東京ドラゴンストライク (電撃文庫)

【東京ドラゴンストライク】  長田信織/緒原博綺 電撃文庫

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現代日本に《ドラゴン》襲来。その日、東京は戦場になった。

東京・池袋を訪れていた少年・結城景人は、突如現れた灰色の《竜》の襲撃に遭う。それは、飛行機や車など『動くあらゆるモノ』を竜と化す力を持った異世界の竜族・ニズレグの尖兵だった。重傷を負った景人を救ったのは、同じ竜族でニズレグを止めにやってきた少女・クウクル。自衛隊や米軍をも巻き込んだ未曾有の事態に発展する中、渦中に立つこととなった景人は――!?
日本国民1億3000万の命運を賭けた戦いが今、始まる。

おひょーーっ、これは紛うことなき怪獣映画じゃないですかっ!
 話の筋立てが完全に怪獣映画のノリ。しかも、これは平成ガメラ的な日常風景の中に突如天から厄災としての怪物が降ってくる、という臨場感タップリな作りなんですよね。政府や軍、マスコミの対応や一般市民の反応がまたいいんですよ。
突如現れた非現実的な光景に空白が生じ、真空に空気が流れこむように一気に切迫感が行き渡り、日本全体が非常事態という緊張感の中に包まれ、姿を現したドラゴンたちに対して対決姿勢が整っていく。この空気感の流れ方が見事に怪獣映画のそれで、劇場版らしい爆発力に漲っている。
主人公とヒロインは、その目まぐるしく動く空気感の中核に常に位置していて物語をリードしていってくれるのは、怪獣が主役の作品とはまたちゃんと違ったライトノベルらしい話になっているのも頼もしい。ちゃんと国家機関や自衛隊なんかが、主人公たちのサポートに徹して、彼らの活躍をお膳立てしてくれるんですよ。変に足を引っ張ることなく、主人公たちが持つ情報をちゃんと受け取って、最大限活かしてくれますしね。ぶっちゃけ、景人とクウクルの二人だけだったら出来ることはかなり少なかったはず。ちゃんと国家機関がバックアップしてくれることの有り難みが感じられます。
自衛隊をハジメとした各国の軍が、決してやられ役ではなく相応に現代兵器で活躍してくれるのも、ある意味平成ガメラ的と言えるのかもしれない。ちゃんと、カッコいいんですよー。敵の制空権下にある基地に乗り込むために、景人たちが乗る特殊装備を、F15Jイーグルで送ってもらわないといけない状況でこれですよ。
「一人乗りの回天だが、軽装備で私と君なら、どうにか入る。あとはイーグルのパイロットの選定に難航中だ。五分五分で撃墜されるだろう、危険な任務だからな」
「誰も乗りたがらない?」
「逆だ。『自分なら絶対に成功させる』と息巻くパイロットが何人もいる」
おいおいおい、熱すぎるよ、イーグルドライバー!
最終決戦は、海上から首都に迫る敵の群れに、陸海空の自衛隊に在日米軍が総力戦を挑む大盤振る舞い。うんうん、これは燃えますよ。

一方で怪獣側となる「ドラゴン」も、これが面白い設定で異世界の竜族の術により、機械類がドラゴン化するんですね。これは、敵側だけではなくて、味方のクウクルも同じなので、味方側のドラゴンもいるわけですけれど、まるでトランスフォーマーみたく、漠然とした「機械」じゃなくて、F15Jイーグルのドラゴンとか、F/A-18E/F スーパーホーネットのドラゴンなど、それぞれ差別化がなされてるんですよね。これが面白い。ちゃんと、元の兵器や機械の性能がドラゴンの性能に反映されていて、結構味方側のドラゴンには個性みたいなのも感じられて、愛着も湧いてくるんですよね。悪のドラゴン軍団対クウクルのドラゴンたち、というちゃんと怪獣対怪獣、しかも集団戦みたいな要素もあり、そこに自衛隊が共闘する展開が加わるわけである。さらに、主人公の景人には機械に対する特殊な能力があり、さらにクウクルと出会った時に致命的な傷を負い、緊急措置で半身を機械化ドラゴン化されて命を取り留めた、という生身でドラゴン相手に何とか渡り合える力を手に入れている、というヒーロー的な要素もあるわけですよ。さすがは劇場版、という盛りだくさんっぷりである。
それでいて、ちゃんと景人の悲劇的な過去にしっかりと因縁が絡まったクウクルとのボーイ・ミーツ・ガールとしてもすっきり筋立てが最初から最後まで通っていて、景人が抱えていた心の傷を見事にヒロインが癒やし救う展開になっている、見せるべきを余すことなく見せてるなかなか卒のない構成なんですよね。
さすがに一巻で片付けるために、やや駆け足気味ではあるんだけれど、個人的にはこの速さは疾走感として捉えられて、むしろ好ましいくらいでした。劇場版、堪能しました、燃えた燃えた面白かったっ!