戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉3 (HJ文庫)

【戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉 3】 SOW/ザザ HJ文庫

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スヴェンとジェコブは新営業戦略として隣町サウプンクトにパンの出張販売に訪れていた。しかし、そこで起きたジェコブの運命的な出会いが「トッカーブロート」を揺るがす大事件の発端になろうとは。ジェコブを巡るパン売り上げ戦争の勃発にワイルティア親衛隊の思惑が絡み、事件は混迷化の一途を辿る。果たしてルートに安寧の日は来るのか!?
ここで見事なレベッカ推し。スヴェンの姉妹機にあたるものの、情緒豊かを通り越してやや過剰な感すらあるスヴェンに対して、レベッカは実に機械的に何の感情も挟まず、監視任務も命令通り密かに粛々と続けていて、これまで本当に本編には関わることなく傍観者に徹していたのですけれど……レベッカもスヴェンの姉妹機ということは元は人型強襲兵器のサポートAIであり、本来なら相棒であった搭乗者がいたんですよねえ。
今回の話は、レベッカの相棒にも深く関わってくる話となり、彼女も無関係ではいられない……いや、無関係で居ようと思えばなんぼでも居られたはずなのですけれど、レベッカもレベッカで乙女よなあ。
ってか、このAIたちみんな揃って情熱的な乙女すぎる(笑
常識はずれなスヴェンと違って、レベッカは実にオーソドックスなクール系機械少女と言えるのでしょうけれど、その秘めた想い、ずっと心に宿している相棒への情熱たるやスヴェンにも負けず劣らずの一途っぷりであり、熱量であり、博士博士、あんた相当のマッドでイカレ野郎のくせに、なんでこんな乙女ばっかり作ってるの!?
ってか、ハートが乙女でないと起動しなかったんだろうか。AIであった段階ではスヴェンもレベッカも性別はなかったみたいなのにねえ。
しかし、相棒であったルートに一直線でアプローチできているスヴェンに対して、レベッカの方はもう少し複雑な話になってるんですよねえ。レベッカの相棒にはちゃんと相手がいるわけで、彼女はそのままジェコブの方に行くんだろうか。

パン屋になってもやたらと国絡みのゴタゴタに巻き込まれるルートですけれど、彼の場合銀狼の勇名に誘われて向こうから事件がやってくる、というわけではなくて、本当に誰かが後ろで糸を引いているというわけではなく偶然巻き込まれてるんですよねえ。スヴェン絡みでもありませんしねえ。スティーブン・セガールでもあるまいに(笑
でも、ルートが偶然巻き込まれている事件はどれも単発で起こっているものではなく、悪化しつつある国内事情にまつわるものでもあり、一連なりになっているとも言えるわけでなんとなく雰囲気が戦後の混乱期から安定に向かうのではなく、むしろ大きな戦乱の前を感じさせるような不穏な雰囲気になってきてるんですよねえ。
その原因となっている人物が今回明確にされたわけですけれど……国軍と親衛隊の内部抗争という構図になりつつあるのかー。これもう、組織内のパワーゲームで収まる雰囲気じゃないじゃないですか。内乱になってもおかしくなさそうなのが何ともはや。
シャイロック爺さんという辣腕の武器商人にして、被差別民族の側にある登場人物として、このシリーズで一貫して触れている民族問題、戦勝国と敗戦国の意識格差、階級による貧困差別などに関しても、欠かさずグイグイと蹴りこむ話になってますし、バックグラウンドのきな臭さは寄り濃くなってる感じだなあ。
果たして、一パン屋としてこれらの問題にどれだけ立ち向かっていけるのか。でも少なくとも、今までは「パン屋」としてこれらのややこしい問題の数々に、地元だけとはいえ改善傾向に持ってってるのだから、実に真っ当にパン屋として戦っているんですよねえ。単に戦闘で戦ってるだけじゃない、というのはホント偉いと思いますよ。

シリーズ感想