東京侵域:クローズドエデン 01.Enemy of Mankind (上) (角川スニーカー文庫)

【東京侵域:クローズドエデン 01.Enemy of Mankind (上) 】 岩井恭平/ しらび 角川スニーカー文庫

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“東京”が変貌して2年―高校生の秋月蓮次と、大人気アイドルの弓家叶方には二人だけの秘密があった。二人は“臨界区域・東京”に侵入する“侵入者”だったのだ。エリア限定の特殊能力“注入”を使って探索を続ける蓮次と叶方。敵対する政府機関“救務庁”と、エリア最悪の怪物“EOM”との三つ巴の状況で、蓮次と叶方は誓いあった“約束”を果たすことができるのか!?人類vs.人類の敵―希望と絶望のボーイミーツガール始動!!
また尋常でなくゴリゴリと削ってくるなあ。
とにかく主人公蓮次とヒロイン叶方を追い詰めて追い詰めて絶望を煽るような展開なのだけれど、残酷なのは彼らの絶望が他と共有されてないところなんですよね。世界の滅亡、人類存亡の危機的状況、とまでは行っていなくて、東京こそ異界に沈んでしまったものの、何とかそれ以外の日本は平穏を取り戻しつつある。失った土地、失った人々への傷こそ残っているものの、東京以外に暮らす人達の大半はそこから目をそらして日々に埋没するだけの余裕を取り戻してしまっている。蓮次一人にしたって、家族とすらその絶望を共有できていない。
凄まじいまでの孤立感、孤独が付きまとっているのだ、彼らの絶望には。
だからこそ、その絶望を共有し、同じ希望にとりすがり、唯一の味方として協力しあっている蓮次と叶方の絆は、だけれど絶対ではないんですよね。同じく大切な人を取り戻したいという願いにしがみついているものの、その取り戻したい人はそれぞれ違う人物である以上、どこかで錯誤や食い違いが出てきてしまう。それでも、唯一の味方、ただ一人の同志に、お互い命も何もかもを預け合っている。
えげつないのは、東京内にうろついているEOMという怪物が、エンカウント=死という、出逢えばまず殺される、という理不尽なくらいの難易度の高さなのでしょう。余人にない切り札を持っている蓮次ですら、その切り札を切ってさえ退けられるだけで倒せていないし。これでボスキャラみたいに一体だけならともかく、様々な特殊パターンを持つ何種類もの存在が、フィールド上に無数に展開しているのだから、ゲームだとしたら無理ゲーもいいところである。倒せない敵、出会ったら逃げるしかない敵、そしてまず逃げ切れない敵。むちゃくちゃだ。なので、侵入者の生還率は相当に低いようで、半年生き残れれば大ベテランという有り様。そんな場所に二年間潜り続けている二人は、もはや尋常でない生存能力を掴んでいるのだけれど、それでも注ぎ込んでいるリソースがとんでもないんですよね。抱え込んでいるリスクも常軌を逸している。これで、二人共なまじ他人に知られないように日常生活はちゃんを送っているのだから、十分イカれている。東京から戻った際に、日常サイドに戻れるだけの精神的安定を取り戻すためのインターバルをとっている、というあたりにどれだけ自分を追い込んでいるのかがうかがい知れるところだ。
これで、希望に確信があればまだマシなんだけれど、その取りすがっている希望が、それこそ希望的観測の重ね塗りみたいなところがあって、正直言って命も人生も何もかも掛けるには根拠が薄すぎて見ていられないんだけれど、そんな薄弱な根拠に取りすがる以外に希望がないということそのものが絶望なんだよなあ。
と、ここで話が済んでいたのならシンプルだったかもしれないけれど、蓮次が最後のアタックで遭遇してしまった救務庁の特殊エージェント、その正体が彼と叶方を混迷と更なる絶望、そして希望というには余りにも怪しげで地獄の釜の蓋にも似たもののそばへと叩き込んでくれるわけで。
後がない状況での失敗による、叶方の詰みっぷりがこれまた尋常じゃなくて、アイドルなんて華やかな立場にいるはずなのに、もうあかんこれ! 泥沼に首まで浸かってるやないですか!
上下巻編成ということで、とんでもないところで終わっちゃってるし、ほんと最初からこんなにゴリゴリ削られたら、すでに削れるところ残ってないですよ。

岩井恭平作品感想