暁の戦闘論者 (ダッシュエックス文庫)

【暁の戦闘論者(バトロジカ)】 大保志雄二/安倍吉俊 ダッシュエックス文庫

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武器は“言葉”! 完全論破ディベートバトル!! 「お前、いま納得したな――?」 町中でフードを被った少女と大男が揉めている。そこへふらふらへらへら安物のマント姿の男・ワードがやってきて、剣も魔法も使わずにあっさり問題を解決! 彼はこの世界でもっとも恐れられる存在――言葉で納得させることによって、絶対的な力で相手を操る“戦闘論者”(バトロジカ)と呼ばれる流浪の能力者だった! 危険視されて連行されたお城でワードを待っていたのは先ほどのフード女あらため、この国の王女であるミシェル殿下。 「あんた、私に力を貸しなさい!」 「シュークリームで手を打とう」 気がつくと国を揺るがす一大事件に巻き込まれていたワードは、ミシェルを守り抜けるのか!?
これは……タイトルが失敗だったんじゃない? 読むまでは、これがディベート、言葉を擁して論戦によって相手と攻防する話だなんて想像もしなかったですし。タイトルとジャケットデザインみたら、思いっきり脳筋系に見えましたし。戦闘論、というからにはそれぞれの流派みたいなのを競いながら、殴りあう、みたいな。
もっと、あらすじにあるディベートバトル!というポイントを一見してアピールするタイトルや表紙だったらもう少し違ったんじゃないだろうか。
しかしこれ、どちらかというと正論を投じて相手を論破していくよりも、とにかく納得させたらいいのなら詐術でだまくらかしていく方がより効果的な能力ですよね。意外と人間、正論をつきつけられても納得しないものですし。物事に対して、これこれこれはこういうものなんだよ、と説明されてもけっこう納得できなかったりする。
そこは、弁が立つ人が説得力を発揮すればいいのだけれど、この戦闘論者たちって実はあんまり直球で論破とかしてないんですよね。彼らの能力って、とにかく「納得」させれば一回ストックが貯まるという仕組みで、その納得の内容は問わないのである。つまり、どうでもいい話でも一回納得させてさえいれば、別の重要な場面でまったく関係ない件で相手を操作できるのである。これはほとんど反則に近い能力なのだ。
もっと、納得させた件についてでなければ相手に有無を言わせない、という能力ならちょいとした迫真のミステリーものになり得たのかもしれないけれど。

ともあれ、興味深いのは黒幕は明らかで彼が目論んでいることそのやり口もバレていながら、その黒幕を断罪できずに別の人が犯人に仕立てあげられてしまった状態を崩すことがクライマックスに用意されていた、というところですか。勝負の要は、どうにかして黒幕に「敗北を納得」させること。
お互いに制約が課せられた状態で、それを潜り抜けてどうやってお互いが設定した勝利目標を達成するか、その攻防が舌戦によって繰り広げられるわけだけれど、ルールが周知されているわけではなく、この攻防の中にあるルールからまず手探りで解き明かしていかなければならない、など単なる論破合戦にはならず、謎が謎を呼ぶ状況や秘された思惑などを探り当てるミステリー要素もふんだんに用意されていて、なかなか展開の面白い作品だった。一方、ちょっとキャラクターに関してはパンチが弱かったかなあ。様式ありきの作品だった気もする。