英雄都市のバカども ~王女と封鎖された英雄都市~ (ファンタジア文庫)

【英雄都市のバカども ~王女と封鎖された英雄都市~】 アサウラ/だぶ竜 富士見ファンタジア文庫

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かつて戦乱から街を守り切った英雄たちの末裔が住む辺境都市・リキュール。その血は、今も脈々と受け継がれていた。身の丈ほどの大剣を操る無双のシスコン自警団長、誰にもそのお尻を触らせない眩惑の看板娘、鋼のごとき硬さの絶品パンを焼く職人、大岩を軽々と担ぐ剛力の大工(手抜き)…。そんな、毎日がお祭り騒ぎのこの街に暮らす、ワケありビンボー何でも屋モルト。彼のもとに、祖国を追われた王女が逃げ込んできた!彼女を追う帝国は、圧倒的大軍で街を包囲する。窮地のリキュールだが、可憐な少女を見捨てるなんて選択肢は、英雄の血を引くバカどもの頭にはもちろん存在せず―!?
バカだ、バカ過ぎるww
凄いなあ、このバカが敷き詰められたかのようなバカの密集感。普通は、底抜けのバカがたくさん登場すると言っても、主要人物周りが中心であって周辺のモブの人たちはそんな「バカ」の馬鹿げたなさりように振り回され、慄き、逃げ惑うものなのですが、この作品と来たら、一つの都市丸ごとが無名の住人一人ひとりに至るまで手遅れのバカばっかり! 上は政治家から下は一般庶民に至るまで総じてバカ。その辺を歩いているモブさんの反応からして、もうなんというか「あかんやろう」というようなトチ狂いっぷりで、この街ヤバイ感がパないのである。むしろ、細密に描かれる個々人のキャラの方が若干まともに見えるんじゃないだろうか。あくまで若干ですけどね!!
でも、ホントに馬鹿ばっかりなんだけれど、決して考えなしの愚か者ではないんですよね。いや、考えなしはみんな考えなしのような気もするのですけれど、刹那的に暴走して好き勝手やらかすようなどうしようもない連中はいないんですよ。帝国から送られてきた軍隊に街を包囲され、厳重な封鎖下に置かれ、兵士たちに傍若無人な振る舞いをされても、脊髄反射的に反応するのではなく、じっと堪えて耐え忍ぼうと市民一人ひとりが選択しているあたりなど、とても理性的で忍耐強い対応なんですよ。
その奥底でふつふつと滾らせている「モノ」が極めて馬鹿っぽい方向性で、ベクトルがマイナス向いてなくて痛快な方向なのが、本当に「バカ」なんですけどねえ。なんて気持ちの良いバカっぷりだろう。陰鬱なものを抱え込まず、スカッと吹き飛ばしてくれる。
いやね、でもそれにしても、その我慢に我慢を重ねた末に爆発させたものが、完全に「ヒャッハー」系なのはイカンともしがたいw いや、ヒャッハーなノリだけならまだしも、なぜ脱ぐ。いやもう本当になぜ脱ぐ!!

なぜ脱ぐ!?

一人ならまだしも、集団だとインパクトが。ビジュアルがww
個々にスポットをアテても濃いし、じゃあと俯瞰的に街を見渡してもやっぱり濃いし、こんな濃度の濃すぎる街に普通のメンタルで何の構えも備えも覚悟もなく、無防備に突っかかっていく帝国軍の哀れな生け贄の人たちのなさりようは、パンパンに膨らんだ風船をキャッキャと尖った枝でつついて遊んでいるようにしか見えず、もうあかん、それはあかん、と顔を覆うしかありませんでした。

案の定!

はい、ご愁傷様です。見事に頭のオカシイことになって振る舞わされ、戦慄し、逃げ惑うマトモな愚か者たちの末路には、両手を合わせて南無南無と冥福を祈るしかございません。

なんか表紙はサシャが飾っているし、ウェブ版でメインヒロインしているのは下宿の娘さんのリッツらしいのですが、本編のヒロインはサブタイトルにもなっている王女さまのディア。ゲストヒロインという扱いなんだろうけれど、これがまた「ルパン三世カリオストロの城」のクラリス並にガチンコのお姫様ヒロインしてるんですよね。あれ? こんなに本気でモルトに惚れていいの? というくらい、しっとりと恋愛モードに入っちゃってるんですよね。天然でぽわぽわした性格からして、モルトの積極的なアプローチを無自覚に受け流すのかと思ったら、しっかりと受け止めて本気になっちゃってますし。しかし、一方で王女としての自覚に目覚め、己の責任を果たすためにこの恋は道ならぬものとして割りきっていってしまうのですけれど、ゲストヒロインとして一話で去っていくにはもったいないくらいの人だったなあ。なんかこれだけガチになりながら後腐れなく距離を置いていってしまうのは、作者の作品【ベン・トー】のアイドル広部さんをちと連想してしまいました。
ベン・トーと言えば、作者お得意の飯テロ描写は本作でも健在。端からあれだけガツンと美味しそうな描写されちゃうと、困るから。お腹減っちゃうから。減ってなくても、なんか食べたくて仕方なくなるから!
これだから、アサウラさんの作品は構えて読まないといけないんだよなあ。

次巻も1月には出るみたいですし、ウェブ連載している話の方もいずれ出てくるでしょうし、楽しみなシリーズがスタートしましたねえ。

アサウラ作品感想