけ燃え上がらなかっただろう。あの時、リヴィラに居た皆が死力を尽くし、持てる力を振り絞り、自分の出来るすべてを叩きつけて戦ったからこそ、あそこに居た皆の想いが一つにまとまり、同じ方向へと突き進んだからこそ、最後のベルくんの姿が映えに映えたんだろうなあ。
いやあ面白かった。脚本の緩急というか、波の立たせ方も今回うまかったですよね。一度極限状態にまで落とし込んだ上で、そこからなんとかギリギリリカバリー出来て、完全にほっと息をついて緊張を解いたそのあとにあれですもの。うまいこと読み手の意識を引っ張り、引き戻し、振り回す。良いように揺さぶられてしまいました。挿絵の使い方もうまくてねー、あの新しい階層に踏み入る意気揚々としたベルくんたちパーティーの姿と、予期せず深層に落ちてしまいボロボロになった彼らの姿の対比。あれは思わず「おおっ」と唸ってしまった。あれは視覚効果として、一目でベルくんたちがどれほどの危機に見舞われているかをぶん殴るように叩きこむ良い演出でした。
でも、思ってた以上にリリがパーティーの作戦参謀的に立ち回っていて、頼もしいのなんの。頼りになるなあ。個人的に今回のMVPはリューさんですけれど。リューさんいいなあ、カッコイイなあ。

しかしまー、ベルくんの噂のお祖父さんがまさかアレだったとは。アレ呼ばわりするけれど、アレだったとは正直えー、という感じでもあり、なるほどあんな戯けた思想をいたいけな子供に叩きこむゲス野郎といえば、アレらしいとも思えるわけで。いやあ、アレって世界中見渡してもあれほどアレなあれはなかなかいないですからねえ。
神話的にまったくイイ印象、イメージないんですけど、ベルくんにはあれは見習わないでほしいなあ。まあ、本作の神様たちは、アーキタイプからするとロキさまみたいにマイルドになっているように見えるので、大丈夫とは思うのだけれど。