甘城ブリリアントパーク (7) (ファンタジア文庫)

【甘城ブリリアントパーク 7】 賀東招二/なかじまゆか 富士見ファンタジア文庫

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みんな元気~!?どうもです。水の精霊ミュースです。可児江さんはなんだかぴりぴりしてるけど、最近甘ブリには活気が出てきています!けど…エレメンタリオの信じられない秘密が明らかになってちょっとへこみ気味です。サーラマのお家は燃えちゃうし、コボリーの動きは怪しいし、シルフィーは相変わらずだし。あたしもモッフルさんたちとの突発飲み会で、大胆な告白させられちゃうし…。ダメです!これは、あくまでプライベートのこと…パークの未来はあたしたちキャストのがんばりにかかってるんだから!今日もエレメンタリオで、ゲストのみなさんをお待ちしてます!!

今回は短編集、それもエレメンタリオの精霊四人組が主人公。今となっては信じられないんですけれど、ミュースたちってアニメ化の企画がはじまるまでは小説ではまともに出番なかったんですよねえ。むしろ、バイト三人娘のABCの方がそれぞれ当番回があって優遇されているくらいで。ほんと、今となっては主人公とメインヒロインのいすずと姫さま、いや場合によっては姫様よりも存在感あるキャラクターになっているんですよねえ、なんともはや。
この子たちって、シルフィーはアレとしても、ミュースもサーラマもコボリーも言わば「普通の娘」なんですよ。或いは、特異なキャラクター付されているえーこ、びーの、しーなのバイト三人娘よりも普通の年頃の女の子かもしれない。女子高生ではなくて、社会人として働いている若い女性、という括りになるけれど内面の心の動きなんて、すごく普通なわけですよ。これは、主人公の西也やいすずたちにはないアドバンテージなんですよね。あのメインの連中って、そりゃもう七面倒臭い性格や条件付けがされていて一般庶民の範疇から随分外れているわけですよ。それに対して、ミュースたちはほんと、精霊のくせに庶民で、生活感を背負っているわけである。それも、随分と生々しいのを。
だから、彼女らにスポットを当てて、しかも日常シーンを切り取ってくると、背伸びしていない等身大の面白い話が転がり込んでくるわけだ。賀東さん、フルメタの頃から短編は変に突拍子もないキャラぶっこむよりも、こういう日常の延長線上で生々しいやり取りしてる話の方が、けっこう面白かったりするパターン多かったんですけれど、この甘ブリだとミュースたちがその辺、一番ぴったり合致してるのよねえ。

「火の精霊なんだけど仕事から帰ってきたら自宅が炎上してた件」
家の近所が火事になった経験はあるけれど、さすがに水は被らなかったなあ。ってか、火の粉が凄くて熱も凄くて、ウチの方まで延焼しないかでハラハラしながら見守っていたので、それどころではなかったですけれど。
部屋が焼けてしまったので、しばらく知り合いの家に止めてもらうことになったサーラマが、色んな人の部屋に泊まり歩くというお話なわけだけれど、初っ端で親友であるはずのミュースに宿泊を断られてしまった、あのショックな感覚。断られるなんて夢にも思っていなかっただけに、サーラマのあの怒ったり拗ねたりも出来ずにもろに落ち込んでしまう感覚は、なんだか沁みてくる。この後、色んな人から自分のところに泊まりなさい、と声かけて貰い渡り歩くのですけれど、サーラマこの最初のショックをずっと引きずってるんですよね。
もちろん、ミュースには相応の理由があって、サーラマのことを放置していたわけでもないのですけれど、サーラマの心の浮沈具合がなかなか繊細な描写がなされていて、面白かったですねえ。一番大雑把っぽいけれど、サーラマが一番繊細なんだよなあ、メンタル。
あと、結局ミュースとサーラマがラブラブすぎるんですけれどw

「腐ってばっかりじゃないんですよ?」
……これって、ちゃんと申請すればちゃんとお手当出るんじゃないですか? というレベルで色々とこっそり仕事してるんじゃないですか、コボリーさん。
知らないうちに仕事を片付けてくれている妖精さんがいる、という噂が広がる甘ブリ。なまじマジモノの妖精さんや精霊さんが働いている職場で、ただで働いてくれる妖精さんとか、なんてご都合よろしいのか。
あー、でも総支配人の西也があの薄給だもんなあ。


「普段ない組み合わせ」
ワニピー……。あー、この、飲み会に参加しつつ、会話にも加わらず、という人には身につまされるものがある。自分はさすがに気配消せないですし、喋るようにしてるし大概楽しく話せるんだけれど、飲み会ってのは結構な頻度で面倒くさい話ばっかりになる時があるので、そうなるともう端っこでじっと食べてたくなる。話こっち振らなくていいから、という気分になるよね。気を使って話しかけてくれるのが、もういいから、という感じで。
そういう人はむしろ放っておいてあげましょうって。しばらく安静にさせておくと、元気というか気力が戻ってくる場合もありますしw
さて、ワニピーくんは置いておくとして、注目はやはりアーシェとモッフルのチクチクとお互いを針で突くような、時々本気でぶっ刺してるようなアレな会話なわけで……これ、酔ってるからなのか正気でやりあってるのか、どっちにしろ酒の席だから、というのもあるんでしょうけれど、参るよなあ(苦笑
大半、ミュースに聞かせて反応楽しんでるんじゃ、という感じでもありますけれどw
ミュースからすると、自分が遠慮してなるべく触らないようにしている部分にズカズカ踏み込んできて、それをえらく乱暴に扱われた挙句に、あんなこと聞かれたら……そりゃ痛いって。
アーシェもモッフルも、果たしてどこまで分かって聞いたのか。いずれにしても、泣かせたのは間違いないわけだから、その無神経さは反省するべし。ある程度、これが無神経な質問だ、と理解しながら言ってるあたり、たちが悪いけど。


「しるふぃー・ちゃんねる!わくわくレビュー」
シルフィーが主役で彼女の視点の話だけに、執筆のノリからして随分とはっちゃけているというかイカれてるなあ、と若干引きながら読んでたんだけれど、あとがき読むとわざとグデングデンに酩酊してる状態で書いたらしくて、さもあらんと納得したというか、なんかすげえと感嘆したというか。ある意味、あの変人シルフィーの難解なメンタリティが生々しく感じられるエラいお話でした。


次回は、こちら渦中の只中にある本編の方に話が戻るようで。激動真っ最中なだけに、すぐに本編戻ってくれるのはありがたい。

シリーズ感想