神楽剣舞のエアリアル 4 (GA文庫)

【神楽剣舞のエアリアル 4】 千羽十訊/むつみまさと GA文庫

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「ウルザブルンで待っている」
クロの伝言により、雪人たちは、大戦時の武器工房ウルザブルンに航空帆船で向かっていた。

「はるばる会いに来たわたしに対して、甲斐くんの反応はどうかと思う」
しかし、そこで待っていたのは東方退魔機関第二位、「精霊の紡ぎ手」静谷歌澄という、雪人の同僚の女性だった。
彼女がなぜこの世界に――。

そしてクロからもたらされたのは、ウルザブルンが〈悪夢の眷属〉に占拠されているという情報だった。
どこか様子のおかしいフランを気にかけつつ、雪人は海中に隠された武器工房ウルザブルンに挑む。
魔術と剣戟が加速する異世界バトルファンタジー、宿命の第4弾!


あんまり一人で全部背負って突っ走るタイプの主人公には見えなかったんだけれど、当人たちが言うのならそうなのかな。最初の決戦からして、フランに対クロ戦任せてたりしてましたし、ルナや風夕に対しても彼女たちから決断と責任を奪ったりせず、あまりいい顔はしていなかったとはいえ彼女たちの自立を尊重してましたからね。
結局のところ、このシリーズがはじまった段階ですでに雪人って以前の形から変わっちゃってるか、変わり終わる寸前だったわけですよ。読者としては、変化後の彼の様子しか知らないから、ヒロインたちの雪人評はどうも馴染めないというか共有しきれないものがある。ルナリアが合流したのは一巻の後なので、ホントは彼女もこっち側だと思うんだけれど、何故かそのへんは曖昧なり。
ともかく、この期に及んで未だに第一巻の最初からクライマックスだった弊害が出てしまっているような気がする。もう四巻なんだから、いい加減すり合わせ終了してもイイ頃なのに、取りこぼしているものが多すぎるというか、始まる前のぶちまけてしまったものから適時拾ってきているような無計画さが伺えるんだよなあ。
フランの家の事情とか、クラスメイトの話とかその巻で取り上げたっきり、その後まったく出てこないあたりとかねえ。
今度は、雪人の元の世界の仲間がこちらの世界に訪れる、という展開から、昔の雪人くんの様子を知る人を投入することで、彼の為人の変化の具合を知らしめようという意図は垣間見えたものの、どこがどう変わっているのか、過去の雪人の描写があんまりなかったんで、あまり実感が伴わなかったり、とか。そもそも、元の世界でもこの世界でも、折角の歌澄さんとの絡みがあんまり無いのよねえ。そもそも、歌澄さんヒロインじゃないとかw 別に、元の世界でいい関係だった女性をヒロインとして出せ、とは言わないけれど、友達にしても仲間にしても戦友にしても、もうちょっとあれこれ親密さを感じさせてくれるエピソードがないとなあ。折角の元の世界の退魔師仲間というのに、あんまり存在感がなくってワクワクさせてくれる展開のはずだったのに、案外拍子抜けだったような。これは、ラスボス候補として登場したあの人物に関しても同様で、因縁があるにしてもぽっと出の感触しか否めないんですよね。結局、話を盛り上げるために「敵」であり「ライバル」であり「ラスボス」が必要だった、というどうしようもない話しである上に、その役者の出し方が決して上手いと言えず、外から無理やり持ってきた感じなのよねえ。
基本的にキャラの描き方とか設定、話の転がし方自体は面白いし、読みやすいし、読みたくなる文章なんだけれど、全体の構成に大失敗しているのが色んな所に波及して尾を引きまくってるみたいな感がある。うーん、総じて頑張れ、と言いたいところ。

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