ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア2 (GA文庫)

【ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア2】 大森藤ノ/はいむらきよたか GA文庫

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真っ赤な血に染まる部屋、むせ返る鉄の臭い、 そして頭部を潰された凄惨な冒険者の骸──。

怪物祭の騒動を無事解決したのも束の間、アイズ達は謎の殺人事件に巻き込まれてしまう。
調査に乗り出す彼女達は、上級冒険者を手にかける凶悪な殺人鬼を追っていく内に、都市と迷宮を揺るがす事柄に直面する。
「なに、これ……?」
謎の宝玉をめぐって、地上と地下、二つの舞台が交差し、迷宮都市(オラリオ)に潜む闇が静かに蠢き出す!

これは、もう一つの眷属の物語、
──【剣姫の神聖譚(ソード・オラトリア)】──
時期的には本編で怪物祭からベルくんがミノタウロスの単独撃破を成し遂げるまでに起こっていた話になるのか。
なるほどなあ、物事とは多面的に見てこそ、というものだけれど、このダンまちの物語もまたベルくんが主人公の話だけでは語りきれない質量があり、核心ともいうべき芯となる柱の全貌を描き出すにはアイズという主人公とロキ・ファミリアが必要なのね。
しかし面白い。この段階においてロキ・ファミリアのアイズといえば誰もが知る有名人であり、注目の的であり、言うなれば太陽に照らされている存在であるのに対し、ヘスティア・ファミリアのベルの方は誰も知らない駆け出し冒険者。アイズのような光差す存在の陰に隠れているような有象無象の一人に過ぎないのに。
その本質はむしろ光陰が逆転してるんですなあ。
アイズもまた、ベルくんと同じように自身の強さについて餓え、渇き、もがくようにして掴み取ろうと足掻いている人物でありながら、ベルくんがアイズへの憧憬を以って一途に、恋焦がれるままにひたむきに上を目指している、純性・陽性の渇望であるのに対して、アイズのそれは理由こそまだ不明なもののかなりドロドロとして陰惨なものが根源にあるように見える。マイナスベクトル、或いはぽっかりと空いたものを埋めるために求めるそれは、アイズ自身を非常に面倒くさいものにしてしまっている。アイズの性質が純真無垢であるのが不思議なほどの固執がそこにある。いや、固執しているからこそ不要なものがこ削ぎ取られて、純粋無垢に近い性質へと磨き上げられてきた、と考えるべきなんだろうか。彼女がそれを許されるほど、リヴェリアを筆頭とした仲間たちに守られてきたようにも見えるけれど。リヴェリアはアイズに対して過保護と言われているけれど、それくらい守ってあげないと容易に歪んでしまいかねない脆さや儚さがアイズからは感じられるので、彼女のやり方は決して間違っていなかったような気がする。同時に、このままではしんどい、というのは今回の無茶を通じて明らかになっているので、ベルくんの出現はまさにタイミングとしてタイムリーだったんだろうなあ。
そして、どうしてアイズがベルくんを気にしていたのかがロジカルに腑に落ちた気がする。ちょうど本編五巻で見せてくれたベルくんの英雄としての陽性と、この巻で垣間見たアイズの根源にある陰性。不思議と、ベルくんって、彼のひたむきさや誠実さは根っこにマイナスベクトルや膿んだものを抱えている人を強烈に刺激する、いや刺激というよりも癒してくれる、励ましてくれる、頑張ろうと思わせてくれる柔らかさというか温度がある。だからこそ、男女問わず彼に惹きつけられる人は多いし、アイズもまたけっこうはじめの頃から彼のことを強く意識してるんですよね。なんでアイズがベルくんのことあれだけ気にかけてるのかなあ、と以前は不思議に思うこともあったのですけれど、アイズ側からこうして物語を見てみると彼女が抱えている負債とそれに影響されているメンタルに、ベルくんが無視できない癒やしを与えていたわけで、そりゃあなるほどなあ、てなもんである。
まだアイズの事情や、今回の殺人事件の真相など謎は明らかにされないままで、ロキの調べ物についてもかなりきな臭い事態が進行している気配があり、ベルくんの物語が正道であるのに対して、こちらはまた正しく裏側へと広く深く手を伸ばしている感があり、実に面白い。外伝といいつつ、事態としては本編と同時進行で進んでるしなあ。

とりあえず、アイズは一番可愛いです。一番可愛いです。紐神さまには負けないよっ!
ベルくんに逃げられて超へこむアイズたん、可愛すぎるw

シリーズ感想