運命に愛されてごめんなさい。 (2) (電撃文庫)

【運命に愛されてごめんなさい。2】 うわみくるま/智弘カイ 電撃文庫

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『五十嵐優美が生徒会長に発砲する』六月最初の予言によって、五十嵐センパイは生徒会から追われる身になった。僕のエロ本展示会を開こうとした報いだ、ざまーみろっ…と高みの見物ムードの僕に、なんとセンパイが助けを求めてきた。しかも―スク水を着用していた。ちくしょう!これじゃ助けないわけにいかないじゃないか!!かくして、僕とセンパイの共同戦線が誕生したのである。目指すは権力への返り咲き!!立てよ民衆、集えよ同士!!在りし日のスク水パラダイスを取り戻し、僕を生徒会長の座からひきずり下ろした憎き朝倉朝顔に正義の鉄槌を!!運命に振り回される僕の逆襲がいま、始まる!!
「勢いだけ」「勢い任せ」という、本来なら否定的とされるだろう評価を、まったく逆の「勢いだけで走りきった!」と思わず絶賛してしまったデビュー作から、果たして二巻はどうなるかと興味津々で覗いてみたわけですが……。
すげえ、勢い一切衰えないまま、内容は洗練されてきてる!?
いやいや、本気で勢い任せばっかりで内容についてはかなり乱雑だった前回に比べて、ドタバタ具合の騒ぎっぷりは変わらないまま、その展開、どんでん返しの流れについては雑味が消えていて、かなり洗練されてきてる感があって、かなり驚かされました。これ、売りとなった部分は維持したまま、基礎の部分は向上してるというのは、デビュー作の二冊目としては上々の仕上がりなんじゃないでしょうか。新人さんのたどるルートとしては、いい流れですよ。
しかし、思っていた以上に主人公の皐月って天才じゃないのか、これ? 権力志向のアジテーターという俗物の極みとして、尋常ならざる才能の持ち主ですよ。既に稼働していた既存の組織に後から参加しながら、瞬く間に指導者の管理体制を崩壊させて、事実上組織を乗っ取ってしまい、権力を奪取するためのバックグラウンドとして使い倒す、とかやり口が鮮やかすぎて、ちょっとあっけにとられてしまったくらい。表向き、その組織の構成員たちが望んでいる目的を達成するため、という大義名分を標榜することで、圧倒的な指示を集めて、構成員たちに自分たちが駒として使われていることを一切自覚させないあたり、なんてどんな辣腕の独裁者なのか、と。これだけ、他者から信頼されない人間であり、わりと欲望を垂れ流しにする俗物丸出しながら、これだけ民意を掴んで支持を受け、大衆を動かすに長けている、というのは、これはこれで傑物なんじゃないだろうか。いやもう、大義もなにも持ってなくて、本気で自分の欲望だけ、というあたりでろくでなし以外の何物でもないのですけれど。でも、妙な所で人情があったり愛嬌があったりするので、意外と憎まれない人柄なんですよねえ。ソフトボール部部長みたいに、絶対に裏切らない友情と忠誠を示した人もいるわけで、少数ではあっても妙に人望はあったりする、というのも面白い主人公だよなあ。いやもう、実際言い逃れできないクズなんですけれど、クズなんですけれど、これほどあけっぴろげに堂々とクズいと、それも愛嬌になるのか。クズでゲスくて小物で俗物なんだけどなあ、でも憎めない。まあ、この作品の場合、五十嵐元会長といい、いちごちゃんといい、あけっぴろげにクズい人が多すぎる気もするけれど。ちょっとは隠せ、ちょっとは偽れww
しかし、そんな皐月くんに、何故かぴったりくっついて離れないシーナが、ある意味一番謎だよなあ。彼への態度は辛辣でそっけなくて温度を感じさせない、そんなふうに振舞っているようにみえるんだけれど、客観的に見ると、シーナってメチャクチャ皐月に甘いんですよね。だだ甘やかしてる!! まともに相手してないふりして、皐月のお願い大概聞いちゃってるし。あれ? これってマジでラブコメってる!? シーナってダメ人間属性なの!?ww
皐月のセクハラに対しても、蔑みきった目で見下しながら、実際はあんまり拒絶してないし!!
カノジョ呼ばわりされても、毎回バッサリ否定してるけれど、あんまり拒絶感感じられないし。そして、突き放している素振りの一方で、あのダダ甘やかしっぷり。どれだけややこしい、皐月の自業自得の展開になっても常に一緒に行動して離れないことといい、なんだか見ているうちにニマニマさせられてしまってきましたがな。
そして、ラストのあの明確なジェラシーを垣間見せた態度。デレた、シーナがデレた!
朝倉会長や、こっちもなんか振り切ってしまった五十嵐元会長といい、苺さんといい、あの副会長たちといい、みんなキャラ立ち始めてるし、ちょいとこれは見逃せない作品になってきたかもしれない。

1巻感想