封神演戯  2 (ダッシュエックス文庫)

【封神演戯 2】 森田季節/むつみまさと ダッシュエックス文庫

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殷(いん)は滅ばない――聞仲(ぶんちゅう)によってもたらされた情報の真偽を確かめるために一度崑崙(こんろん)に戻った太公望(たいこうぼう)。そこで、聞仲の強すぎる殷への執着によって歴史に変動が起きうる可能性を元始天尊(げんしてんそん)に語られる。どちらの歴史を選択するか、殷の存亡をかけて崑崙と金鰲(きんごう)による仙界大戦が勃発!! 聞仲は幹部の呂岳(りょがく)、趙公明(ちょうこうめい)と共に崑崙を急襲! 太公望もまた崑崙に残っていた太乙真人(たいいつしんじん)、竜吉公主(りゅうきつこうしゅ)たちと策を考える。だが、そのころナタが応援に向かった人間界では、妲己(だっき)姉妹と紂王(ちゅうおう)がなにやら妖しい動きを見せていて……!? 楊センと太上老君(たいじょうろうくん)の太公望をめぐる恋のバトルも勃発!? 宝貝(パオペエ)と美少女が入り乱れる新解釈「封神演義」待望の第二巻!
これ、太公望の根本のやる気が全然ないにも関わらず、責任背負い込んで死にそうになるまで頑張ってしまう所って元日本人っぽいなあ。これが変に前向きになると、スープーみたくうざくなってしまうのでどっちもどっちなんだけれど、嫌だ嫌だと思いながら手を抜けない、というのは小心者の特徴でもあるんですよね。もし手を抜いたり適当にやってしまった時に起こってしまうあれこれを想像してしまうと、もう不安で仕方なくて耐えられなくなるわけですよ。がっつりストレスが溜まってしまう。そんな精神状態で、サボって遊んでなんていられないのです。遊ぶなら、ダラダラするなら憂いも懸案も全部片付けてからでないと、心から安らげない。この太公望は、さらに関わった人間たちに対しての責任感も感じているから、輪をかけちゃってるんですよねえ。損を引き受けてることは誰よりも自分が理解しているにも関わらず、それを投げ出せない。それこそ、そんな性格なんだよねえ。幸いなのは、そんな太公望の在りようを周りの人達が利用しようとしていないことか。いや、利用はしてるんだけれどね、元始天尊も楊センも彼を踏み台にして使い潰そうというつもりだけは一切ないですし。楊センとは価値観こそ違えど、彼女は太公望のそんな損してる部分をこそ、愛おしんでいる節もありますし。だからこそ、彼には損だけじゃなく、もっとその働きに応じた相応しい得るべきものを得て欲しい、と思ってもどかしい思いをしてるんでしょうけれど、その彼女が得るべきと思ってるものを太公望は全然欲しがってないわけで、その食い違いにやきもきしてるんだよなあ、楊センは。
彼女の苛立ちは、その理由からして実に可愛らしくて好きなんだけれど、なかなか解消は難しそうなのよねえ。その点、太上老君の方が太公望の理解者ではあるんですけれど、でも応援したいのは楊センの方なのです。
自分の置かれた立場に対する苦悩、という点では紂王のそれも、面白いと思うんですよね。ただの善人にすぎない姫昌などよりも、ずっと王としての資質に優れていた紂王。だが、その優秀さに時代や人間がついてこれず、国を創造ではなく破壊へと傾けてしまうが故に、故意に愚者たらんとする彼の苦悩、もどかしさ、悔しさ。そんな彼が出会ったのは、出会ってしまったのは国の行く末など眼中に無く、ひたすら音楽に傾倒してオンリーワンの誰も聞いたことのない最高の音を探し続け、王としてではなく音を奏でる奏者としての紂王の才能を欲する妲己であったわけで。
真面目に世界の、歴史の、国家の行く末、未来を思い、様々な立場から自分の守るべきものを守ろうと、果たすべき役割を果たそうとしている崑崙と金鰲、殷と周の人々の中で、妲己たちだけが完全に違う方向向いちゃってるのが、なんともはや。妲己たちの第三勢力の動向がちょっと読めないんですよね、これ。目的ははっきりしているのだけれど、そこに至る過程をどう突き進むつもりなのか、さっぱりわからない。何しろ、妲己がその辺まったく考えてないんだもんなあ。妹分で実務面を担当している胡喜媚が、ある程度常識的に対応しているんでまだわかりやすい金鰲と妲己勢力がゆるい協力状態にある、という形に収束しているものの、妲己の気まぐれ次第ではどうなるものか。何しろ、紂王からしてえらいことになってるわけで、これ聞仲が知ったらどうなるのやら。

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