二線級ラブストーリー (講談社ラノベ文庫)

【二線級ラブストーリー】 持崎湯葉/籠目 講談社ラノベ文庫

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Kindle B☆W
高校二年生の松尾家之助は、親友で生徒会長の完璧超人一ノ瀬秋、憧れのクラスメイトで書記の月本紗姫とともに生徒会に所属し、平凡ながらも楽しい高校生活を送っていた。そして家之助は紗姫への想いを自覚する。だが、どうやら紗姫は秋のことが好きな様子。どうすべきか悩む家之助だったが、そんなさなかに秋のとんでもない秘密を知ってしまう!その結果、家之助の、紗姫のそして秋の想いは複雑に絡み合って―?第3回講談社ラノベチャレンジカップ“佳作”受賞作、華麗に登場!
ちょっちょっちょっ……!?(爆笑
いやいやいや、これは参った。途中まで、男装していた親友の秋と、好きな女の子の紗姫との微妙な三角関係を繊細に描いていく青春ラブストーリーだと思ってたのに、まさに秋の性別を家之助が知ってしまった瞬間から、完全に予想の斜め上を行く展開に。どこが二線級だよっ、これこそ一線級だよ、というか一線超えちゃってるよww
思えば、青春ラブストーリーの三角関係というのは、現状維持思考なんですよね。どれだけ穏便に、これまでの関係を損なわないように傷つかないように傷つけないように気を遣いながら、それでも募る想いを抑えきれず変化を迎えてしまう。そんな細やかな感情や気持ちの綱引きの末に、誰かが決定的な一線を越えることで激動の展開が始まる、そんなのが三角関係の定番パターンなんでしょう。
ところが本作と来たら、実質三角関係がはじまった途端に、なりふり構わず一線を越えて来やがったのである。これだけ恋敵の気持ちを踏みにじっても自分の気持ちを押し通す! 恋愛はキレイ事じゃない! と初っ端から開き直った姿勢で来られると、笑ってしまうやら圧倒されてしまうやら。
そのどぎついキャラクターでコミカルな事になってるけれど、秋にしても紗姫にしてもえげつないといっていいくらい酷い事してますしね。それも、相手は恋敵ではあっても自分を好いてくれている相手である。自分に抱きついてくる相手の顔面に蹴りを食らわせながら、その反動で自分の好きな人に抱きつこうとするような有様なんですよね。二人の女子のあまりにも強烈にして強固な恋心を前に、しかし家之助も引きずられるように彼女たちと同じ選択をしてしまう。これ、秋は絶対に自業自得だと思うんだけれど、男が女にしてしまうのはダメなのか、そんなことないよね? 男だって心繊細だもん。
どれだけ酷いことをされても、好きな気持ちは止まらない。決して振り向いてくれないトライアングル。ドン引きしてしまうレベルの肉食性を見せてくれた秋と紗姫だけれど、その本性むき出しのがむしゃらさは恋に対する本気の証でもあり、やってることは相当なんだけれど嫌悪感なんかはなくて、むしろゾクゾクするような味わい深さが。
この点、紗姫の悪魔の提案に乗ってしまった家之助は、その恋の情熱の持って行き場所を自分の意思で決められず、流されてしまった為に随分モヤモヤを引っ張ってしまったのだけれど、その分彼の本気を出す方向を、自分で決めた方に向けて突っ走り出してからは痛快でありました。いや、なんにも解決していなくて、一方通行の三角関係という構図は一切変わっていないのだけれど、彼の自分の恋は貫き通しつつ、しかし誰かを傷つけても構わないような格好わるい振る舞いはしない、という決然とした姿勢は歪でギスギスして泥沼化しはじめていた三角関係を、すっきりと後腐れのない、真っ向勝負へと変えてしまったんですよね。ここの家之助はなかなか男前だったなあ。
自分の醜い面をこれでもと曝け出して、ぶつかり顔を背け合いうつむいてみっともなくしがみつくばかりだった関係が、しかし皆がそれぞれの醜悪さを受け入れ飲み込んで、向き合った先に見えたものは、恋というものがやっぱりキラキラとした綺麗で素敵なものだった、という事実。誰かを好き、という気持ちの輝きと同等に、自分を好きで居てくれる人が居る、という事の素晴らしさ。
これは家之助、男を見せたと同時に、一兎を追って二兎を得そうな雰囲気じゃありません?

影のMVPは、勿論妹の芽衣でしょう。不甲斐ない兄貴の相談に親身になって乗ってあげて、色々とフォローしてまわり、へこんで落ち込む兄貴を励まし、と七面六臂の活躍。わりと自由人の気風の娘なのに、もう暴走しっぱなしの秋や紗姫の煽りもくって、苦労しっぱなしでしたしね。うん、頑張った、頑張ったよ妹! そして、これからも頑張れ、あの人達は概ねダメだw