スカイフォール 機械人形と流浪者 (電撃文庫)

【スカイフォール 機械人形(オートマタ)と流浪者(ドリフター)】 石川湊/ときち 電撃文庫

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人類は、大地を見たことがない。天地を貫く巨大な柱・ターミナルを中心に、彼らは街を造り国を建てた。旧世代の遺構であるターミナルを繋ぎ、空を横断する無数の鋼線。そこにぶら下がるゴンドラに乗り、流浪者たちは街を行き来して生活する。見渡す限り、一面の蒼。「警告。危ない、空に墜ちますよ」そう、これは―俺の知らない世界。青空に浮かぶ雲海の中、記憶喪失で倒れていた青年・クウガを拾ったのは、天真爛漫な流浪者スズと、彼女に尽くす機械人形のエア。少女二人と旅をする中でクウガが知る、己と世界の真実とは―。大空を舞台にした空創ファンタジー!

ひぃぃ。高所恐怖症の身としてはケーブルからぶら下がるコンドラが家だなんて怖いどころじゃないですわ。あそこがヒュンとなる、ヒュンとなる。しかも、途中にケーブルを支える鉄塔とかないんでしょ? 見渡す限り、空の中。そこをただ一本のケーブルが走っているだけのところを、ゴンドラで動いていくだけ、って。
想像すれば、凄まじい閉塞感である。これならまだ永遠に空を飛んでいる方がマシなんじゃないだろうか。ゴンドラだと、本当にケーブルの下をまっすぐに進むか下がるかしか出来ないのだから。そして、前にも後ろにもススメなくなった時、あとは下に落ちるしかない。
想像すれば、この世界が抱え込んでいる絶望感というのは思い描くことができるだろう。
勿体ないのは、その想像を促す描写があまりなかったことか。読んでいる間は、あまりそういう想像、連想が湧いてこなかったんですよね。この世界で暮らしている人たちが潜在的に有している、閉じた絶望感を伝える要素があまりない。ラストに至るスズの動機からすると、この辺りの「世界に漂う絶望」が大事だったはずなんだけれど、いまいちそれが伝わってこなかったのでかなり唐突感があったんですよね。
これは、読者の視点が、記憶喪失でありまた異邦人であるために、価値観をこの世界の人たちと共有できていなかった主人公のクウガのそれに合わさっていたが為に、気づかせることが難しかったんだろうけれど。クウガ視点なのに読者は気づいてクウガがさっぱり気づかないんだったら、この主人公想像力も観察力もないんかいっ、という事になってしまいますしね。一人称ではないものの、極めて一人称よりの三人称という形式だとやはり難しいのか。まあクウガ視点で気づいてない時点でやっぱり察しが悪いというのはわかってしまうのですけれど。
観察力はある方なんだけれど、どうも分析力が明後日を向いているのか被害妄想の嫌いがあったのか、スズやエアの言動に対してわりとネガティブなことばかり想像をめぐらしてるんですよね、この人。スズの笑顔に違和感を覚えだすあたり、見るべきところは見てるはずなんだけれど。
エアの機械人形でありながら、人間味を感じさせ心や想いがある、魂魄実装済み的な振る舞いに親しみを感じる一方で、この世界では機械人形はあくまでモノ扱い、というあたりの設定も、確かにスズの動機の根源に繋がる要素ではあったものの、クウガが世間の扱いに憤り反発していた部分とは微妙にすれ違ってるんですよね。どうもこう、クウガの記憶喪失という点があんまり意味をなしていなかったところも含めて、色んな面でクウガが的を外していたような気がします。いや、記憶喪失は彼の責任じゃないんですけれど、物語の様々な局面で彼の見ているものと実際のところがズレて的を外していた、というかなんというか。おかげで、最後までこの主人公大丈夫なのかな、と主人公としての信頼を寄せきれなかった感が……(苦笑