いつか世界を救うために -クオリディア・コード- (富士見ファンタジア文庫)

【いつか世界を救うために クオリディア・コード】 橘公司/はいむらきよたか 富士見ファンタジア文庫

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西暦二〇四九年。世界は終わるかと思ったが、終わらなかった。突如として現れた正体不明の『敵』―“アンノウン”と戦争を続ける人類。防衛都市のひとつ神奈川の学園に転校してきた紫乃宮晶。彼の目的は『神奈川序列第一位・天河舞姫を暗殺すること』。しかし『最強』の称号を有し、人類の希望である少女の強さはあまりにも規格外で…。
「のぞきではない。監視だ」
「今は胸を調べている」
「無論、尾行だ」
「変態ではない、調査だ」
「秘密裏に行う家宅捜索だ」
舞姫の全てを知るための観察が始まった!?新世代ボーイ・ストーキング・ガール!!
こ、この人はー。橘さんという人は、【蒼穹のカルマ】がそうだったんだけれど、真剣にろくでもないことをさせるとやっぱり抜群にうまいわ〜。久々にこの作家さんの真髄を味わったような満足感であります。
主人公の紫乃宮晶は実に生真面目な男で余計な邪念など入る余地もなく任務を達成するために真剣に標的である舞姫の観察・調査を行うのであるが、やってることはどこからどう見てもストーカー、盗撮、痴漢行為という見事な犯罪行為! 完璧なまでのアウト! なのだけれど、本人本当に邪な気持ちないんですよね。欲望にかまけているわけではないのである……ないよね?? ないんだよね? 傍目から見てると本当に真剣なので、無いように見えるんだけれど、見えるんだけれど、それにしてもやることなすこと……w
それに、彼の能力って戦闘的にも凄まじすぎるんだけれど、ストーカー的にもさらにすごすぎるんですよね。見えてさえいれば触れるって、何この超々長距離狙撃ならぬ、スーパーロングレンジお触りとか。エロ漫画でも早々お目にかかれない優れた能力なんじゃないだろうか。
これが鼻の下を伸ばしながらやらかしてたら「この野郎!」なんだけれど、真面目なんだ。真剣なんだよ。このスットボケっぷりは、あの【フルメタル・パニック】の相良宗介のコメディのそれに近似するものなんだけれど、橘さんはこういう真剣に馬鹿をやるときは、それこそ手加減抜きに底抜けに馬鹿で「変態!」の方に全力疾走し出すので、たいてい目を覆わんばかりに酷いことになるのである。
でも【デート・ア・ライブ】の主人公の五河士道ってちょっとそのパターンにそぐわないキャラクターなんで、あのシリーズは作者得意のギャグパターンがなかなか機能してないのが、ちと残念なんだよなあ。まだ読んでいない本編最新刊では彼のキャラがかなり変貌するらしいので、期待しているのだが。
と、話は逸れたが、本作においても目を覆わんばかりに残念なのは残念ながら紫乃宮ことシノだけではない。というか、オールマイティーに変態行為をマスターしているシノではあるが、残る連中はガチで変態である。さすが、と言わんばかりの変態揃いである。舞姫の下に集った歴戦たる能力者たち四人の「四天王」。
近年稀にみる四天王である。これに匹敵するのは、さすがに【のうりん】の四天農くらいしか思いつかないw
いや、普通に強かったり有能だったりするからこその四天王なんだけどね。うん、それが基準と思う時代が本作にもありました。違うのね、違うんです。違ったんです。うん、強さが基準ではないのね。
でも、もうどちらにしてもシノはあまりにも適格者すぎて、笑っちゃうくらいハマりすぎてしまう基準でもあるわけです。誰がどう似てもあなたが文句なしにナンバー2ですww

しかし、ヒロインの舞姫は、天真爛漫さが素晴らしいですね。天使ちゃんですね。まさにみんなの舞姫すぎて、可愛すぎる。最強キャラなのに、基本的に初な小娘らしいキャラキャラした甘やかさが眩しいかぎり。これは、みんなのアイドルになるのもわかるなあ。こういう底抜けに陽性のヒロインというのは、どうにも太刀打ち出来ないカリスマ性があって、真面目なキャラほどズドンされてしまうのかもしれない。
一方で、こういうキラキラした娘にこそ、対比として光あるところ陰あり、な娘が並び立てるわけで。シノの本来のパートナーである彼女。もうあからさまに謎と陰謀と後ろ暗い思念を抱え込んでいて、これはこれで実に素晴らしい。
シェアワールドということで、この作品自体長引かずに次の巻あたりで完結するらしいですけれど、長期で楽しめないのが勿体ないくらい期待に違わぬ面白さでした。