落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)8 (GA文庫)

【落第騎士の英雄譚(キャバルリィ) 8】 海空りく/をん GA文庫

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《紅蓮の皇女》vs《風の剣帝》、《無冠の剣王》vs《凶運》因縁に終止符を打つ準決勝開始!

無数の剣で磔にされた珠雫と、その前で哄笑する天音――一輝の対戦相手を決める準々決勝の戦いは、
開始前の惨劇で幕を閉じた。
そして迎えた七星剣武祭準決勝戦。《紅蓮の皇女》と《風の剣帝》、
二人のAランク騎士は、かつてない規模で会場全体を蹂躙しつくす、埒外の戦いを繰り広げる。
さらにもう一つの準決勝、《無冠の剣王》と《凶運》の戦いは――
「僕、――この試合を棄権しようと思うんです」
天音の思わぬ発言で波乱の幕開けとなった! どこまでも翻弄してくる天音に、揺るがぬ覚悟で対峙する一輝。
最愛の恋人と約束した、決勝の舞台に向けて突き進む第八弾!
もうステラさんが、人間辞めちゃってるんですけど、これ! 人外とか化け物とか超人とか怪物とか悪魔とか魔獣とか神様とか、そんな方向ならこれまで覚醒してなっちゃう人たちはたくさん居ましたけどさ……これってもう『怪獣』ですよね、怪獣。ゴジラとかガメラとかキングコングとか、そっち方面の『KAIJU』。
わかってます、次は巨大化するんですよね!? 口からブレス吐くんですよね!? よし、スーパーXを呼べ! イェーガーを召喚しろ! ウルトラマンはまだかー!
メインヒロイン、メインヒロインと幾ら連呼しても、目の前にいるのは大怪獣ステラ・ヴァーミリオン。ヒロインとはいったいなんだったっけ? と遠い目になってるところに聞こえてくるのは、怪獣の雄叫びと破壊音。
「がぁおおーーっ!!」と吠えていた6巻の頃はまだ可愛らしかったんですね。もう人間の発声器官では出せない咆哮とか言われてるし。
これからは紅蓮の皇女改め、怪獣皇女でいいですね? よろしいんですね?
ああなるほど、黒乃理事長や西京先生たちはあれ、「出てくる漫画が違んじゃね?」と思ってしまうくらい頭のおかしい能力の持ち主だったけれど、ステラも無事にあっち側のアレになっちゃったんだなあ(遠い目)
ただでさえ取り返しのつかない変態というヒロインにあるまじきキャラクターでありながら、さらに怪獣みたくなってしまったステラさん。よくまあこんなのを恋人にしてやってけるなあ、と今更ながら一騎の器の大きさにはため息が漏れてしまいます。恋人としても大丈夫か、と思うところですけれど、それ以前にこんなのとどうやって戦うつもりなんだ、一騎は。一巻で戦った時と文字通り桁が7つほど違うぞこれ。

と、それ以前に決勝に進むためにはまずあの『凶運』紫乃宮天音に勝たなければならない。勝つ以前にこの相手とは、戦いの舞台に立てるのか、というところから高いハードルが待っていたわけだ。
それを何とかするために無茶をしたのが、珠雫とアリス。前巻の終わりの衝撃的なシーン、アリスは一体何をしてたんだ? と思っていたのですが、ちゃんと一緒に襲撃仕掛けてたのね。
もう無茶苦茶もいい所な天音の能力に、手も足も出ない珠雫とアリス。むしろたちが悪いのは天音の能力よりも、その能力がもたらした影響によって歪められた天音の性格でした。うん、ここまで性根が歪みきったキャラも久しぶりだ。相手の尊厳の踏みにじり方、大事にしているものを弄ぶやり方がそれはもう嫌らしくて、いっそ素晴らしく思えてくるほど。よくもまあ、そこまでピンポイントに人を貶められるものだと感心すらしてしまう。
あの珠雫がガチ泣きしたのってよっぽどですよ。それで怒髪天突いて激怒してきたのがステラだった、というのが嬉しいところでしたけれど。この二人、今となってはホントに仲良いんだよなあ。

ともあれ、凄まじいまでの邪悪な本性を露わにした天音に対して、これはもう気持ちよくスカッと痛快にぶちのめす展開だよね、と期待して手ぐすね引いていたら、待っていたのは期待以上の展開でした。うん、天音にこうなってしまう理由があり同情の余地があるのはわかっていたけれど、ここまで歪んでしまったらどうしようもない、と多くの人が思っていたのでしょうけれど、なるほどなあ、一騎がなりたいと理想に思い描いていた騎士というのは、こういう子をこそ見捨てない騎士だったのか。天音のあの能力を、無効化するとか攻略するというのじゃなく、真正面から乗り越えて、その絶対性を否定してみせ、潰すのではなく終わらせるのではなく、叩いて叩いて叩きのめした上で立ち上がらせる、という……自分だけ絶対を乗り越えるのではなく、諦めてしまっていた天音当人をも、戦いを通じて一緒に、彼を縛り付けていた彼自身の能力を乗り越えさせる、という熱い熱い展開が待っていたわけだ。正直、天音戦でここまで胸が熱くなるとは思ってなかったです。天音が無様を晒し、惨めにのたうちまわり、それでも諦めきっていた彼がどれだけ格好悪くても諦めずに立ち上がり抗い戦い抜こうとする姿には、それを引っ張りだした一騎の騎士としての志に、胸打たれたよ。格好良かった、熱かった。その痛快さは、胸のすくような爽快な痛快さだった。
かつて、あの一巻で一騎がステラに語った夢が、ここで一つ実現するとはなあ。あのセリフが一騎の口から贈られ、それがちゃんと相手に伝わり受け継がれていくシーンには、素直に感動してしまいました。

あと、さり気なく『白衣の騎士』のキリコさんが、やたらかっこよくいい所持ってったんですけどw この人、戦闘シーンこそ出番ないけれど、登場する度にいちいち言動がカッコいいんだよなあ。惚れる。

さあ、次はついに長きに渡って待ちに待った、一騎とステラの決勝戦だ。

シリーズ感想