ダメ魔騎士の英雄煌路(ヘルトシュトラッセ) (MF文庫J)

【ダメ魔騎士の英雄煌路(ヘルトシュトラッセ)】 藤木わしろ/山本ケイジ MF文庫J


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騎士国家センタリアの下級魔騎士アルフは、仕事には毎日遅刻&サボり、模擬試合でも全敗、周囲から恋人関係と誤解されるような妹・アンリの世話を受け、公私ともにダメの烙印を押されている。しかし、亡き両親の思い出の詰まった大切な自宅が出火、焼失。アルフは家の再建のため、武闘大会『騎士祭典』での優勝を目指す。だが―「あなたを更生するのが私の仕事です」手段を選ばないアルフの卑怯な戦い方に幼馴染のセンタリア王姫・リーネの怒りが爆発、ダメダメなアルフの更生に乗り出して!?第11回MF文庫Jライトノベル新人賞受賞のネクストヒーローファンタジー!

ウラとオモテの使い分け、建前と実際のやりくりが出来ない、という意味ではアルフって思考の切れ味はあっても、リーネと生き方の不器用さでは大して変わんないんじゃなかろうか。実直さと真面目さに欠ける分、アルフのそれはひどい体たらくなのですけれど。
その点、リーネの兄ちゃんの王様はいい具合に腹黒で、どうもお国柄として脳筋集団らしい騎士国としてはこの人が頭というのは良かったんじゃなかろうか。
ぶっちゃけ、リーネじゃなくて兄ちゃんが王様である以上、アルフの危惧するようなこの国の問題点、ネックとなる部分について放置しているとは思わないんだけれど、アルフがああやって出る杭をやってくれるなら、やりやすくはなるんだろうなあ。
まあアルフって、公私のうちほぼ満額、私の部分で動いてるんですよね。その私の部分に、亡くなった父親が国の英雄だったこと。大切に思っている幼なじみがこの国のお姫様であること、というのが深く根付いているために、この国そのものに彼の私の部分が寄りかかっちゃってるんだけれど。
それだけじゃなく、魔騎士というモノに対するコンプレックスみたいなものも強いんだろうなあ、というのがその嫌いっぷりとこだわりからも透けて見えてくるわけで。ほんとに嫌いなだけだったら、もうちょっと関わり方というものもあるんですよね。それを、わざわざ魔騎士でありつつ、その在りようを否定するようなやり方に終始している。それは、そうするしか彼にはやり方がない、というところもあるのだけれど、愛憎ゆえに、という捻くれた拗ねた感情もまあ見えるような見えないような。
自分の卑怯卑劣なやり方を、この国の頭の固い連中には出来ないことだと喧伝しつつ、その方が正しいのだとは誇らない。むしろ嫌われること上等、と鼻を鳴らしているところに、素直じゃないモノを感じるわけで。
同時に、上辺だけ騎士道を取り繕って裏では汚いことをやってる連中に対しては、心底怒りを見せてるんですよね。もうこの子、本当は真っ当で真っ直ぐな魔騎士の道に、憧れてたんやなあ、と。それが出来ない自分が本当に悔しくて、そういう騎士道を守りたいが故に自分が泥を被るのを厭わんつもりなんだなあ、と。プラスそのコンプレックスから、捻くれた拗ねた態度取ってるんだなあ、なんて思うわけですよ。
で、その守りたいかっこ良いものの象徴が、英雄だった親父さんであり、今の姫さんなわけだ。
若いのう。
まあ、英雄の息子で国王兄妹の家族ぐるみの幼なじみ、という立場のボンボン故の部分も大きい気がしますけど、一方で彼を停滞させていたのは父親の死であり、それをもたらしてしまったのは魔騎士としてのカッコいい生き方だったわけで。父親の死は、彼ともども妹にも心の閉塞、お互いへの依存構造をもたらしてしまったわけで、憧れに対して捻くれてしまうのも無理ないのか。それで結局、自分の命を軽々とベットしてしまうわけですから、死んでしまった父親に恨みつらみ言えたもんじゃないぞ、若いのや。
あと、サボりはどう言い訳してもサボり以外のナニモノでもないわい、この給料泥棒! 
こういう輩には、ちゃんと責任負わせた方がいいと思うので、むしろ姫さんとの結婚は正解だと思いますよ、お兄さん国王陛下。アルフの尻叩いてる姫さんはイキイキしてますしねえ。