バリアクラッカー 神の盾の光と影 (電撃文庫)

【バリアクラッカー 神の盾の光と影】 囲恭之介/KeG 電撃文庫

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あらゆる傷と病いから人を守る不可視の盾、アイギス。その恩恵を受けて千年都市アーモロートは繁栄を謳歌していた。しかし、そこであり得るはずのない、世界の秩序を揺るがす殺人事件が起こる。アイギスを砕く者の存在が囁かれるなか、異端審問官のベルヘルミナは、情報屋クリカラとともに事件の謎を追う。異端の嫌疑をかけられた少女、不老不死を望んだ古の教皇、そしてすべての鍵となる黙示録…。さまざまな手掛かりをたぐった先にある驚愕の真実とは!?第21回電撃小説大賞“電撃文庫MAGAZINE賞”受賞の謎とスリルが加速するゴシック・ミステリー!
これって、教会とか異端審問とか中世的世界観におけるゴシックファンタジーの皮を被っているけれど、その皮を一枚向いてみればサイバーパンクの匂いがプンプン漂ってくる、中世と超未来という噛み合わなそうな時代感が「退廃的な空気の蔓延る世界観」という共通項で括りつけられてるんですよね。レプトイドというと、爬虫類型人類の名称の一つですけれど、後から考えると映画の【ブレードランナー】に出てくるレプリカントを意識して名称を引っ張ってきたような感もあるわけです。
こういうゴシックSFは好物なんだなあ。しかも、シスターが主人公。教会のシスターという属性は、貞淑さに秘められたエロティシムズなんてものが魅力なんだろうけれど、個人的にはあまり好みの属性ではないんですけれど、このベルヘルミナは真面目で清廉潔白ではあっても、潔癖症の類ではなくまた行動的でガンガン挑んでいく現場タイプなので、ヒロインじゃなくて主人公としては良いキャラクターでした。女の子の主人公というのは、やっぱり度胸と人誑しが武器なんだよなあ。
この物語の舞台となる世界では、人間は生まれた時からアイギスという神のもたらした楯によって守られているため、いかなる病も外傷も負わないようになっており、決して傷つく事がない。しかし、稀にその盾の加護を失う人間が居て、それは神に背いた証拠として、異端者として処理されてしまう。
そんな世界なので、普通なら殺人事件どころか傷害事件ですら起こりえない。何か事件が起こるとすれば、レプトイドという人間に化ける人外の存在が暴れることによって起こる騒ぎくらいで、それも人を傷つけることはない……はずだったのが、ありえない殺人事件が、それも枢機卿という高位の幹部を含めた教会関係者が次々と殺害される事件が起こり、バリアクラッカーという謎の存在が浮かび上がってくる。そもそも、アイギスという盾の正体は何なのか、殺人事件の犯人とされるバリアクラッカーとは何者なのか。自身、何故かアイギスが機能しなくなり、教会に追われることとなりながら、それでも協力してくれる人たちに助けられ、シスター・ベルヘルミナは世界の根幹に繋がる謎を追求することになる、まさにミステリー仕立てのサスペンス。
身近な人間たちも次々に殺されていく、というなかなかハードな展開で、さらに主人公の追われるはめになることから、切羽詰まった畳み掛けるようなスピード感や切迫感があり、実に面白かった。
その分、謎が明らかになるシーンがちょっと勿体無かったかなあ。まさに世界の謎が明かされる決定的場面のはずなんだけれど、いきなり主人公も訳のわからないまま大量の情報を渡されてしまって、謎を探り当てる、解明するって感じでは一切なかったんですよね。主人公の持つ価値観や知識からすると、仕方ないっちゃ仕方ないんだけれど、予想も推察もしてないゼロのところから、いきなり全部の答えを求めてた分以上にぽんと渡されてしまったようなものでしたからね。ちょっと拍子抜けなところがあったわけです。ベルヘルミナ的には、それこそ世界観が根こそぎ変わってしまうような衝撃的な話だったんだろうけれど。彼女自身、それを単独で聞いてしまった上に、他人に教えるには問題が多すぎる話だっただけに、一人で抱え込んでしまったのも、驚愕の共有が出来なかった分、味気ないことになってしまった感はある。
ともあれ、胡散臭い情報屋のクリカラとの、それぞれの立場を考えれば一筋縄ではいかない立ち位置同士の関係はいい味出してましたし、性格的にも政治的にも相容れず向かい合えばいがみ合う政敵同士でありながら、ベルヘルミナがピンチになった時にこっそり助けてくれたシビルとの、あのどこか通じ合うライバル関係なんかは良かったなあ。なかなか良作だったんじゃないでしょうか。