絶深海のソラリスII (MF文庫J)

【絶深海のソラリス 供曄 らきるち/あさぎり MF文庫J

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《ランド・デイ》それは、上陸の日。そして、大海害と並ぶ人類史上最大の災悪が始まった日でもある。『大阪事件』以降その存在が明らかになった未知の危険深海生物アンダー。連邦海軍対アンダー専門の特殊部隊《CHAF》に所属するシャロン=ナイトレイは、深い海の底で死の危機に瀕していた。しかし、その時不意に声が聴こえる――「“最愛の妹”の死の真相を知りたくはないか?」と。シャロンを助けた謎の人物はさらに彼女に告げる。我々の任務は「“切り札”山城ミナトを確保すること」だと。【深海】×【絶望】戦慄の本格パニックノベル待望の第2巻。「クロエが悲しむって、本当よ……ああ見えて、あの子とても心配性だから」

前巻で黒幕的な雰囲気を出しまくってたコマキちゃんを、冒頭からこんな風にツッコんでくるとはなあ。
一巻があれだけ素晴らしいパニックホラーだっただけに、あのダイナミックな映画風味そのままに、2巻も映画の続編そのままに、同じような展開でもって攻めてくると思っていたんですよね。思っていただけに、一巻の繰り返しにしなかった決断は大きく頷きたい。あれだけ受けたら、もう一回、と思っちゃうもんねえ。しかし、ウケに拘らずにしっかりとしたスケールの大きいストーリーラインを描いていることがこの2巻を読んで伝わってきたので、想像していたよりも大作感が出てきたので、正直かなりワクワクしている。

しかしなー、問題はアイシュ先輩よ。てっきりさ、あの救われないラストからして、お互いの傷跡を舐め合うようにでろでろの愛欲依存関係に陥ってても仕方ない、というかむしろそうなってろ、と期待していたにも関わらず、このインド姉ちゃん、予想以上にヘタレだったよ!! ヘタレすぎだろ!! そこは、色々と体とか手練手管とかつかって慰めてあげなさいよ。仮にも先輩で年上でお姉さんでしょうに。まさか、なんもできてないとは、挫けまくってるとは、想像を絶するヘタレだ。残念女子だ。それでいて、ちゃっかりミナトに対してはかなり精神的に依存しちゃってるし。この人の空回りっぷりというか空転ぶりというかイジケっぷりは、もうなんか色々通り越して可愛くなってきてしまった。
生徒全員を死なせてしまって、教官二人だけで戻ってくる、という時点でもう絶対に世間から叩かれまくるとは想像出来ていたけれど、海洋事故扱いでアンダーの存在自体抹殺されてしまったのか。
ミナトは、性格からして絶対に陰惨な方に歪んじゃっていると思ってたんだけれど、恐ろしく先鋭化し特化し信念の塊みたいになり陰気で鬱々とした雰囲気を纏うようにはなってしまっているものの、死にたがりというか捨て鉢にまではなっておらず、アンダーを生み出した背景に対して戦って戦って戦いぬく、という強固な意思を持つ戦士のようになっていたあたりは、アイシュ先輩がずっとそばに寄り添っていたから、と考えていいのかもしれない。あのヘタレ女子がぶら下がっていなかったら、もっと一人で深いところにのめり込んでいたような気がしてならない。その意味では、アイシュ先輩のヘタレっぷりは少なくとも最悪へは物事を進めなかったのかなあ。もし、二人してデロデロに溺れてたら、もうちょい退廃的な方に二人共転んじゃってただろうし。
ミナトを幸せにしてあげたい、というアイシュの願いからすると、彼女のヘタレは決して間違ってなかったのかもしれない。アイシュ先輩がどうやっても残念の沼から抜けだせなさそうなのは、この際目を瞑るとして。
こうなると、シャロンが全部持ってっちゃいそうなんだよなあ。クロエの姉であるシャロンとの関係は、クロエを死なせてしまった時点で最悪な状態からはじまると思っていたのだけれど、散々こじれて険悪化、というかシャロンが一方的にミナトを憎む展開としては事故後直後に済ませていて、クロエの死がミナトの過失ではなく、アンダーが関わっていたという事実を知ったことで、思いの外ミナトに対して良好な気持ちで再会なったわけですし。

再び閉鎖空間へと潜っていくところからのあの展開は、最初からかなり「んん?」と首を傾げるような違和感があったんですよね。ぶっちゃけ、一巻の時の迫真性、ショックが感じられなかったのですよ。これは元々アンダーという存在がわかっていたからか、というとそうでもなくて、切羽詰まった感が感じられなかった、というか。そうですね。劇的すぎて、あのどうしようもない力に踏み潰される、押し流されるような唐突で理不尽な無力感が感じられなかった、というか。ミナトくんは、あれですね。あれでもまだちょいと盛りすぎであります。
最初にミナトの能力の内容が語られていた時点で、可能性は思いついていたんで意外の念はなく、むしろあやっぱり、という風情でしたけれど、むしろそれで安心した次第。
もうミナトのキャパからすると、少なくともシャロンとアイシュに関しては亡くすと完全にぶっ壊れそうですし。果たして、主人公の役割を果たせれる状態で居られるか、疑問を生じるくらいにはイカレそうですし。
物語の目的がはっきりした以上、これは抵抗と反逆の物語であって、一方的に蹂躙されるパニックホラーではなくなってますしねえ。
ともあれ、これはすべてを奪われどこにもたどり着けなくなっていた者たちが、戦い理由と得るべき目的、倒すべき敵を見定め、共に戦う仲間を得たリスタートの物語。
一巻のような凄まじい衝撃こそなかったものの、最高のエンターテイメントとして起動に乗る加速を得た第二巻でした。面白かった!

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