超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです! (GA文庫)

【超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!】 海空りく/さくらねこ GA文庫

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飛行機事故に巻き込まれた七人の高校生が目覚めると、そこは魔法や獣人の存在する中世っぽい異世界だった。
突然の事態に彼らは混乱――することもなく(!?)
電気もない世界で原子力発電所を作ったり、ちょっと出稼ぎに出ただけで大都市の経済を牛耳ったり、
あげく悪政に苦しむ恩人たちのために悪徳貴族と戦争したりと、やりたい放題!?
そう。彼らは誰一人普通の高校生ではなく、それぞれが政治や経済、科学や医療の頂点に立つ超人高校生だったのだ!
これは地球最高の叡智と技術を持つドリームチームによる、オーバーテクノロジーを自重しない異世界革命物語である!

あらすじ見ると、好き勝手やりたい放題やってるような感じに見えますけれど、実際に読むと結構抑制的なんじゃないだろうか、これ。それぞれ現代の地球で各分野の第一線に立っていた人物たちなせいか、むちゃくちゃな能力を持っているけれどその力を無分別に振り回すような子供じゃないんですよね。むしろ大人。それぞれ、その境遇から、或いはその高い能力を持っていたせいで大きな挫折や苦難、心に傷を負うような悲劇を越えて今の立場に立っている者が大半なので、出来た人物ばかりなのである。
これはガチでドリームチームだなあ。能力に振り回されない精神的に成熟した面々が七人も集まって、仲違いもせず一致協力してあたるわけですから。しかも、彼らが持つ能力ときたら異世界どころか現代の地球ですらそれぞれの分野で無双していた人外魔境ばかり。一人一人が一作の主人公を務められるような逸材ばかりである。
このタイトル【超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!】の略称が「超余裕」というのには笑ってしまったけれど、なるほど余裕だ。
余裕なんだけれど、でもそれって彼ら七人が全部何もかもやってしまったら、他の者達は後からついてこさせ、考えるのも導くのも実行するのも全部自分たちでやってしまったら簡単で超余裕なのだろうけれど……面白い、と思ったのは彼ら七人は決して自分から前に出しゃばらず、常に彼らを救ってくれた獣人の村の人たちを尊重し続けてるんですよね。その意思も、その決断も、すべての主体はこの異世界の住人でありこの地で暮らす民である村の人たちに置いている。
その彼らの生活や意思を助けるためにやってしまう内容こそ、ここ異世界!! 地球じゃないから! と思わず叫んでしまうような自重の欠片もないやりたい放題っぷりではあるんだけれど、特に発明家! 発明家の娘! それは現代の地球でも数百年は先を行くようなオーバーテクノロジーだ! ってか、何百年未来に行っても個人でそこまで好き勝手作れる時代は絶対来ない!
商人、というか経済界の麒麟児たる実業家の少年が出先の街で繰り広げた錬金術なんかは、魔法じみた手管ではあっても一応辣腕の範疇に入るものなんだろうけれど、剣士や医者の娘のそれなんかもう人外魔境。
でも、何気に一番むちゃくちゃなのって、プリンスの手品ですよね。種も仕掛けもあるからって、もうなんでもありじゃないか、それ!! 魔法や魔術という幻想領域の代物が、しかしちゃんとルールや方式に則って出来ることしか出来ない、というのを逆手によるように、手品と標榜しつつ文字通り何でもあり、な物理法則も魔術法則も関係ないみたいなやりたい放題をやっているのには笑ってしまった。種も仕掛けもちゃんとあります、ただしネタは明かさない!
そのくせ、マジシャン・プリンス暁当人は七人の中で一番常識人で一般人だという……なにやら次回はその常識人がゴッド暁にサせられてしまうようですがw

彼らの能力が全開で発揮されれば、世界を破壊し時代を破綻させ文明にロケットブースターを取り付けて停止ボタン無しで発射されてしまうのでしょう。だがしかし、彼らはその世界を革命する力ボタンを自分たちで押すことなく、本来の世界の住人たちの手のひらの上に乗せるのです。彼らは王にならず、担い手にならず。
革命とは、個々の特別な人間の意思によって成されるものではなく、市民一人ひとりの願いの集積として旧弊の殻を割り産まれ出るもの。政治家である御子神司は、民主主義国家の政治家として断固としてそこは譲らないんですね。だからこそ、ラストの展開へと繋がっていくのでしょうけれど。
七人の超人高校生にぜんぶお任せ、じゃなくて獣人の村の人たちや真田勝人がその意思を汲んで買い上げた奴隷の幼女など現地の人たちが率先して前に出て物語の中枢に噛もうとしていたのは、好印象でした。
メインキャラだけじゃなくて、周りの人たちまでちゃんと気合入ってる作品は好きだなあ。
作者の講談社ラノベ文庫の作品が、主人公が全部たった一人で何もかもやってしまうほど突き抜けていて、周囲の人達が追随できず、助けられず、悔しい思いに七転八倒しながらなおも追いすがろうと、並び立とうとしているお話であるんですよね。それと比べると、色々とポイントを組み替えて構成しているのが面白いなあ。

ある意味、異世界に来ても公人に徹している司ですけれど、いや地球でも公人として私人としての何もかもをかなぐり捨ててきた彼ですけれど、だからこそここで出会ったエルフのリルルとの関係の行く末は興味深いですね。公人として、自分の家族を破滅に追いやった彼が、果たして私人としての幸せを掴めるのか。
リルル救出でも、実のところ彼は公人としての振る舞いに徹しているんですよね。心情は露わにしながらも、決断については私人としてのそれに最後まで譲らなかった。このあたり、先々もポイントになってきそう。
まあその前にまず面白そうなのが、ゴッド暁ですけどね。どうなってしまうんだ、マジシャン(笑

海空りく作品感想