あやかし露天商ティキタカ (GA文庫)

【あやかし露天商ティキタカ】 井上樹/ゆらん GA文庫

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「――ウイ●レ。それ一番新しい奴ですか?」
「え? ……あ、あぁ、そうだけど」
ある日突然江口海人の机の引き出しから現れたのは、ウイ●レ好きのティキタカと名乗る美少女だった。
ティキタカはあやかし相手の商売をしていて、店を開くために海人の部屋を借りたいと言うのだが……!?
部屋を貸すメリットが無いと渋る海人に、賃料代わりにモテ薬を渡すと告げるティキタカ。
露骨な買収に対し、海人は毅然と言うのだった。
「まず、一カ月だけ契約してみるわ」
果たしてモテ薬に釣られた海人を待ちうけるさまざまな運命とは!?
猗少女畛々爐△笋し瓩福第7回GA文庫大賞《奨励賞》受賞作。
これ引き出しから出てくるってのはやっぱりドラえもんなんだろうか。大山のぶ代声も水田わさび声も似せて喋れるらしいですけれど、ティキタカさん。でも、一話一話がティキタカが扱う道具が主題になる話、ではないんですよね。道具自体も、不思議な代物ではあっても、ファンタジーや伝奇モノなどのフィクションでは何の珍しさもないモノばかりですし。では、彼女が開く店を訪れるあやかしたちが一話一話の主体になっていくのか、というとそういうわけでもなく……。ちょっとねえ、キャラクターも物語もぼんやりと焦点が合っていなくて芯が通っていない感じなのかな。ティキタカの掴みどころのない飄々とした、しかし胡散臭さよりもどこか信頼できる感じのするふんわりと据わったキャラクターは面白いなあと思ったんですけれどね、それ以外がどうも……。主人公からして、まずキャラ定まってないんですよねえ。ボッチで友達も少ないタイプ、というわりには普通にコミュニケーション能力も高くて積極性もあり、好奇心も旺盛、と。話によって人物像もフラフラと揺らいでるんですよね。え、この子ってそんなタイプだったっけ? とシチュエーションによって言動が変わってくる感じで。局面の変化によって行動や考え方に変化が生まれた、というのならいいんですけれどねえ。脚本がないと動き出さないタイプ、とまでは言わないんだけれど、もう少しイメージ固めて来ないとなあ。
ティキタカの常連客として海人の部屋に入り浸ることになる竜の娘や女騎士も、なんかいつの間にか現れていて、何の背景も素性も明らかにされないまま普通に仲間みたいに居座っていて、キャラの投入の仕方としては雑極まっていたような気がします。幼馴染と相思相愛ってのは、幼馴染ストとしてはバッチこいなシチュエーションではあるんですけれど、疎遠だった彼女との寄りの戻し方や想いのリスタートも、もうちょっと丁寧に構築して欲しかったかなあ。とりあえず、脚本上の結果への持って行き方が全体的に雑というか、過程を適当にすっ飛ばしている感が随所に見受けられて、まだまだ書き慣れていないのか、それともそのへんの丁寧さに欠けるのか、首を傾げるシーンが多かったです。
とまあ、基本的な部分から色々と未熟さや物足りなさが見受けられる作品なのですが、メインとなるティキタカの存在感と、彼女を中心に醸しだされる飄々とした雰囲気がなんとも好みでねえ。読んでて引っかかりながらも、結構読み心地よかったんですよ。だからこそ、余計にもったいない感が強かったのかもしれません。
ともあれ、もうちょい全体的に上手くなってから、かなあ。