魔王の始め方 1 (ビギニングノベルズ)

【魔王の始め方 1】 笑うヤカン/新堂アラタ ビギニングノベルズ

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ただ一人、黙々と地下道を掘り続ける老人。その姿が、突如ぎらぎらと双眸を輝かす若者へと変貌する。
──彼の名はオウル。
人生をかけた研究の末、ついに『魔王』となるべき資格を得たのだ! 手始めにサキュバスの美女、リルと契約すると、彼は自らの国土となる広大なダンジョンの創造へと乗り出していく!
村々から生贄の生娘を集め、迷宮に魔物を配置し、魔王討伐の女英雄に罠をしかけては、人間、淫魔、妖精の女たちを手段を選ばず籠絡して、支配圏を広げていくオウル。
「俺は人間を信じておらん。人は必ず裏切る」
人間不信の魔王が世界に挑む、ダークファンタジー&ハーレムロマン、ここに開幕!
ウェブ版は既読。うん、原作面白かったんですよ。小説家になろうの男性向け「ノクターンノベルズ」で連載していたという作品なので、普通にえっちいシーンありなのですが、そっち方面ではあんまりエロくなかったかなあ。でも、物語としては非常に面白かったのであります、これ。邪悪なる魔法使いを自称するだけあって、人を人とも思わない外道の類であり、残酷な所業を顔色一つ変えることなくやってのける鬼畜の類でもあるんですけれど……このオウルって本当の意味で外道にも鬼畜にも、ましてや邪悪にも成りきれない男なんですよね。所々で、どうしても情を捨てられない瞬間があり、使い捨ての駒として見るべき相手を、時として人として見てしまう。その邪悪なのに、堕ちきれない境界を歩むオウルの、どこかあやふやで危うげな部分に、本来なら彼の支配されているはずのヒロインたちに、ただの支配者と非支配者との関係ではない、隷属しているだけの存在とは違う何かが芽生えてしまうのです。
オウル自身、人間不信の強迫観念を持つに至る過去にある大きな事件があり、それに囚われしがみつき、半ば呪われながら、それに準じて今の行いを強行しているのだけれど、そこには欠落を埋めるために求めさまよう迷い子に似た魂のあり方があり……って、このへんは第一巻ではまだ詳しく触れられていない部分か。
ともあれ、オウルにも、そしてヒロインたちにも喪ったもの、諦めているもの、絶望しているものがその存在の奥深くに埋め込まれていて、言わばこれ、救われぬはずの者たちが集い求め合いお互いに触れてはならない部分に踏み込み合うことで、救いを得る救済と克服の物語だったりするんですよね。単なる男女間の愛情のみならず、わりと家族愛とかそっちにも大胆に踏み込み、踏みにじったり蹴飛ばしたり拾い上げたりもするので、単にヒロイン集めてハーレムハーレムという内容とは一線を画するドラマティックな展開が待ってたりするのです。一度完結まで読んでるんですけれどね、これは書籍化した分ゲットしておきたいなあ、と思ったので購入した次第。
まだ、登場人物が集まってきている最初期段階なので、物語として大きく動き出すのは次回以降か。
そして、最初からわりと幼女無双だったw なんだかんだと、マリーに対して過保護だよねえ、邪悪なる魔術師よ。