断罪官のデタラメな使い魔 (HJ文庫)

【断罪官のデタラメな使い魔】 藤木わしろ/菊月 HJ文庫

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人の理を外れし強大な力=魔法に目覚めた者から、魔法を取り除くことが出来る唯一の存在“裁判官”。陸也と緋澄の男女コンビは、時に国家以上の権力を行使しながら、裁判官として世界各地で起こる魔法使い絡みの事件を次々と解決していた。そんな二人が新たな任務で訪れたのは、魔法使い“切裂きジャック”による連続殺人事件が噂される国で―。
建前って意外と大事なものなんですよね。それは公のことに限らず、個人的な二人きりの関係においても。ぶっちゃけ、この陸也と緋澄の以心伝心の信頼関係の厚さを思えば、二人が拘っているお互いの関係の距離感、なんてのは虚構と言って過言のないものだと思うのです。実質、実際の二人の関係はもう彼ら自身が引いたラインをとっくに越えている。それでも、建前だけでも原則を言い募り固持しているフリを続けていることで、辛うじて魔法使いの「法」を実行し得てるんじゃないだろうか。もうこれ、在るか無いかじゃなくて、既に在るものを認めるか認めないか、の段階なんだよなあ。いや、それすらももうふたりとも認めていて、意識的に無い振りをしているようにしか見えない。本当に、辛うじての辛うじて、際の際だ。ここまで来ると、もう時間の問題のようにも見えるので、大事なのは既に越えてしまっている一線を無視し続ける努力ではなくて、愛の形に「法」を組み込むしかないと思うんですよね。愛情表現として、それを組み込むように調教調律していくしかないんじゃないだろうか。
つまり、SMの関係だよ!!

国家権力、国の最高権力者すら一方的に断罪できる権限を持つ「裁判官」が、そんなSM趣味だったら嫌ですけど、うん。
ちょっと違和感あったのは、ここで語られる国の規模が非常に小さいことでした。これって、国を名乗っているけれど、その規模は一つの街レベルなんですよね。都市国家、と考えればいいんだろうけれど、意外とその都市間の技術・文明レベルにかなり差があるようで、このへん【キノの旅】の国の形に良く似ているなあ、と。
肝心の切り裂きジャックに関しては、まず最初の段階で殆ど正体隠さない状態で現れるのですぐわかったのですが、そうなると「断罪官」なんてテーマで期待するであろう、胸糞悪い悪を問答無用で罰する「カタルシス」を得られるのだろうか、という疑問が湧いてきたのですが……思ってた以上に胸糞悪い展開が待っていて、これって悪党をぶっ飛ばすだけじゃ解消しきれない外道の所業でした。最悪の誰も救われない展開ではなかった分だけ、だいぶマシだったのかもしれませんけれど。ギリギリではありますが、助かるべき人が助かって、守るべき挟持は守られ、悪は滅びたわけですし。
陸也と緋澄の二人の過去にも、どうやら色々といわくがあるようですし、世界観の紹介も終わったところで次回からはもっと二人の個人的な事情にスポットを当てて掘り下げたところを読みたいところですね。
ちなみに、裁判官と使い魔の関係については素直に騙されてました。うん、これは騙されるよ。