「地下鉄に乗るっ」シリーズ 京・ガールズデイズ1 ~太秦萌の九十九戯曲~ (講談社ラノベ文庫)

【「地下鉄に乗るっ」シリーズ 京・ガールズデイズ 1.太秦萌の九十九戯】 幹/賀茂川 講談社ラノベ文庫

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Kindle B☆W

連休直前に送られてきた『京都・パワースポット巡り』の案内。写真撮影が好きな太秦萌は幼馴染みの松賀咲と小野ミサと、このイベントで思い出作りをしようと考えた。パワースポットを巡りきると願い事が叶うというのにも心惹かれていたが、今まで三人で市内観光をしたことがなかったのだ。張り切る萌の前に、イベントの案内役だという自称“精霊”の都くんが現れた。萌たちは都くんに色々な意味合いで妖しい巫女の元へと連れて行かれる。巫女はイベントの本当の目的を語り始めた。これはいくつかの試練を乗り越えなければならない神聖な祭なのだと。果たしてどんな苦難が待ち受けているのか…!?元気ハツラツ★ガールズストーリー!!
作者の幹さんと言えば、【神様のお仕事】シリーズなどを良作を手がけてきた人なのだけれど、その人がノベライズ。しかも「地下鉄に乗るっ」シリーズって……聞いたことないんだけれど、なにこれ? と、思ったら、本作に出てくる幼馴染三人娘が京都市営地下鉄PRキャラクターなんですか。そりゃあ知らんわ。読み終わってあとがき読むまで、これが企画物という背景も知らなかったのですが、まずキャラクターありきで、バックストーリーとかもなかったと思うんだけれど、そういう所が引っかからずに素直に物語に入っていけたので、改めて振り返ると上手いこと作品世界を構築してたんだなあ、とちょいと感心してしまいました。太秦萌と、他の二人の関係からして何もなかったはずですしね。制服からして違うのだから、同じ学校の生徒にも出来ず、どうやって一緒に動かすのか、というところから考えねばならなかったはずなのですけれど、バラバラの学校に通う幼馴染同士、というところからスタートさせて、そこから三人が一緒に京都巡りをする理由とこの物語の着地地点までうまいこと繋げてるんですよねええ。オリジナルキャラとなる白河澄の存在も、彼女らの京都巡りのコンセプトに上手いこと合致させて、自然に流れの中に加わる形になってましたしねえ。
神様の領域に片足をつっこみ、普通の人が見えない八百万の世界が混じり入った現実の京都で様々な賑やかなイベントに巻き込まれながら、京都各所の著名なスポット、或いは穴場の名所、地元の名物なんかをめぐっていくわけだけれど、話を読み進めていくと自然に京都の情報が頭のなかに滑り込んでくる。物語は添え物で観光案内の情報を羅列するのがメイン、というのでは全然なくて、あくまで物語が主眼であり、それを楽しんでいたら自然と……という風に出来ているんで、観光案内としても実にお見事。観光情報ばっかり強調されて目の前に押し出されてもつまらないですし、読み飽きちゃいますもんね。その点、本作は観光案内というコンセプトを意識せずに、純粋に最後まで物語として面白かったですし。
でも、地下鉄にはそんなに乗ってなかったような…(笑
ちなみに、世界観についてはやはり幹さんの一連のシリーズと共通しているようで、八百万の神様や妖怪たちも一般人には見えないながら、ちゃんと地元に根を張って存在している世界のようで、その点でも入って行きやすかったのかな。多分、この作品内では神務省とかもあるんだろうなあ。狐面の巫女さんも、そっち関係の人だろうし。

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