となりの魔王 襲来編 (ビーズログ文庫アリス)

【となりの魔王 襲来編】 雪乃下ナチ/ちほ ビーズログ文庫アリス

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平凡な田舎町に暮らす、平凡な女子高校生の瀬野夏織。眩しい日差しの中、畑へ収穫に出てみれば、銀色甲胄姿でトマトを貪り食う―勇者がいました。おかしな魔王様とツッコミ女子高校生が過ごす町に、まさかの勇者襲来!そして2人目の魔王まで登場!?ハートフル非日常コメディ・第2弾!

いやいや、これを嫌わないのは無理でしょう。突然現れた大迷惑勇者。警察ー、警察を呼べー!!
もうちょっと憎めないような愛嬌があればいいのだけれど、これはちょっと親御さん呼んで説教してもらわないと行けないレベル……と、思ったらこの勇者担当の別の魔王が引き取りに来て、対応が完全にやらかしてふてくされているガキと、それを引き取りに来た親みたいになっててワラタ。いや、本当のオヤジなら問答無用でぶん殴っても然るべきなので、その意味ではこの魔王「黄金」はわりと他人ごとの対応なのかもしれない。少なくとも、前回風邪で学校早退することになった夏織を手が離せない家族の代わりに迎えに来てくれた魔王よりは親身ではなかっただろう。「黄金」自体、イイ性格しているタイプの魔王さんだったしなあ。その意味ではこっちの魔王は真面目さんだよなあ。
ともあれ、無礼で非常識で図々しく他人の迷惑を顧みない勇者よりも、礼儀正しく配慮が行き届いている魔王たちの方が、隣人としてはよほど好むべき人材であろう。人の話聞かないのは共通しているけど!!
勇者の証である聖剣にまで見放されてしまうのも当然でしょう。聖剣だって、電車に傘みたく置き忘れられたら怒る、うん怒る。怒った挙句にスネて、選ばれし者しか持てないはずの聖剣が、勇者以外みんな選ばれし者!状態になってしまったのは、何度見ても笑い転げてしまった。
というわけで、イレギュラーの来訪者もあったものの、おおむね繰り広げられるのは魔王の居る夏の日常その続き。非日常コメディーと謳っているけれど、単に魔王が居るだけでそれ以外はほぼ非日常性のない日常コメディーだと思う。相変わらず夏織のツッコミはセリフ地の文選ばずキレキレに冴え渡り、三枝爺ちゃんの魔王転がしも増す増す冴え渡るばかり。三枝爺ちゃんの、あの魔王さんの余り物押し付け攻撃を華麗に交わして受け流した挙句に彼の興味をうまく誘導する手腕は、もはや芸術的な流麗さで果たしてこれ意識せずにやっているのか、ちゃんとわかってやっているのか。一方で、夏織と魔王さんの攻防は激しさを増すばかり。夏織の察知能力も向上してるけれど、魔王さんの手練手管も巧妙化してるんだよなあ。あの冷や麦5束には、爆笑してしまいました。あれは書き下ろしだったから不意打ちだったもんなあ。
今回、勇者に引っかかるのを含めて夏織ってばかなりエライ目遭ってますよねえ。考えてみると、勇者が残していった鎧関係のゴタゴタも勇者の残した置き土産ですし。フルアーマード夏織には出荷されていくところまで込でワラタ。
まあ一番楽しかったのは、「父帰る」でした。単身赴任で家をあけていた夏織のお父さん帰ってくる編。数ヶ月遅れで魔王に対して夏織と同じ反応を見せるお父さんに対して、同じ経験を経ているはずの夏織の反応の冷たいこと冷たいこと。はいはいそれ前にやったから、的な反応はちょっと酷い。これだから女の子は(笑
まあ祖母や母親似なんだろう夏織が、なんやかんやと鷹揚に魔王の存在を受け止めてしまったのに対して、生真面目っぽいお父さんは余裕の無さがモロに出てしまって、大変な事になってしまってるんだけれど、そんなお父さんと魔王の喧々諤々の騒動に対しても殆ど動じてない夏織って、素で大物なんじゃなかろうか。

書き下ろしのハロウィン編と抽選会編。これで取り敢えずの一区切りになるんだろうか。ウェブ版、もうストックなかったんじゃないかな。続きは如何様にも出せそうなので、できれば続編出してほしいところですけれど。
最近、これだけきもちよく笑い転げさせてくれる巧いコメディも少ないですからねえ。

1巻感想