七日の喰い神 (ガガガ文庫)

【七日の喰い神】 カミツキレイニー/ nauribon ガガガ文庫

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夏の猛暑のさなか、行方不明となっていた少年が凍った死体となって発見された。警察は事件の異常性から“マガツガミ”によるものと判断した……。古来よりこの国には人間に害を為す禍々しい神々“マガツガミ”が存在する。そして、それらマガツガミを討伐する特殊な力を持った者たちを“祈祷士”と呼んだ。連携し独自に組織を作り上げた祈祷士たちは、マガツガミたちと長きにわたり戦いを続けてきた――。そして現代、天才的な資質を持ちながら祈祷士としての道を捨てた男・古川七日と、可愛らしくも残酷な“喰い神”の少女ラティメリア。人間とマガツガミという許されざる異種間のコンビは、法や常識に縛られることなく、彼らなりの理由と方法でもって禍々しい神々を葬っていく。

カミツキレイニー待望の新作は、「冷徹な最強の男」×「人を喰う神の少女」の異種バディもの! 共闘もするが、たまに殺し合いもする……そんなコンビが見せるダークファンタジー!
七日のラティメリアへの扱いは酷いものがあるんだけれど、その根っこには確かな愛情が……あるようには見えんなあ。でも、無関心でも道具扱いしているわけでもないんですよね。目線を合わせないように、焦点を合わせないようにしながらも、確固とした熱のこもった感情が、炙るようにしてラティメリアに向けられている。この複雑な思いの正体が何なのか、その理由は最終話でラティメリアの正体とともに明かされることになるわけだけれど、単純な情愛とは異なる当人にも把握しきれないほどに複雑に絡み合ってしまった愛憎を持て余し、というシチュエーションは大好物なのでこういうゴリゴリと精神を削るタイプの作品はやっぱり好きです。一方で、陰惨で鬱々とした主人公のそれとは対照的に、ラティメリアは天真爛漫で裏表が全然ない明るい性格で、酷い扱いをされながらも、全然引きずらないので作品の雰囲気を暗いながらも、息が詰まらないような空気にしてくれている。その意味では救いではあるんだけれど、彼女もマガツカミではあるので純粋ではあっても善良ではないんですよね。明るくても、倫理的だったり善人であったりするわけではない。当たり前のようにかまされる人間らしさの欠片もないバケモノとしての無邪気な言動に、ハッとさせられるのである。そんな時はどれほど冷酷でも、酷薄でも七日の方にこそ人間としての熱を感じるのだ。互い違いで定まらない異種間コンビ。でも、時折ふとした瞬間、価値観や存在の階梯、意識の相違を乗り越えて、まったく立ち位置が重なる時がある。ほんの偶然なのだろうけれど、優しさや情というものが同じ方向を向く時がある。だからこそ、七日はラティメリアという存在に憎しみだけじゃなく、在りし日の大切な人の面影を見てしまい、またそれとは関係ないラティメリアの不思議な柔らかさに目を細めることになってしまうのだろう。憎みきれず、しかし愛しめず、蔑ろにしながら大切にしてしまう。
答えの分からない、しかし確かにそこにあるものを抱え込みながら放浪する。彼と彼女に、たどり着くべきカナンの地が果たしてあるのだろうか。既に、どこにも辿りつけない今こそが着地点な気がしないでもないけれど、それは救いがないような気がするし、同時にこれが望むべき形のような気もするし。
この二人の場合、歩み寄ってしまえばこそ、救われない事になりそうで、なんとも言えない複雑さ。でも、ラティメリアは既にそのシンプルさを以って探すまでもなく在りようを定めている気もするけれど……でも、マガツカミとしては定まってはいても、その定まった地点から自覚なくウロウロと彷徨っている風なきらいもあるんですよねえ。
こればっかりは、一つ一つ話を積み重ねていかないと見えてこない霧中であるか。だからこそ、シリーズ続いてほしいな、これは。

カミツキレイニー作品感想