幻葬神話のドレッドノート (GA文庫)

【幻葬神話のドレッドノート】 鳥羽徹/赤井てら GA文庫

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剣と魔術を駆使して幻獣と戦う人類の守護者・戦技魔装士。その養成校に入学した御霊志雄と御霊日輪は、早々に新婚であることを発表したり、公衆の面前で盛大に惚気たりとお騒がせ気味。だが二人が伝説級幻獣をたやすく討伐してしまったことで、周囲からの好奇の目は畏怖と尊敬へと変わり始める。そんな彼らの目標はかつて地上を蹂躙し尽くした七柱の神話級幻獣を滅ぼすことだった!異端の天才(夫)×無双の戦姫(妻)、旧き神話に幕を引く、夫婦の伝説が始まる!比翼連理のデュアル・ヒロイックファンタジー開幕!!!
うわぁ、何年ぶりだろう。【オキアヌス】や【ボーイ・ミーツ・ハート!】の鳥羽徹さんが久々に新作引っさげて復活ですよ。特に【ボーイ・ミーツ・ハート!】は抜群に面白かったシリーズだけに、2巻が出て以来パタリと音沙汰なくなってしまって、寂しい想いをしたものでした。
しかし、話がスタートした時点で既婚とは、なかなか意欲的じゃあないですか。完全にメインヒロイン固定ってことですしね。内容を見ても、夫婦仲に暗雲が、というふうな展開を持ってくるような雰囲気の話でもありませんし。出来上がっちゃってますもんねえ。まず結婚ありき、の仲ではなくておもいっきり恋愛結婚ですし、信頼と絆が覚悟と執着によって完成してますからね。これは心が離れようのない、離れたら即座に死ぬタイプのカップルですやん。比翼連理とはまさにまさに。
しかし、同時にこの二人で戦力的にも物語の核としても完結してしまっているので、色んな意味で余人が入る余地がないのも確かなんですよね。普通に、仲の良い友達も出来るのですけれど、果たして彼女らが彼らの物語の中に主要人物として食い込んでこれるのか。今回に関しては、どうしても「外側」から入ってこれませんでしたからねえ。彼らに絡む事のできるのは、今のところ「敵」だけであって、夫婦と七柱の幻獣という強固なライン一筋だけなんですよね。ここから、物語をこのライン以外に発展させていける余地があるのか。まあ、その必要がない、という考え方もあるのでしょうけれど。
夫婦であることを秘密にするわけでもなく、最初からぶちまけてしまうあたりは度肝を抜かれましたけれど、もうちょっとイチャイチャしても良かったんじゃよ?
重い陰を背負った主人公の志雄に、自分という重石を乗っけるだけの偉業をやり遂げた日輪は実際大したものだと思うのだけれど、ここはそれ以上の戦果を求めたくなるじゃあないですか。覚悟を据えてしまっている志雄のそれに、堂々と付き添うその雄々しさはちょいと惚れぼれするくらいなのですが、甘え方もけっこう上手でわりと二人で過ごすときはベタベタしてるのですが、この男の子はもう少し堕落させてあげてもいいんじゃないか、と思えてくる。彼の真面目さに対して、わりと甘いんですよねえ。甘えてる一方で、けっこう旦那を甘やかしてますよ、この奥さん。恋人とか婚約の段階じゃなくて、既婚なんですからやることはやっちゃえばいいのに。まあ、子供が出来てしまったら大変なので節制が求められる部分なのかもしれませんけれど。

しかし、GA文庫は【落第騎士の英雄譚】もそうですけれど、ヒロインを一人に固定するケースに寛容というのは、今の御時世に挑戦的じゃないですか。って、落第騎士の英雄譚しか他に見当たらないので、レーベルでくくる件ではないのかもしれませんけれど。でも、ぜんぶ右に倣えじゃなくて、多様性がないと先細りになってしまう、というのはどんな分野方面でも良く言われることですし、もっと試みてもいいと思うんだけれど。その意味では、【落第騎士の英雄譚】は良き先駆となった、と見るべきか。

個人的にはこの一巻では志雄の掘り下げの方に重点を置いていて、日輪は彼を支え補う役割を果たしている面に焦点があたっていて、若干日輪という女の子のキャラの魅力を映えさせる場面について物足りない部分があったので、次回はもうちょっと日輪の方にフォーカスをあててほしいなあ、と思う次第。ちょっと、夫婦としての、という点に比重が傾いていたかなあ、という感じで。微妙な感覚なんですけどね。
鳥羽さんは、これまでの作品見ても女の子の描き方は抜群におもしろ愉快に可愛らしく描ける作家さんだっただけに、日輪という娘のポテンシャルはまだまだこんなもんじゃないぞー、という期待含みで。

鳥羽徹作品感想