ロクでなし魔術講師と禁忌教典 (4) (富士見ファンタジア文庫)

【ロクでなし魔術講師と禁忌教典 4】 羊太郎/三嶋くろね 富士見ファンタジア文庫

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分かり合えていたはずの想いは、無残にも引き裂かれた。
「…実は、わたし、あなた達の敵」
「…う、嘘…嘘よ…そんな…」
天の智慧研究会の魔の手により闇へと堕ちたリィエル。システィーナの説得も空しく、リィエルは親友ルミアを誘拐し―。一方、死の淵から復活を遂げたグレンは、アルベルトとの帝国軍コンビを再結成。反撃の狼煙を上げる!
「…行こうか。頼りにしてるぜ、相棒」
「抜かせ、誰が相棒だ。寝言は寝て言え」
かつての盟友と、囚われし少女たちの奪還を目指す!
な、なるほどなあ。さすがにあそこまでやってしまうと、リィエルは引き戻しようがないんじゃないか、と思ったんだけれど、これはグレンが自分で言っている通りに自業自得という面が非常に強い事態だわ。そりゃあ、リィエルの件をケアもせずに放置したまま逃げ出してたんじゃあ、言い訳のしようがない。こればっかりは時間の経過で良化するようなものではないわけだし、アルベルトもこれ、腹に据えかねても仕方ないぞ。なーんか、結構グレンに対して怒っている素振りを見せていたので、アルベルトの性格からしてグレンのドロップアウトに対してそこまで感情を揺らす要素がなかったものだから、あの苛ついてそうな態度には違和感を感じてたんだけれど、うん怒る。むしろ、もっと怒っていいくらい。リィエルの処遇に対しての厳しい物言いも、リィエルの事情からしてグレンがドロップアウトした時点でそうなってもおかしくなかったのを考えると、グレンに対しての叱責だよなあ。
これだけクールな物腰に反して中身が情に厚いキャラクターというのは、色々と美味しすぎる。もし、アルベルトが男じゃなくて女だったら、これヒロインとして圧倒的だったんじゃないだろうか。ルミアですら、太刀打ちできなかったかもしれない。現状において、教師であるグレンに対して対等であるキャラってアルベルトだけだものねえ。
しかし、グレンも相当に搦め手寄りの使い手だけれど、アルベルトも最強枠だというのに力押しじゃなくて、あらゆる勝ち筋を事前に用意しておくタイプだというのが面白い。これで地の力も並外れてるんだから、そりゃあ反則だよなあ。即興と周到を併せ持つ二人だからか、グレンとアルベルトがコンビを組むと際限なく運用の幅が広がるんですよね。ここに、力押しで全部ぶち壊せるリィエルが加わってたんだから、このトリオ、いったいどれだけ戦果をあげていたのやら。

一方で、面白いくらいに徹底的に潰されたのが、シスフィーナ。なんだかんだエリートだし、才能も豊富で将来有望な白猫さんだけれど、だからこそなのか今は徹底的に叩いて叩いて容赦なく切り刻んでいる感じすらします。ぶっちゃけ彼女、一巻からこっちイイトコロなしですもんね。成長していると見せかけて、更により大きな挫折を味わわす。果たして、彼女の中で渦巻いている無力感、悔しさは如何ばかりか。多少なりとも得た実戦経験や、成長の実感が一度は折れかけた彼女の心を奮い立たせていただけに、この落とし方の容赦のなさはゾクゾクするものがあります。
ここまで手ひどく圧倒的に踏み潰されたら、シスフィーナの内圧はどれほどのものになっているか。彼女の良い所は、その内圧が彼女の芯を歪ませる気配がまったくないところでしょう。悔しさ、自分への怒り、不甲斐なさに対する屈辱、無力さへの恥辱感。そのぐつぐつと煮えたぎるような負の内圧が、しかし彼女の場合フレームの歪みへと波及する様子が一切感じられず、正しくまっすぐ反発し反動し噴火しそうにしか見えないあたり、凄いなあ、と。もうなんか、絶対尋常じゃない化けっぷりを見せてくれそうじゃないですか。
人品の強さを最初から見せていることで、ヒロインとしての強度を見せつけているルミアに対して、システィーナはひたすらに優秀さ故の脆さ、人間としての弱さ、醜態を晒す無様さをぶちまけ続けていますけれど、彼女のこの弱い部分っていうのは、珠玉なんですよね。私は、この弱くて無様な彼女が特に好きなんだなあ。

さて、リィエルの彼女自身も知らなかった真実をはじめとして二転三転する状況は、後編はほぼ状況も明らかになってあとは消化試合かな、と考えていたのを蹴飛ばすような怒涛の勢いで、うん3巻からだいぶ空いたのも納得の出来栄えであり熱量でした。
そろそろ、敵さんの真打ちもその影が見えてきた感じですし、天の智慧研究会やルミアたち王族の秘密など世界の謎に関するあれこれも、段々舞台上にキーワードとして揃えられてきましたし、物語も次の段階に入った感じで、面白くなってきた。

シリーズ感想