ノーブルウィッチーズ (3) 第506統合戦闘航空団 結成! (角川スニーカー文庫)

【ノーブルウィッチーズ 3.第506統合戦闘航空団 結成!】 南房秀久/島田フミカネ 角川スニーカー文庫

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ノーブルウィッチーズの正式お披露目イベントが数日後に迫り、国同士の様々な思惑に翻弄されるA、B両部隊の魔女たち。一方、キーラとともに忽然と姿を消したジェニファーを追って、那佳とカーラはガリア中を探索する…!果たして那佳たちはお披露目イベントまでにジェニファーを取り戻せるのか!?ちょっぴり守銭奴な魔女の奮う名槍が、灰色のドーヴァー海峡を切り開く!異色の部隊、結成間近の第3弾!
2巻のラストの展開が、もうジェニファーが真っ黒けっけに見える流れだったのでかなり焦ったんだけれど、ちゃんと白で良かった。各国の情報部が内部の派閥ごとに違った動きを見せて暗躍するわ、正規の登録がなされていないエージェント・ウィッチが暗躍するわ、とウィッチーズシリーズの中でも特に組織間の暗闘、国家間のパワーゲームの歪みが描かれるのがこのノーブルウィッチーズなわけですか。ウィッチの中でも貴族の血を引くものを選んで集めた、という時点で胡散臭いことこの上なかったんだけれど、担がれる神輿だからこそ、その下では他よりも激しいパワーゲームが繰り広げられる厄介な立ち位置になってしまっているわけか。そこにさらに、合衆国が送り込んできたBチームが絡んでくるんだから、そりゃ駆け引きの類がより陰湿な方に向かってしまうのも仕方ないのかもしれない。統合戦闘航空団の中でも、特にごちゃごちゃ面倒くさい立場に立たされてしまっているわけだ。
だけれど、そんな周囲からの悪意たっぷりの攻撃が皮肉にもAチームBチームを超えた結束を506にもたらした、とも言える。なんだかんだと喧嘩しながらも、同じ戦場で同じ敵であるネウロイと戦う戦友同士であるのに、周囲からのちょっかいはそんな彼女らの誇りを汚し踏みにじるものである以上、好かない相手だろうと戦友の誇りを守るために戦うのは、まさに貴族として、兵士としての正しい在り方なのだろう。
この航空団だけ、なんだかネウロイよりも人間相手に戦っているみたいな感すらあるけれど、まあ正面で実際の敵と対峙しながら、後ろから撃ってくる味方と激戦を繰り広げるのは、ある程度どこでもやっていることであるからして。
501でもミーナ隊長が頑張ってましたしねえ。
その意味では、苦労性で気弱で生真面目故にマイナス思考なロザリー隊長ですけれど、見事に様々な横槍を捌ききってるんですよねえ。Bチームのジーナ隊長が色々と現場でも後方でも実に頼もしい補佐役であるのもあるんでしょうけれど。プリン姫とジーナ隊長が二大戦闘隊長で張ってるだけでも、他の戦闘航空団と引けは取らんのよねえ。

さて、消えたジェニファーとキーラを追って、黒田の那佳ちゃんとBチームのカーラの珍道中。こんな時でも食い意地が張り守銭奴に徹している那佳ちゃんのメンタルって、本当に図太い。明朗快活な元気娘であるはずのカーラが、不安から弱音をこぼすような状況でありながら、那佳ちゃんのあっけらかんとした態度は変わらんのですよねえ。那佳ちゃん、506に合流する以前でも相当の修羅場をくぐって来てるのだけれど、どんな絶体絶命のピンチだろうが態度変わらんのだから、ハッキリ言って凄い。これだから扶桑の魔女わ、と言われる類だよなあ、この娘も。
それでいて、ウィッチーズ全体を見渡しても黒田那佳ってかなりの頻度で死にかけてるんですよね。あれだけお金お金、と金に執着していながら、いざというときには体を張って仲間を守り、血を流し激痛に耐えながらチームの為に根性見せる。そこまで死にそうな目に合いながら、しかし仲間たちに苦しい顔をさせ続けないんですよね。重苦しい雰囲気を吹き飛ばすような軽口を、いつもどおりの態度で飛ばしてみせる。演技じゃなく、本気だからこそ、ついついみんな深刻な顔を解いて、笑ってしまう。数いるウィッチの中でも、この子は最強のムードメーカーなんじゃなかろうか。そりゃ、こんな娘が居たら貴族だなんだと、AチームとBチームで張り合ってるのも馬鹿らしくなってくる。その意味では、やはりこの那佳ちゃんがノーブルウィッチーズの要なのでしょう。
今回もネウロイと殆ど戦うことなく、スパイ映画さながらのサスペンス・アクションな話でしたけれど、2巻と違って3巻はこれはこれで面白いなあ、と思えてきました。

今回、表紙でも那佳ちゃんが振るっている槍は、あの名槍【日本号】ならぬ、【扶桑号】。やっぱりこっちの世界だと扶桑皇国だから銘も扶桑なのね。あの槍って、黒田家じゃなくてその家臣の母里家のものだったんじゃないか、と思ったら、この時期には紆余曲折あって確かに黒田家に渡ってたのか、知らなかった。

シリーズ感想