魔術楽譜(グリモワール)の盾2 (MF文庫J)

【魔術楽譜(グリモワール)の盾 2】 花間燈/生煮え MF文庫J

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第四書架の司書、御篝綾の仕事の手伝いをすることになった朋瀬春樹。そこへ、綾の友人であり中央図書館の司書でもある魔術師、アリスとリオナの兄レオンが訪れてきた。目的は封印が解けない魔術楽譜の暗号解読、そして「ボクが第四書架にいる間、春樹のことを試させてもらう」春樹が栞の所有者として相応しいかどうかのテストをすることだった。一方、リオナはとある事件をきっかけに、魔術のスランプに陥ってしまい……。「わたしの翅は大切な人を傷付けてしまう。だからこの檻から出るわけにはいかないんだよ」翅を広げることを恐れた魔術師と、それを巡る奏鳴曲―――。
うわぁ、もう甘いなあ。ふわふわとした、甘い綿菓子みたいですよ、この人の描く女の子の恋は。それでいて、甘ったるすぎずに一途な固さがあるのが、甘さをぼんやりとしたものにせずに、一種の輪郭みたいなものを与える要素になってるのかなあ。
ともかく、恋物語……それも、女の子の心の中で芽吹き、キラキラと輝き出す、キュンとなるような想いの形を描くことに関しては、この花間さんは固有にして特別なものを持っている。いや、恋に至る前の純粋で無垢で形にすらなっていない、無形のふわふわした女の子の心の在りようから、すごく彩り豊かに繊細なタッチで描き出していることが、作品そのものの独特な空気感を引き出してるんだろうなあ。これは大いなる武器なんだけれど、果たして本作のような魔術バトルものでそれを活かしきれていたかというと、そもそも作品と作者の方向性が食い違っていたような気すらするのである。なんで、こういうの書かしたし。
とはいえ、この二巻のお話を見ていると、実際のところはその「魔術」という要素ですら「女の子の恋」という物語を演出する上での大きな舞台装置、或いは重要なツールとして活用をはじめてるんですよね。アリスの物語然り、レオナの恋の始まり然り。魔術という要素が、彼女たちの胸の奥に灯った恋という名の輝きに、大きく作用する物語となっている。面白いことに、魔術バトルものから密やかに「恋と魔法の物語」へと舵切りをしてるんですね。外の魔術師からの介入や、書架に封じられた魔導書の暴走といった危機に対して春樹が立ち向かうことに関しても、実際に戦うという件については申し分け程度で、重要なのは物理的・心理的に傷つこうとしている女の子たちを、いかにして守り支えるか、という点こそが重要で、強い弱い云々ではなく、どれだけ気持ちを通じ合わせることが出来るか、ということこそがメインになってるんですよね。それはつまり、心がよりいっそう近づくということであり、相手の奥に踏み込むということであり、その激しい動的な動きがグルグルと心のかたちをかき混ぜるということでもあり、まさにそれが恋のはじまりになるわけであります。
日常の、普段からの軽やかな触れ合いから徐々に芽生えはじめていたものが、同じ秘密を共有し、同じ
危機を共有し、同じ世界を歩くうちにじわりじわりと育っていく。今回のリオナの女の子としての心の動き、胸の高鳴り、ざわめき弾む想いのありよう。実に甘酸っぱくて、一生懸命で……素晴らしかったなあ。そこに、アリスとレオンという、これはこれで青春している二人の男女の登場が、よりいっそう刺激を高めて、うん、堪能させていただきました。
でも、まさにここがスタート地点というべき展開だったのに……これ、ここで打ち切りなんですよねえ。なんでだよ! 綾さんとの、綾さんの恋はまだはじまってないよ。春樹の恋もまだ動き出してないよ! こっからなのになあ。うう、超美味しそうなお菓子の山を目の前にして、なんて辛いお預けでしょうか。
デビュー作も2巻で片されちゃいましたし、次回はもう少し長く続けられるように祈っております。切実に。

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