じっと見つめる君は堕天使 (角川スニーカー文庫)

【じっと見つめる君は堕天使】 にゃお/R_りんご 角川スニーカー文庫

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Kindle B☆W

高校生・荒波浩之(あらなみひろゆき)の部屋に、天井をぶち抜いて現れた美少女サラサ。やる気のないジト目な彼女は、天使学院卒業試験の追試で人間界に送られた天人(てんじん)界の住人だった! 人間界で契約者(パートナー)を幸せに導けなければ、劣等生サラサは天使になれず、天人界にも戻れないのだが。
サラサにはまったくその気がなく、ジャージ姿で煎餅をバリボリ……。

ぐうたら天使候補生を愛でる? 日常観察系ラブコメ!
これは主人公、誤解されても仕方ないかなあ。言動は荒っぽいし、カッとなるとナニするかわからないところがあるし。ちゃんと付き合って見れば、優しい人だとわかるし、彼が怒るのは周りの人たちが理不尽な目にあっている時くらいなものなんだけれど、そもそも傍目からして近寄りがたい人間なんだから、そうやってわかってくれる人は少なくなってしまうという循環作用。
ちゃんと付き合うには、相応に腰を据えてかからないといけないタイプなんですよねえ、この主人公。だからか、交友関係は深くて狭い。実のところ、面倒臭さでは堕落系天使のサラサとあんまり変わらないんじゃないだろうか、浩之ちゃん。まあ、こういう彼だからこそ、重たい系ヒロインを自分から背負いに行こうとするんでしょうけれど。
出会って数ヶ月ですぐに結婚してしまうパターンって、けっこうこんな感じなのかもしれない。ああいうのって、男も女も性格とか考え方が軽快であるからこそ勢いで行ってしまうのかと思ってたけれど、むしろ逆で双方ともに重たいタイプだからこそ、中途半端は良しとせず一生を賭けてしまう、というケースも決して珍しくはないのかもしれない、とふと思ってしまったり。

やる気のないヒキニートとしてソラから降ってきてそのまま部屋に居着いてしまったサラサだけれど、ダラダラ堕天使生活はわりと早々に引き払って、学校に通いだして活発に活動しだしてしまうんですよね。あんまり堕天使らしくない。
そもそも堕落を抉らせていたのも、自分に対する優遇特別扱いとそれに反比例するような愛情の感じられない無機質な扱いへの反発や失望みたいなものだったので、根っからサボるのが好き、なにもしたくない性格、というわけではなかったんですよね。いや、すでに拭えないくらい染み付いてしまった感はあるのですが。
こういう堕落系天使だと、ラノベじゃなくて漫画だけれど【ガブリールドロップアウト】という傑作が真っ先に思い浮かんでしまうので、それに比べると非常に勤勉かつシリアスである。
でも、この作者の筆のタイプとして、冒頭のような強引な展開のコメディよりも、学園生活編の個々の生徒たちが抱える問題を、みんなで真剣に向き合って解決していくような青春モノの方が質感としてしっくり来る感じがあったので、早々にサラサを更生させて一緒に学校に行くようにしたのは良かったんじゃないかな。
一方で、調子に乗ったサラサのお喋りのテンポは見ていても楽しかったので、彼女を中心とした賑やかな学園日常モノでも面白そうではありましたけれど。
まあ、お話としてはこの一巻できっちり片が付いているので、シリーズ化するのかはわかりませんが。