東京異界のバリスタ (GA文庫)

【東京異界のバリスタ】 手島史詞/ファルまろ GA文庫

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「なんでも解決してくれるって聞いて来たんです。兄のクリスを探してください」

異世界と繋がり、魔法使いが跋扈する『東京異界』で営業中の珈琲専門店
《ストラーダ》に記憶喪失の少女・フリッカが転がり込んできた。

「君は、フリウなんだろうか……。帰ったきたのか――確証が欲しい」

何でも屋を兼業する珈琲係(バリスタ)の燈志郎は、捜し続けている少女・フリウと瓜二つな
フリッカの正体をつきとめるために、唯一の手掛かりであるクリスを捜す。
しかし、真相に近付く燈志郎の前に、凄腕の魔法使い《印持ち》が現れて――

「俺の魔法は弩弓(バリスタ)、的は外さない!!」

燈志郎は少女との大切な記憶を取り戻すため、世界の理を撃ち抜く!?
異界冒険ファンタジー開幕の時!!
ああ、そういえばコーヒーを扱うバリスタと、武器のバリスタって読み方一緒だなあ、語源も繋がってるのかしら、と調べてみたらそもそも綴りからして違う。語源からして、軽食喫茶を意味する「bar」に基づくバリスタ(barista)と、ラテン語の弾道から意味を取った弩弓のバリスタ(ballista)とでは繋がる部分はないですし、きっとネイティブは発音的にも別物だと思うのですけれど、カタカナで見るなら名前の音が一緒。語呂合わせの一種ではあるのですが、主人公は日本人ですし音の共通性に意味を見出すのは非常に魔術的でよろしいんじゃないでしょうか。尤も、本作における魔法は大系立てられたものではなく、むしろ後天的とはいえ天然に発現した異能力なので、果たして語呂合わせにどれだけの意味がコメられているかは怪しいところなのですけれど、フリウとの思い出の重要な部分に珈琲を入れてあげる自分、というものがあった燈志郎に「バリスタ」の能力が発現したのは、物語的には意味があるんだろうか。
作中では、東京を異界に沈めた霧の発生によって大切なものを喪った人に魔法は発現する、と説明されているけれど、その能力の内容と喪ったモノとの共通点については語られていないし、実証例も少ないのでなんとも言えないのだけれど。
東京が異界に沈んだ三年前に行方不明になっていたフリウを探し続けていた燈志郎の前に現れた、三年より前の記憶を持たない少女フリッカ。いや、どう見てもどう考えてもフリウと同一人物すぎて、いかに性格が違っても人格が異なっていても、本人以外の何者でもないだろう、という前提すぎて、もしかしてそう見せかけて別人だったり、と疑ってしまったのですが、さすがにそこまでいじわるな話ではなかったようで……でも、そうなるとフリッカのプライベートに踏み込もうとせずに様子を伺っている燈志郎にやきもきしたり。フリッカ側の事情が繊細であると同時に、記憶喪失という色々と気を使ってあげないといけない状況にある彼女に慮っているのはわかるのだけれど、それとやきもきするのはまた別の話。
フリッカの情緒面が擦り切れ気味に不安定になっている分、慎重なアプローチは間違いではなかったんでしょうし、フリッカとしても無神経に色々と踏み込んで来られるよりは好印象を稼いでいたみたいだけれど、燈志郎のフリッカへのそれは若干ながらヤンデレ気味の傾向があるような気すら感じられるんですよね。いや、ヤンデレみたいな攻撃的なものではないんですけれど、拗らせているみたいなところがあって、一途なのはいいんですけれど、世が世ならそれって女の子には引かれそうなスタイルなんじゃなかろうか、と思わず苦笑してしまったり。さて、そういう一面を可愛い、と評価される筋もあるのかもしれませんが。まあその献身さは、記憶のないはずの、そして情緒面で擦り切れてしまっていたはずのフリッカを順調に切り崩すことに成功しているので、このケースにおいては燈志郎のそれは間違っていないのでしょう。やっぱり微苦笑を誘われてしまうのですが。フリッカは面倒くさそうに見えて、これはこれでチョロいよなあ……。

燈志郎の魔法は、これ魔法の能力もそれなりに強力だけれど、それ以上に燈志郎の技量がずば抜けているような。印持ちの強力さは単純に出力の差や規模の違いみたいだけれど、夜会に積極的に出るような魔法使いのレベルって、魔法の強さは別カウントでみんな燈志郎クラスの戦技持ちなんだろうか。それとも、彼が特別なのか。次はもうちょい魔法使い同士の話になってくれたら、そのへんもわかってくるのだろうけれど。

手島史詞作品感想