カボチャ頭のランタン03  (ダッシュエックス文庫)

【カボチャ頭のランタン 03】  mm/kyo ダッシュエックス文庫

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迷宮から無事帰還したランタン一行は、敵襲を誘い出そうと一計を案じる。ランタンに強い執着を見せる射手・バラクロフ。狂乱する麻薬密売組織の頭首・カルレロ。そして背後に控える巨大な黒幕…。探索者ギルド職員テス、傭兵探索者ルーと共に、ランタンとリリオンは激化する戦いに身を投じる。そして明かされるランタンの、リリオンの過去。出会うべくして少年と少女は出会い、独りと独りはやがて二人になった…。圧倒的な描写力で綴る本格迷宮ファンタジー、WEB版からの大幅改稿を経てさらなる魅力で贈る待望の第三巻!!
テスさんの、あの犬頭にも関わらず色気と美人さが伝わってくるデザインはやはり素晴らしいなあ、と表紙を眺めながらしみじみと実感してみたり。
見目も然ることながら、生き様がすごいシャープなんですよね。わりと好き勝手奔放に振舞っているあたり、周りの人たちは大変な思いをしているだろうことは、弟や同輩、司書さんからの反応からも窺い知れるのだけれど、迷惑や厄介事を押し付けられ引っ掻き回されながらもテスを嫌う様子だけは誰も見せない、というのは人徳なのかねえ、これ。嫌いになれない愛嬌みたいのがあるんだろうか。ふと一瞬、テスさんが垣間見せる弟への愛情や司書さんへの友情なんかを目の当たりにしてしまうと、その気持ちもわかるんですけどね。でも、基本的に近づくな危険、というヤバイ系ではあるんだよなあ。
しかし、仮にもこの人に手綱つけて組織に所属させている、というのは探索者ギルドって結構懐の深い組織なんだろうか。受付のお姉さんもいい人だし、テスさんの同輩の隊長さんも、有能であれ結構人格者っぽいしねえ。
正直探索者稼業というのはどうしたって血生臭く世間からドロップアウトしがちな人間が多いもので、スラムの様子や探索者崩れと呼ばれる者たちの堕ちっぷりを見れば際どい業界だと言わざるをえないのだけれど、少なくとも後ろ盾となるギルドがしっかりしている、というのは頼もしい。図らずも、ランタンとリリオンはそんな組織と知遇を得られたわけで、今回の襲撃の一件がもろにランタンやリリオン個人を狙ってきているものだと判明した以上、ギルドに頼れるというのは無視できない大きな要素のはず。
というわけで、今回はダンジョン攻略戦ではなく徹底して対人戦。それも、市街戦での多人数戦闘と相成ったわけだけれど……敵さん、その殆どがヤク中か薬漬けで洗脳されてる相手、ということで強さはともかく戦う意思に関しては人形みたいなもので、覚悟や欲望がぶつかり合うような戦いではなかっただけに熱いものにはいささか欠けたかなあ。確固として剣を交え命のやり取りをしあう理由がお互いになかった感じなので。暗く欲望に爛れた薄汚い意思、大敵となり得る相手は背後の闇に隠れたまま戦いの最中は姿を表さなかったわけですしね。出てきたら出てきたで、あまりのおぞましい悪臭に顔をしかめざるを得なかったのですが。
まあ相手に強さとしての歯ごたえは兎も角、敵としての手応えがなかった分、ひたすら戦いながらもランタンとリリオンがイチャイチャしていた気もしますが。頑張って猛威をふるうリリオンを、ランタンが愛でるや愛でるや。その成長に目を細め、慈しみを絶やさないその可愛がりような、もう目に入れても痛くない、というレベルで。
まあわかるんですけどね。体つきこそ大きいけれど、中身はまだ年齢ひとケタ台の幼気な子供にすぎないリリオンは、その言動、反応、全部が可愛い盛りでねえ。でかい図体で幼女ぶられても、と思われるかもしれませんが、これが殊の外良くて。うん、大きいのも愛嬌さぁ。
そんな無邪気で無垢で健気で純真なリリオンだけれど、彼女の陰惨な過去を知るとよくまあそんな綺麗な心のままで入られたものだ、と重たい気分にさせられる。そして、穢れの一つもないように振る舞う彼女だけれど、はっきりと彼女の口から自分の中には怨がある、と明言されてるんですよね。恨み、憎しみ、怒り、そういったものが源泉として彼女の中にある。そして、この街に来るまでに彼女が味わった辛酸は、深い傷として今なお血を流し続けている。それでありながら、今のリリオンがあれだけ明るく天真爛漫に振る舞えるというのは、それだけランタンと過ごす時間が彼女の心を守ってるということなのだろう。傷つき血を流し暗い炎に焼かれ続けている心から、痛みも負の感情も消し去ってしまうほどの安らぎを、安心を、幸福を、この小さい少年は大きな幼女に与え続けているわけだ。リリオンのランタンへの態度も健気だけれど、ランタンのそれも献身だよなあ。
そんな二人を、身も心も尊厳も自由もすべてを脅かそうとするおぞましい悪意の塊が、黒幕として敵として浮かび上がってきた今回のお話。徹底してやりあうには十分な邪悪である。

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