疾走れ、撃て! (11) (MF文庫J)

【疾走れ、撃て! 11】 神野オキナ/refeia MF文庫J

Amazon
Kindle B☆W

理宇が鷹乃と二人きり、見知らぬ砂漠の暗闇に放り出されて一週間。果てしない砂上と轟雷・改の狭いコクピットの中だけでの生存を余儀なくされた極限生活は二人の精神を徐々に削っていく……。一方、二人の帰還を祈る虎紅とミヅキは、連合軍の指揮官陣による事実上の撤退指令を跳ね返し、最前線に立ち続けていた。
「私はつねにベストを選択しているのです。だからあなたたちは生きている」
しかしその間にも理宇たちの「作戦遂行中行方不明認定」期限は刻々と迫る……!
神野オキナが贈る新感覚軍隊青春ラブコメ、極限・緊迫の第11弾!
これは……五巳さん泣いてるじゃんよ。うわぁ〜ん、これは一番辛い泣き方だよぉ。
この展開は、五巳さんには残酷すぎるよなあ。端から手に入らなければもっと諦めもついたかもしれないのに、絶対的なまでにアドバンテージを得て、これ以上ないほど満たされて……にも関わらず、自分から手放さないといけないという選択、もしワガママを通せば比喩ではなく人類が滅びるという地獄の選択。自らの幸せ、恋の成就、愛の甘受と引き換えに、家族や友や仲間の命と未来を選択させる。それを、わずか17歳の少女に選ばせる。繰り返すけれど、ここまで身も心も浸しあった関係になっておきながら、それをなかったことにするなんて、蜜の味を知ってしまったあとに、こんな仕打ちをするなんて、本当にもうなんというか、筆舌に尽くしがたい。
そのあとの展開がまた悪魔か、というようなもので、幾らなんでも五巳さんの心をベキベキに折りすぎですよぉ。
ただ、五巳さんのお兄さんの件に関しては、太刀風提督の戦死の件も含めてどうも不審な点があるんですよね。……あの幕間での会話、一見加藤教官と伊達教官のそれのように装われてますけれど、状況的にちょっと不審すぎるし。そもそも、太刀風提督のふげんの件はあまりにも唐突というか、訳がわからないタイミングなんですよね、物語的に。戦場での冷徹でそっけない論理に基づくならば、別段なんの不思議もないとも言えるのですけれど、さすがに五巳さんのお兄さんのあの怪しげな振る舞いまで見せられると、うがってみてしまいます。
そうでなくても、このままだとあまりにも五巳さんが哀れすぎるもんなあ。

ぶっちゃけ、理宇に甲斐性見せろよ、と言ってしまうのが一番簡単なんでしょうけれど……。ってか、五巳さんに自分から言わせてしまう時点で思うところは多々あるのですけれど、彼は彼で自分が生きて帰ることを望まれていない、と理解している時点で、五巳さんを自分の側に置き続けることが果たして良いことなのか、迷う要素はあるんですよね。理宇にとって、一緒に死んで欲しいとまで言えてしまうのは、やはり虎紅とミヅキだけでしょうから。とはいえ、だからこそやっぱり五巳さんに自分から言わせてしまったのはなあ。
でも、五巳さんの最後の矜持というか縋る拠り所を思うと、理宇から突き放されてしまうと、虎紅とミヅキへの最後の強がりすら出来ない状況に追い込まれてしまうわけで……。
まああれだよね、本気で理宇が自分に望まれていることを無視してでも、世界を敵に回してでも、世界を救ったあとに魔王となってしまうのだとしても、一緒に死ぬのではなく、生きて、自分を愛してくれる娘たちを愛して幸せにする未来を勝ち取る覚悟が出来たなら、そこでようやく五巳さんを泣かせない選択が出来るんじゃなかろうか。
ってかこのままだと、少佐とミヅキ、試合に勝って勝負に負けたようなもので、思いっきり後々まで尾を引きますよ、これ。負け犬のまんまですよ、これ。ちゃんと、同じステージに立って勝負しないと。
理宇には、もっともっと欲張りになってほしいものです。

世間の皆様の大好きな「栄光ある敗北」なんて、それこそ足蹴にしてもいいんですよ?


シリーズ感想