サクラ×サク03  (ダッシュエックス文庫)

【サクラ×サク 03 慕情編】 十文字青/吟 ダッシュエックス文庫

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祝! 公女殿下(サクラ)御結婚!! 何を祝っちゃってるの? 何がそんなに嬉しいの? ねえ? きみたち本当にわかってるわけ? ふざけんじゃねえぞこら。いけない、いけない。ハイジ・バランは軍人なのだ。任務を果たすのだ。公女殿下をお守りする。しっかりと嫁ぎ先までお届けする。嫁ぎ先! 嫁いじゃうんですかあ!? そうなんです。公女殿下はご結婚されるんです。いやあ。びっくりですよ。 カバラ大王国への道中、ハイジたち随行員の命が次々と狙われる。そしてその魔の手はついに……。 血が滾(たぎ)って色々躍る大戦詩幻想交響曲(ファンタジックウォーシンフォニー)、混沌の三巻!!
本当にこのハイジ君は挙動不審で垂れ流しにされている内心ときたらサクラ姫のことが好きすぎて気持ち悪いといって然るべきなんだけれど、キョドリまくってる内面ばかり見せられる一人称の描写ばかりだとなかなかわかりにくいんだろうと思うんですけれど、客観的に見るとこの子、ハイジくんってかなりべらぼうに優秀なんですよねえ。いや、確かにコミュニケーションとりにくそうな内向的なところはある、というか前面に押し出されるように内向的すぎるんだけれど、戦闘力や決断力、洞察力やらあれこれ実戦での様子を見てると、抜擢されるだけのあれこれはやっぱりあるんだろうなあ。部下たちが手のかかる弟のように慕ってくれているというのも、決してハイジが傍から見ていて微笑ましいから、だけではないはずなんですよね。ちゃんと自分たちの命を大事に扱ってくれる、という信頼があった上で命を懸けるに足るものが彼にはある、と信じているからこそ、なのでしょう。それにしても、見る目のある出来た人たちだとは思いますが。一見すると、こいつヤバイんじゃない?と思うような子だしなあ。でも、本人は自信持ってないようだけれど、折々でちゃんと部下たちを指揮できてるんですよね。まあそれだけに、だからこそ、ハイジにとっては痛恨事だったのでしょうけれど、あれは。結果論だけれど、ハイジはそれを判断をミスった、と考えてるわけですしね。でも、へこんでもそこで心の痛みや疲弊に思考や身体を止めちゃわずに踏ん張り続けたところはハッキリ言って見直しました。もうちょっと打たれ弱いと思っていただけに。

最前線で戦い続ける立場から、急遽政略結婚の駒として他国の皇太子に嫁ぐことになったサクラ姫。同じ戦場で一緒に戦うだけでも何とか満足しようとしていたハイジにとっても、それは衝撃的な出来事で否応なく自分のサクラ姫への感情と対峙させられることになる。一方のサクラにとっても、結婚という事態を前に自分の諦観しきった感情をかき乱す存在であるハイジに対して、より深くその感情の正体が何なのかと向き合わなければならなくなるわけだ。
サブタイトルが慕情編、というのも伊達ではないのである。
結婚相手であるはずの皇太子から次々と送り込まれてくる刺客に、次々と櫛の歯が欠けたよう殺されていく随行員たち。まさに血塗れ泥まみれの花嫁行列となってしまったカバラ大王国への道行。普通、これだけ正体不明の暗殺者たちに襲われ続け、次々と同僚たちが殺されて行ったら随行員たちも動揺し、逃亡者も出そうなものなんだけれど、非戦闘員の文官も含めて最後まで規律を保ったまま士気も崩壊せずに目的地にまでたどり着くんですよね。これ、地味に凄いなあ、と感心した次第。最終的に出発時から半壊以上、3分の1も辿りつけなかったんじゃないかな。そういうむちゃくちゃな道程にも関わらず、最後まで皆サクラ姫を守り続けたというのは、やはりそれだけサクラ姫がカリスマを集めてたって事なんですよね。一般市民には殆どその知名度は浸透していないようだけれど、最前線での人気は相当なものになってたんじゃないだろうか。
実際、国王をはじめとする王家がサクラのことをどう考えているかわからないんだけれど、前線から引き剥がして政略結婚に利用しようとするだけの危険要素は積み上がりつつあった、とも言えるんだよなあ。

ラスト、かなりしっちゃかめっちゃかな展開になって、この巻で吹き荒れた殺戮の嵐がどのような意図で行われていたのか、その真意すらも有耶無耶になってしまったのか、それともこのラストの展開も含んだ上の事なのかもわからないまま次回に続いてしまったのだけれど、ある意味ここからが物語としての本番なのか。
真人、という重要な鍵も出てきましたし、とにかく次だ次。