再び始まる反救世譚(エスカトラ)2 (MF文庫J)

【再び始まる反救世譚(エスカトラ) 2】 上智一麻/nauribon MF文庫J

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Kindle B☆W

特異点として世界の犠牲となっていた少女、イリアを救出してしまったことで全世界から追われる身となった黒斗たち。身を隠しながらも旅を続け東都アガスティアへと辿りつくと、そこでは五百年前の英雄である救世主トラヴィスの召喚を祝う召礼祭が行われている最中だった。賑わう街の喧騒のなか一人の気品漂う美少女と出会う黒斗。その少女は、どこか異質な空気を漂わせていて…。そして旅の資金を調達するため、武道会へと参加することになった黒斗の前に六連覇を誇る天霊兵装の保持者、カイムが立ちはだかる!規格外の救世主による、全世界を敵にまわす反救世譚、第二巻!

存在するだけで世界を脅かす、人を殺し街を破壊し国を滅ぼす、そんな災厄である特異点。しかし、それは特異点となる人間が邪悪であったり悪意や野心があるわけではなく、言わば体質のようなもの。災厄となるものを意図せず呼び寄せてしまう特質こそが問題で、その為人はまったく関係ないわけですね。しかし、その特異点を放置しておけば、未曾有のおぞましい災厄が訪れて周囲を地獄へと変えてしまう。だからこそ、特異点となってしまった人は、捉えられて封印されてしまう。それは世の秩序を守るための、平和を守るための、人々のささやかな日常を守るための正義である。が、しかし、罪もなく一方的にすべての責を負わされ、人間扱いされず封印という憂き目に遭う特異点にとって、その処遇は受け入れられるものなのか。
特異点となってしまった一人の少女を守るために、救世主として神霊フェルに呼ばれながら、救世主たることに背を向けた少年の反救世譚。
特異点となる娘の性質が良い子であればあるほど、自分の存在が災厄を振りまいてしまうことに苦しみ悩み、自己を犠牲にすることが一番世界の為になると理解しながらも、しかし自分は何もしていないにも関わらず、誰からも疎まれ、愛されず、拒絶され、憎まれすらすることの理不尽に納得できず、哀しくて、嫌で、受け入れがたい。
このヒロインの煩悶を受け止めるのはなかなかにヘヴィーであるはずなんだけれど、それをしっかりこなしながら世界を敵に回す覚悟を据えている黒斗という主人公は、そりゃもう土台のしっかりしたドンと揺るがん良い主人公なんだけれど、それでもイリア一人だけで一杯一杯であることは確かなんですよね。精神的に、というよりも自分たちがしでかしていることの重さをよく理解している聡明さ故、というべきか。
だからこそ、ここで敢えて彼一人にどんどんおっ被すのではなく、彼と同じくらい強くて彼と同じくらい覚悟を据えることの出来る、黒斗とあらゆる意味で同格で対等なライバルにして友人たることの出来る相手が出てきたのは、噛み合わせが隙間なくピッタリとしているような骨格の強度を感じさせて、物語としても揺るぎなさが出ていてよかったんですよね。二人目のヒロイン登場というパターンは王道なんですけれど、この作品はそのヒロインの重たさが尋常ではないのですからね。
だからこそ、クライマックスのダブルライダー的な盛り上がりは実に燃える展開で、ドライブ感も増し増しで、うん良かったよー。燃えた燃えた。
うんこの作者さんってヘヴィーな主題を鬱々と沈めることなく、これだけ熱く手に汗握る熱量へと燃焼できる手腕の持ち主だというのを、いかんなく証明してくれたと思う。正直、もっと売れても全然おかしくないと思うんですがねえ。前シリーズともども、2巻・3巻で打ち切られるような作品ではないと思うんだが。どうも、あとがき見る限りではここで打ち切りを食らってしまったような感もあり、残念無念で仕方がない。
次回作こそ、何とかならんもんかしら。