神楽剣舞のエアリアル 5 (GA文庫)

【神楽剣舞のエアリアル 5】 千羽十訊/むつみまさと GA文庫

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決戦、フォルクヴァング島上空!

「奇跡は一度だよ。今度は、自力で勝たねばならん。勝てねえってんなら、なんのために救われたんだ?」
魔王と化した灯護は、学院のある島で、向こうの世界との〈門〉を開き、攻め入るという。それを阻止するため戦艦〈ナグルファル〉を追う雪人たち。そして、侵攻する魔王軍を迎え撃つために、騎士団や冒険者たちも自らの信念に基づき、行動を開始していた。

魔王の無尽蔵の魔力を持つ灯護に勝つ術のない雪人へ、風夕は告げる。
「ずっとずっと、キサマと一緒に戦いたかった。キサマの力になれるなら、私は、私の全てを賭けられる」

魔術と剣戟が加速する異世界バトルファンタジー、断魔の第5弾!
あらすじにはちゃんと書いていないけれど、これが完結巻。結局、最初から崩れていた構成バランスは最後まで復旧できなかったかー。浮遊島がいくつも浮かび飛翔船が飛び交う異世界、それと現代異能の退魔師が異世界転移してくる世界観のドッキング、性格も色鮮やかで内面描写も丁寧なキャラクター同士の人間関係をじっくり描いていくスタイル、単体の要素を見ると、全部水準以上に出来上がっていて何よりどれもワクワクさせてくれる魅力があるんですよね。それこそが、本作をきちんと五巻まで続かせた要因ではあるんだろうけれど、その単体の戦闘力を連携して乗算出来なかった、というのが最後までつきまとった印象でした。
今回の最終決戦でも、総力戦ということでこれまで出てきたキャラクターに加えて、現代日本からの来援など盛り上がる様子はたくさんあったにも関わらず、それを有機的に運用出来たかというと……。雪人が現代日本ときっちり別れを済ませてこの異世界の住人として生きていく姿勢を決め、これまでの生き方も改めてヒロインたちみんなと生きていく覚悟を決める、というこれまでの5巻で積み重ねてきたものの集大成をちゃんとしているんですけれど……うん、スポットスポットは凄くきっちりと出来てるんですよね。盛り上がりもある。でも、もったいないなあ、焦点絞りすぎなんだよなあ。今回は特に全体的に盛り上げなければならないにも関わらず、どうしても雪人と風夕の内面描写と熟成した関係の整理に終止していて、ルナはともかくとしてフランが完全に放ったらかしだったんですよね。トリプルヒロインの一角だぜ。恩師との決着、というところはきっちりやっているにも関わらず、この蚊帳の外感は……。フラン回の時はみっちりフラン尽くしだったんですけどね、その分ほかを放置していた揺り返しが……。前回登場した歌澄さんについても、今回は全然存在感なかったし。雪人の戦友にして歌澄さんの婚約者の人に全部持ってかれちゃってるんですよね。
何より、肝心のラスボスである灯護の放ったらかされ方と来たら……。彼に能力的に太刀打ちできない、という点で随分と苦悩することになるのですが、あくまで焦点があたっているのは彼との能力差であって、彼の内面的な部分についてはもうバッサリと相手にしてなくて、戦うしか無いと割り切っているからでしょうけれど、好敵手としても怨敵としてもラスボスとしても、単なる障害としてしか扱われてなかったんですよね。焦点はほんとに、雪人と風夕、ルナあたりとのそれに定まってしまっていたんですよね。人間関係の熟成とその決着は、物語の結末において大切は大切なんですけれど、総力戦の最終決戦となるとやっぱりみんなが主役のような活躍をして欲しいじゃないですか。
実際、そういう描写はなされてるんですよ。みんなが活躍する展開にはなっている。にも関わらず、これだけ存在感のバランスが偏ってしまっているのは、これはもうどうしようもないのか。あれですよ、艦長として個艦戦闘を指揮するのは上手くても、司令官として戦域を指揮するのは苦手、みたいな。決して、ヘタではなく形としてはちゃんと仕上がっているんですけれど、物足りなさが付きまとってしまうんですよね。
物語としては水準以上に仕上がっているだけに、もし配分調整をもっと上手いことやれたら、その面白さと完成度はびっくりするくらい跳ね上がりそうな感触が伺える作品でした。でも、曖昧で具体的な指摘のしにくい難しい部分なだけに、いや困難なことを言ってるなあと思うんですけれどね。だからこそ、次回作が楽しみです。

シリーズ感想