ファング・オブ・アンダードッグ3 沈没の空 (ダッシュエックス文庫)

【ファング・オブ・アンダードッグ 3.沈没の空】 アサウラ/晩杯あきら ダッシュエックス文庫

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世界を巡る任務の合間に湖畔の村ヤン・バーミを訪れたアルクとユニ。そこはソラの故郷であり、紫苑という、彼と結婚の約束をした女性がいた。最近二人の文通が滞っていることから代わりに様子を見に来たのだが、そこでアルク達は思わぬ事実を知ってしまう。一方、総本山では罌粟が「睡眠期」に入り、その時をはかったかのように謎の巨大飛翔体、八体が現れ、総本山を包囲する。イリスの指揮の下、陣士総動員で撃破に向かうことになり、アルク達もその最前線へ赴くのだが、リベルテンの手は総本山内部にすら深く入り込んでいて―!?陣士として、友として、アルクは極限の空中戦に挑む!無頼派和風バトルアクション第3幕!
陣士として着実に成熟し成長しつつあるアルクだけれど、人として男としてはまだ幼く純粋なんですよね。でも、その純粋さがずっと虐げられ傷ついてきた男にとっては眩しいものだったんだろうなあ。その純粋さがまっすぐ自分に向けられ、その未成熟さが自分のために憤ってくれるのは、ソラにとって嬉しいことだったんだろうなあ。
でもその痛いくらいの好意は、ソラにとって決して心地よいだけのものではなかったはず。放っておいてくれ、余計なことを、お前の知ったことではない、そう思う部分がなかったわけではないだろう。アルク自身も純粋であってもバカではない、察しが悪いわけでもない。自分の行為や感情が、決して相手に喜ばれるだけのものではないものだと理解し、恐れていたのも事実である。しかし、ソラは一切そうした反駁を見せなかった。全部飲み込んで見せて、自分にとってありがたく嬉しかった部分だけを救い上げて汲みとって、心から笑ってくれた。器だろう。そういう男なのだ。アルクだけに対してではない、自分が愛した女性にも自分が友だと信じた男にも、彼は苦しく痛みを感じる部分を全部飲み込んで、自分の中の輝かしい姿の彼らを一切穢さなかった。相手の幸せを、本当に心から願い喜べる男であったのだ。
良い男である。この男こそ、得難い友である。だからこそ、彼には、ソラには……。いや、言うまい。それは、彼の覚悟にとって無粋ですらある。その結末に、彼は一抹の不満も抱いてはいなかったのだから。彼は、やり遂げていったのだから。
戦友であり親友でありもう一人の兄でもあった男の生き様を見届け、その姿を目に焼き付け、その魂を託されたアルクは、また一つ人生の歩みを進める。少年は男になっていく。アルクは、幸いなのだろう。いつまでも追い続ける事のできる偉大な背中を持つ兄貴分を、二人も身近に得ていたのだから。

……あの二人は、幸せになれるだろうか。なって欲しいな。ソラは、それを心から望んで願っていたのだから。彼の祝福を、呪いにはしないで欲しい。痛みも苦しみも悲しみも乗り越えて、幸せになって欲しい。そう思う。

物語は、激動の展開を経てクライマックスへ。かつて陣士となるための試練でライバルとして競い合ったあのコンビの再登場が、頼もしい仲間としての再会となったのは嬉しい限り。いやあ、あの人達がこれだけ命がけで一緒に戦ってくれて、口や態度ではなんやかんや言いながら、本気でアルクたちを心配して助けてくれたのは嬉しかったなあ。しかも、めっちゃパワーアップしていたし。
あの烏たちもどうやら次回登場するみたいだし、楽しみ楽しみ……ところで烏のお嬢さん、なぜ耳かき棒を用意している?w

シリーズ感想