その無限の先へ (1) (MFブックス)

【その無限の先へ 1】 二ツ樹五輪/赤井てら MFブックス

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いつ、どんな形で死んだかは分からない。
食べ物にも困る限界村落に転生した少年ツナ。ゲーム的システムはありつつも、現代知識の通用しない現実を前に、彼は希望の見えない人生を生きていた。
記憶にある豊穣の国は幻だったのか……全てを諦めかけた時、ある街の噂を聞く。
『迷宮都市』――ありとあらゆる願いが叶う街。
少年は同じく日本からの転生者ユキと共に、やがて無限へと至る試練へと導かれていく。
Webで話題沸騰! 超文明で繰り広げられる、笑って熱くなれるダンジョンバトルコメディ第一弾!!

うんうん、やっと来ました大本命。小説家になろうに連載中の作品の書籍化と、今では珍しくなくなったどころか大きな潮流となっている流れでありますけれど、その後発組の中でも屈指の大物作品がこれ、となるのでしょう。
実際、これ滅茶苦茶面白くてねえ。うん、夢中になって読んだものです。語り口の軽妙さと、固定観念に囚われない設定の自由さ。魅力的を通り越して、若干中毒症状を発症しかねないくらいに濃いキャラクターたち。
読んでいて面白い! という以上にね、「楽しい!」んですよ。心の底から笑って、あまりの馬鹿馬鹿しさに笑って、血の滾るような展開にワクワクして、ピリピリとしびれるような緊張感にドキドキして、時に度肝を抜かれ、時にびっくりしてひっくり返り、何が起こるかわからない未知の状況にウキウキして。
そう、もう楽しんだー。これぞ、エンターテイメントって奴でしょう。

実のところ、この一巻ってまだまだ開幕前で終わっちゃうんですよね。少なくとも、トライアルダンジョンのラスボス戦こそが、プロローグの盛り上がりどころで、そこが終わって本格的に迷宮都市の詳細とそこに暮らしているアレな人々の実態が明らかになってきてからこそ、の物語なので、この一巻ってまだ食卓の上に前菜のお皿が並び始めた、というくらいなんですよね。それが、掴みが大事な一巻としてはちょいと勿体無かったなあ、と思わないでもない。無理しても、トライアルダンジョンくらいはクリアして欲しかったなあ。でも、変に削られるのも嫌だし。難しいところである。だからこその、二ヶ月連続刊行だったんだろうけれど、それならもう一巻二巻の同時発売、くらいはやってもよかったんじゃないだろうか。
案内役のチッタをはじめとして、既に濃ゆそうな面々が出まくってるように見えるけれど、濃さに関してはまだ本当に触り程度で、迷宮都市の想像を絶する……マジで想像の斜め上を行き過ぎてるイカレっぷりはまだまだこれからなので、少なくともパンダ地獄程度が嗜まれはじめてからが本番ですよね?
まあ、既に主人公とヒロイン(?)のツナとユキが濃度100%のキャラなんですけどねw その二人の頭のおかしさ……可笑しさ?もまあこれからなのですよ。いや、この時点で既に相当アレなんですけれど。ツナの迷宮都市に来る以前、帝都住まいの前の故郷の限界村落でのサバイバーっぷりについては、これだいぶ削られてるのかな。それとも、これからもっとエピソードが出てくるんでしたっけ。ちょっと忘れちゃったのですが、ともかく文明的な生活など欠片も存在していない村落での、彼のサバイバル生活ってとても現代日本の若者だったとは思えないバイタリティなんですよね。というか、文明人としてどうなのか、というレベル。当人、まったく自覚なくておかしいと思ってないのだけれど、よく話を聞いていると明らかに人類として何かおかしいレベルの生存の仕方をしてるんですよね。わかりやすくチート能力とか持っているのなら、理解できるんだけれど別に特別な能力があるとか身体能力に優れているとかの範疇とはズレた「変」な部分を備えているのです。すぐに周囲の人たちにも「あれ? こいつ存在レベルで頭おかしいんじゃね?」と察せられてしまうんですよね。迷宮都市の人間は概ね頭も存在も「あれ? これ色々とダメなレベルでダメなんじゃね?」という階梯の人(人以外も)ばかりなのに、その中ですらアレ扱いされるのだから、まあ尋常じゃありません。話を聞く限りだと、どうやら生前、前世の一般人だった頃から「これ」だったらしいのですけれど……現代編のエピソードも相当「オカシイ」ので、要注目。
まあその彼、ツナの本性の一端が垣間見えるのがトライアルダンジョンのラスボス戦だっただけに、何もかもとりあえずそこに行かないと、始まらないなあ。
迷宮都市のダンジョンでは、冒険者は死なない、という仕様も決してヌルい難易度じゃなく、ユキがちらっと口にしているけれど、死ぬことを前提としているような超ハードモードな仕様なんですよね。トライアルダンジョンは、文字通り体験版でしかなく、今後本格的にダンジョンに潜る際は序盤ですら尋常でないルナティックモードと化すので、その凄まじいを通り越して壮絶すぎる攻略編は、実に盛り上がるのでとりあえずその辺りまではどんどん巻出して早くたどり着いて欲しいものです。

巻末に掲載された書きおろし短編は、前世持ちが珍しくない世界で純粋な魔術師としてツナたちと同時期に迷宮都市に来たリリカさんのエピソード。彼女、すぐに仲間入りするのかと思ったら、ウェブ版でもまだなんですよね。マトモ寄りの人はなかなか仲間にならないのか!? ちょうど、単行本の発売に合わせてウェブ版でもリリカの番外編が公開されたんですけれど、これはこれでひどいな!! なんかもう、いい具合にダメになってきているので、そろそろクランメンバー入りするのかもしれないなあ……。

あ、重要な案件を忘れてた。
表紙のヒロイン・ユキちゃんは…だが男だ!
あくまで現段階では生物学的に性別が男というだけで、ガチで中身も男というわけではないので、多分ヒロインである……のだろうか?
この子も、チッタへの煽りで一瞬垣間見えたように、けっこう外道属性の持ち主なので、アレな感じの人たちの中でもわりとブラック寄りのアレなんだよなあ。それが良いのだがw
……さて、今後「アレ」じゃない人が出てくるんだろうか。人じゃなくてもいいので。ホントに。あ、フィロスはその点マトモな方か。希少な真人間枠w