人狼への転生、魔王の副官 1 魔都の誕生 (アース・スターノベル)

【人狼への転生、魔王の副官 1.魔都の誕生】 漂月/ 西E田 アース・スターノベル

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魔王軍第三師団の副師団長ヴァイト――それが、人狼に転生した俺の今の姿だ。
そんな俺は交易都市リューンハイトの支配と防衛を任されたのだが、魔族と人間……種族が違えば文化や考え方も異なるわけで、街ひとつを統治するにも苦労が絶えない。
俺は元人間の現魔族だし、両者の言い分はよくわかる。
だからこそ平和的に事を進めたいのだが……。
やたらと暴力で訴えがちな魔族たちを従え、文句の多い人間たちも何とかして、今日も魔王軍の中堅幹部として頑張ります!
脳筋で何かと力に頼ろうとする魔族をなだめ、魔族の統治に反抗する人間たちを様々な手練手管でおとなしくさせ、と両者がもたらす言い分や不満、問題を間に立ってパタパタと駆けずり回り解決していく中間管理職ヴァイトくん。まあ問題は次々と降りかかってくるのですけれど、基本はイージーモードなんですよね。部下の魔族たちは脳筋だけれど気のいい連中でちゃんと言うこと聞いてくれますし、上司の師団長や魔王さまも無茶は言わないし概ねヴァイトのやりたいようにさせてくれて、その上でドーンと後ろで控えてくれている、という人たちなので、職場環境としては実にホワイトなのである。このヴァイトくんがそもそもワーカーホリック気味なところがあって、ヒーヒー言いながらもそれを楽しそうにこなしているので、作品の雰囲気自体わりとほんわかしていたりする。特に第3師団はいつも笑顔が絶えないアットホームな職場なので、和気藹々としてるんですよねー……大丈夫、人員の入れ替わりは激しくないですからw
笑顔の絶えないアットホームな、とかいうと胡散臭いことこの上ないですが、第3師団自体が団長の大魔法使いをお師匠様として家長として副師団長たちが弟子であるという家庭的な集団で穏健派な上に、ヴァイトが率いる人狼隊も同じ田舎の村の同郷の古馴染みばかりなので、アットホームというのは建前じゃないんですね。
それでなのか、上司からのプレッシャーもないからなのか、ヴァイトも面倒くさい立場で人間たちの街リューンハイトの統治を行いながらも、わりとリラックスした感じでサクサクっと問題を片付けていく。
人間サイドからも、もちろん侵略を受けて魔族という異質の集団に支配されてしまったリューンハイト市民としては、何をされるかわからないものだから最初相当ビビっていたのだけれど、ヴァイトの統治は非常に穏健で人間サイドの立場を領主から衛視、商人や各種宗教、市民生活に至るまで気配りの行き届いた理解と慮りのある姿勢で、統治方針を示してきたのでかなり拍子抜けした感じで反抗の機運は薄れていくのであります。
都市は荒らされるどころか、人間の国内での南北格差問題などで不遇な扱いを受けていたリューンハイトは、むしろ王国の枷を外されて、発展すらはじめてしまうわけです。もちろん、対魔族感情の拗れや宗教問題、他都市からの奪還軍の襲来など各種の問題は襲い掛かってくるのですけれど、このへんかなりイージーモードでサクサクっと解決していくんですよね。まあ実際は侵略下の支配地域の統治がこれほど穏当に済むはずがないんですけれど、ヴァイトくんの人徳か、或いは登場人物たちの醸しだす和気藹々とした雰囲気が許してくれるのか、このサクサクっと進んでいく感じが安易ではなく心地よく面白いんですよねえ。
それだけ、ヴァイトくんだけではなく、脇を固めるキャラクターたちも懐っこい愛着が湧いてしまうキャラばっかりなのが、なかなか侮れない要因でして。
ヒロインとしては、表紙にもなっているリューンハイト領主のアイリア卿なんでしょうけれど、あんまり特定のヒロインがいる、という感じでもないんだよなあ。ヴァイトくん、仕事優先ですし。
しかし、そりゃ上司がこれだけ理解あって、部下とも関係良好で、同僚とも仲が良くて、支配下との人間たちとも上手いことやれてて、とこれだけ環境良かったら仕事も楽しいでしょう。羨ましい。まあ、これだけの環境を維持していることこそ、彼の能力と人柄の賜物なんでしょうけれど。でも、中間管理職の悲哀とかは縁なさそう。羨ましい。