魔剣の軍師と虹の兵団(アルクス・レギオン) (3) (MF文庫J)

【魔剣の軍師と虹の兵団(アルクス・レギオン) 3】 壱日千次/おりょう MF文庫J

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ダンテ将軍との決戦に勝利し、ついにトレントの地から敵勢力を駆逐した「魔剣の軍師」ジュリオとアウトな仲間たち。だが、敵国ロンバルディアの弱体化は、新たな脅威を招くことに。南の強国ホルムの内乱の勝利者となった簒奪王アレクサンドルが、教皇国の力を借りて、ロンバルディアへの侵略を画策。その野望の標的に自国トレントが含まれることを看破したジュリオは、クリスティーナや仲間たちの助言を受け、幽閉されたロンバルディアの不屈王子ことカンパネルラ擁立のため、救出に乗り出す。伝説と虚飾に彩られたジュリオたちの戦いの舞台は、ついに祖国を飛び出す!?――見た目はまとも、頭脳はおバカ。戦記業界戦慄のおバカ系ファンタジー戦記、第3弾!

今度の新キャラも酷いな! でも、酷いキャラを出すにしても、それぞれ他に類を見ない変態質を出さなきゃならないわけで、これってなかなか難しいですよね。単なるドMならすでにエスメラルダが歴史を横断する被虐志向という特筆に値するドMなわけで、単に虐げられることに興奮してしまうキャラなら被っちゃうところなんだけれど、不屈王子のそれは特殊すぎて、もうあかん、笑ってしまう。いや、その特殊性癖に目覚めたからこそ発狂しかねない境遇を乗り越えられたのだから、それはそれで凄いんだけれど、もうなんちゅうか笑ってしまう。第一巻の強敵だった公爵令嬢クリスティーナが死んだ魚みたいな目になってるのが可哀想で可哀想で。いっそ、彼女も目覚めてしまえばいいのに、踏みつけるのに目覚めてしまえばいいのに、なまじ真人間なだけにエライ目にあっちゃってるのが笑えて仕方ない。これだけ有能とマトモが両立してる人って、この作品では稀有なんだけれどなあ。彼女以外、ほぼ有能にして残念、というキャラばかりだし。いやダンテ将軍の部下の二人はまだ変な性癖発露してないので、まとも組の方に入るのか。つまり、酷い目あいそうw
というわけで、トレントの地をロンバルディアから取り戻したところでどう動くのかと思っていたら、半島国家である両国のさらに南、大陸側の大国からの脅威迫る、という展開になってきたか。そもそも、ロンバルディアを逆制圧する、という発想や国力はなかったようでロンバルディアという国を動かす人材をごっそり入れ替える寸法に。
ちゃんと、国土を犯され虐げられてきた側と虐げてきた側の相克を描きつつ、目の前の脅威を前に未来の為に手を携える展開を真面目に描いたりするところも、相変わらず緩みっぱなしではなく締めるところはシリアスに締めるこの作品の良い所。こういうところを疎かにしないのが、これだけお馬鹿な話にしつつ、緊張感を失わしめていない部分なんでしょう。
そして、どれだけ残念なキャラクターでありながらも、人格人品まで残念ではない、ちゃんと尊敬できる一廉の人物であるのだ、というのを見せてくれたのが、今回のトリスタンのエピソードなのでしょう。自分の義理の娘(幼女)に恋しちゃい愛欲を抱いてしまい、その為に祖国をぽいぽい裏切ってしまったトリスタン。それだけ娘命、娘のためならなんでもやっちゃう、という残念大将が、娘の幸せの為に自分の欲望も愛も願いも押し殺し、永遠に封印して戦おうというその姿は、いっそ神々しいくらいに尊いものでした。うん、普段が筆舌しがたい酷さなので、その対比で、対比で。
いやでも、彼の娘への愛情はガチもガチなんですけれど、だからこそ本気なんでわりと応援してるんですよね。ルーナの方は、トリスタンのことを父親として尊敬し慕って愛しているけれど勿論異性としてはまるで意識していないのですが、犯罪臭がするとしても、うまいこといってほしいなあ、と思うばかりなのであります。
敵サイドに一神教、という排外者の要素が出てきましたけれど、本来なら一神教と多神教の宗教対立みたいな空気が流れそうなところなのに、自己顕示欲が高まりすぎて自分が神の宗教まで立ち上げようとしているロスヴァイセがたった一人で対立軸の一方を担いそうなのが笑えます。一神教VSロスヴァイセになんかなりかけてるw
どうも、ジュリオが住んでいた村に何か秘密があり、ジュリオの幼馴染の姉ちゃんが一連の戦乱の引き金を引いてしまった、という歴史の影に隠れていた大きなうねり、みたいなものが垣間見えてきて、スケールの大きな話になってきた? とりあえず、このまま長期シリーズに乗りそうなのが嬉しいところ。ついに3巻の山を越えましたがな!

シリーズ感想