黒鋼の魔紋修復士13 (ファミ通文庫)

【黒鋼の魔紋修復士<ヒエラ・グリフィコス> 13】 嬉野秋彦/ミユキルリア ファミ通文庫

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ディヤウスとしての己の出自を知った上で、その手でメルディエトを葬ったディー。彼の苦悩を包み込むかのように、ヴァレリアはディーと結ばれる。一方その頃、カリンと決着をつけたいと願うダンテと、ついにルオーマに直接攻撃をかける用意を整えたルキウスとオルヴィエトはユールローグを出立する。それぞれの相手を迎え撃つべく、カリンが、シャキーラが、そしてディーとヴァレリアが最後の戦いに臨む!大人気ファンタジーアクション、堂々最終巻!!

結ばれちゃってたんかーー! しまった、あそこから勢いで雪崩れ込んでしまってたのか。若いなあ。いや、ディーといえど身内を手に掛けた衝撃を受け止めるのに、ヴァレリアの愛情を肉の感触として必要としたのは仕方ない事なのか。元々覚悟を決めていたディーだけれど、家族だったルキウスとオルヴィエトに対するのに今回まったく動揺しませんでしたからね。その意味では、ディーにとっての至上をヴァレリアに揺るぎなく固定するのに、これは必要なプロセスだったのかも。
いやしかし、今に至ってなお、ディミタールとヴァレリアがこんなに情熱的なラブロマンスへと揺蕩う関係になるとは信じがたい結果ですよねえ。
第一巻を読んだ時の感想で自分、こんな風に書いてるんですよ。
ここから、二人に恋愛感情が芽生えるとか、まるで想像できんな!! あり得んよな!! あり得んだけに、見たくはなるんですけどね。想像できないだけに、そうなっていく時の過程がまた面白そうなんですよねえ。
まあ現段階ではやっぱり無いよなあ、というレベルの断絶が二人の間には横たわっているのですけれど。いやあ、無いよなあ。

ここから、あれだけどうしようもないくらい険悪だった段階から、本当にロマンスに至ったんだから本当にすごいですよ。それも、安易に一足飛びにではなく、一つ一つ積み重ね、徐々にお互いへの認識を変えながら、ですからね。まさに、険悪な仲から家族も国も敵に回しても構わないというほどの深い愛を抱くまでの過程を、余すことなくじっくり丹念に描き切って見せたのだから、感嘆の吐息をつかざるをえません。
その代わりと言っては何なのですけれど、一番可哀想だったのはやはりルキウスでしたね。彼自身、何も悪くはなかったのに、兄弟同然だったディミとたもとを分かつことになり、覚醒してしまうことで元の人格も殆ど変わってしまって、敵という立場に置かれてしまったわけですしね。
彼の真面目でちょっと苦労性で優しくて、イザーク王子に振り回されながらもテキパキと有能に仕事をこなしていくキャラクターは好きだったので、やはり可哀想だったなあ、と思ってしまうところであります。尤も、彼の性格からしてそんな運命ですら、割りきってしまった後となると粛々と受け入れてそうなのですが。いかんせん、彼には欲というものが良くも悪くも薄かったんだろうなあ。せめて、ティアルの想いに答えて忘れ形見を残してくれただけでも、良かったのか。

こうしてみると、色んな所で家族仲が深まったり、カップルうまく行ったりとわりと全体的にハッピーエンドなんですよね。
ついに全身鎧ガチャピンクから姿を現し、その容姿をイラスト化してくれたベッチーナ。以前、イザーク王子がその中身を覗いて驚いてたのって、そういうことだったの! イザーク王子も一目惚れだったの!? なるほど、それで自分以外顔見せないようにもっかい鎧の中に押し込めてたのね。
まさか、この世界でも有数の美少女だったとは。イラストの方も本当に可愛く描いてくれていて、嬉しい限り。まさに玉の輿で、ちゃんと正式にイザーク王子との婚約にまでこぎつけるに至るとは思わなかった。でも、頑張ってたもんねえ。
一番驚いたのは、カリンの好きな人でしたが。ちゃんと他に好きな人が居る、と言っていたけれど、まさかねえ。そう、好きな人が居るのに、自分に対して因縁を晴らそうとするダンテとちゃんとケリをつけに行ってあげるあたり、あれは優しいというよりもカリン男前って言うべきなんでしょうねえ。
いやしかし、まさかあの人だったとは。言われてみると、カリンの登場時からあれこれと絡んでいるので、そ、そうだったのかー、と思ってしまうんですけれど。でも、恋愛感情があると知ってるのと知らないのとでは、あれらの接触、見ても全然意味の捉え方変わっちゃいますよねえ。
ラムピトーもクロチルドも、順調に思いを遂げれそうですし、最大の問題は先送りとなり子孫にお任せとなっちゃいましたけれど、そこまで面倒は見きれんですし、概ねハッピーエンドだったんじゃないでしょうか。
長いシリーズでしたが、それに見合う濃厚で読み応えのあるストーリーで、大満足。次回作も既に準備済みということで、実に楽しみです。

シリーズ感想