天空監獄の魔術画廊 (2) (角川スニーカー文庫)

【天空監獄の魔術画廊 2】 永菜葉一/八坂ミナト 角川スニーカー文庫

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奇跡の島『天空の大監獄』―そこには魔王の血肉と、恐るべき魔術が込められた600枚以上の『魔王の絵画』が封じられている。天空の大監獄に閉じ込められ、看守の任を与えられたリオンは、魔術の力を宿した囚人の少女・キリカ、レオナとともに脱獄の機会を狙っていた。しかしある日『伝説の脱獄王』と呼ばれる囚人・ヴァレリアにキリカを奪われてしまう。キリカに秘められた真の力とは―!?妖しき監獄ファンタジー第2弾!
おお、これなんか本格的に「魔王譚」になりはじめたぞ! 主人公のリオンは、第一巻では絵を描く事に狂っている画狂の類ではあっても、本質的には常識人の少年に過ぎなかったのですが、この『天空の大監獄』の中で看守として、キリカとレオナを守りながら脱出の機会を伺う間に随分とメンタリティに変化が出ていることが伺えるのです。これは作中でも指摘を受けているのですけれど、明らかに後天的な変化なんですよね。良識や安全といったものから縁のない大監獄では、安穏と過ごしていてはすぐさま潰され、女達は奪われてしまう。そんな中では生き馬の目を抜くような注意深さ、隙の無さが必要であり、目的を達するために容赦呵責といったものが削り落とされていく。基本的な部分は何も変わっていないので気づきにくいし、実際キリカなんかは指摘されるまで彼の変化には気づいていなかったようだけれど、リオンのメンタリティというのはかなりシャープに研ぎ澄まされるに至ってるのである。ただ、絵を描くことに無邪気に夢中になっていた頃とはだいぶ変わっている。その分、絵を描きたいという欲求にはさらにドロドロと粘りついた貪欲さが増しているような感じすらあるのだけれど。
その彼の変化の原因というのは、もちろんキリカとレオナの二人の女の存在であり、特に前巻でレオナを失いかけたことが大きな影響を与えているのだろう。絵を描くことにしか興味がなかったリオンが、絵のモデルとして、ではあっても二人の女に凄まじい執着と独占欲を抱いている。その欲が、少年を男に成長させたのですな。リオンの場合、色欲や性欲といった類の欲望が、レオナが命名するところの画欲へとすり替わっているために、18禁なことにはなっていないけれど、今のリオンってライトノベルの主人公としては珍しいくらい「肉食系」なんですよね。
だからこそ、「自分の女」が傷つけられた時の憤怒たるや、凄まじいことになってしまう。こういう激おこ展開は自分的には大好物なんですけれど、ラノベの主人公ってヒロインに対してここまでガッツリとした「俺の女」的な執着を持っているケースはあまりないので、ここでのリオンの振る舞いは実に「魔王」らしくて素晴らしい、堪能した!!
一方の女性陣も、単にリオンに庇護される存在、独占欲を満たす所有物に収まるようなタマではなく、むしろそのイイ女っぷりこそが、リオンを魔王として覚醒させ、彼女たちに対する執着を高め、育てている節すらあるようで。前回、リオンに対して身命すべてを捧げきる覚悟を見せたレオナに対して、今回キリカは彼女とは全く別の方向性ながら、リオンの為に自分の何もかもを賭けられるだけの愛情と信頼を掲げて見せてくれたわけで、こういう男女双方向の自分の身も心も、髪の毛一本に至るまで相手の為に与え合える関係、というのは、ギトギトとした油まみれの濃厚さがあって、体に悪そうなんだけれど、美味しいのよ。絶品なのですよ。
こういう捧げ合う関係は、わりとダメな方向に転落しがちで、レオナの場合は明らかにそっち寄りなんだけれど、それをキリカのいい意味での単純バカっぷり、カッコイイ女っぷりが方向修正してくれていて、痛快なストーリーへと結構強引に蹴っ飛ばしてくれてるんですよねえ。
主人公とヒロインたち、双方の存在がそれぞれを良い男、良い女へと伸ばす相互関係に至っていて、物語に脂が乗ってきてる。これは、さらにどんどんおもしろくなりそうな雰囲気を感じますぞ。
それにしても、キリカはあれだけカッコイイヒロインなのにそれ以上にポンコツヒロインすぎて、かわいい系も掴んで離さないというのは、結構ズルいなあw

1巻感想