そんな世界は壊してしまえ ‐クオリディア・コード‐ (MF文庫J)

【そんな世界は壊してしまえ ‐クオリディア・コード‐】 さがら総/カントク MF文庫J

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Kindle B☆W
人類の『敵』――“アンノウン"の襲撃により世界が崩壊した近未来。湾岸防衛都市東京の学園に所属する朱雀壱弥は――人類を愛しすぎていた。全人類の発展のため、美少女の告白をバッキバキに叩き潰し、戦わない同級生の心をボッキボキに叩き折る。デート? カップル? それはこの世界でどんな意味が? なにもかもを論理で語れ。自分の正義を信じてやまない朱雀に、謎の転校生少女の調査任務が与えられ……? 「人類が好きか?」「大好きです! 」「なんでもできるか?」「なんでもします! 」ポジティブクズとドM天使が出会い、新たなる変態ストーリーの幕が上がる――!
『変態王子と笑わない猫。』コンビが贈る青春ラブコメの最前線! 刮目せよ!
人類という総体を愛しているに過ぎなくて、個々の人間の個体には一切興味もなく、総体としての人類に役立つ個体にのみ関心を持って愛でてる、ということ? この主人公。
真面目系クズ、というのじゃなくて単に価値観の違いなんだろうけれど……いや、この総体を愛して個には関心ないって、かなり理解し難いんですけれど。例えば、犬とか猫とかが好きな人って種としての犬猫を好きであっても、個々の犬猫を可愛いと思うからこそ、種としての犬猫も好きなんですよね。個々の犬猫には興味ないのに、総体としての犬猫は愛しまくってるって、想像できないんだよなあ。
駄目だ、本気でわからん。
ロジックとしては理解できても、心理構造がいびつすぎて無理矢理感が否めないんですよね。これだと、名無しのドレッド主席の無機質な個を無視した全体優先主義の方が、環境に培われた非人間性としてあり得るカタチで、そういうのが存在するというのに納得できるんだけれど、朱雀の方は無理やり造った下手くそな人工物的な愛情があって、なんというかわかりやすすぎる。斜め45度にチョップで叩けば治る程度の不具合というか。ちょっと上に被せた幕を外せば正常な感性が現れる、くらいの価値観でこれは、修正しやすそう。
噛み合わない朱雀とつぐみの掛け合いとか、カナリアのやればやるほど哀れなことになっていく訓練のポンコツさは面白かったけれど……。頭のオカシイキャラって、本当に骨の髄まで頭おかしくないと……というと語弊があるか、それぞれが持つ固有の価値観がブレないキャラでないと、どうしても浅くなるんですよね。もし、その価値観が変わるとき、壊れるとき、価値観が強固だったり強烈だったり、少なくとも簡単にブレないものでなければ、破壊された時のインパクトや痛快感にはやはりどうしても陰りが出てしまう。
その意味では、朱雀もカナリアも言動こそ過激だけれど、価値観の強度に関してはウエハースっぽく感じてしまって、タイトルにもあるような東京というエリアの価値観の破壊に対する痛快感に関しては、どうもあんまり盛り上がりを感じなさそうなのが、ちと残念で物足りないか。
名前も出てこない主席も、存在感薄いしなあ。あの捨てられた娘も、現場であんな風に切り捨てられるのは非常識で非合理だと思うけれど、自分の独りよがりな行動を反省もせずおんなじことを繰り返して失敗するわ、許してもらえると端から甘えた考えを抱いていたことやら、自業自得もいいところでさっぱり同情も湧かなかったですしねえ。
コント劇場はほんと、笑えて楽しかったんで次も読むつもりですけれど、シリアスサイドが増えてくるとどうかなあ。