偉大なる大元帥の転身2 勇者と炎上トーナメント (ファミ通文庫)

【偉大なる大元帥の転身 2.勇者と炎上トーナメント】 竹岡葉月/ともぞ ファミ通文庫

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「帰っておいでよ、ヴェーレス」
合同調査から戻ったケータに、四天王の一人である百獣族の族長ベスティアリは告げた。その勝手な言い分に、怒りながらも心がざわめくケータ。そんな折、フレッドフォード召喚学院は、年に一度開催される創立祭の準備に沸いていた。成績上位者のみが参加を許されたイベントの華――精霊召喚タッグトーナメントで、優勝を目指して闘志を燃やすイリスたち。
それを尻目にケータは、光の勇者や“白の腕"が賓客として集結するその日こそ、元の世界に還る糸口が掴めるのではないかと意気込むのだが……。なぜか天才少女ライラとペアを組んで、タッグトーナメントに出場することに!?
波乱の出直し異世界転戦記、待望の第2巻!
魔王さまが表紙にでーんと出てるんで、ついに魔王さまご出馬か、と思ったら全然登場しなかった!!
あかんやん、引きこもったまんまやん。
引きこもったままで動向が伺えないままなら、分からないからこそ無視出来そうな気もするんですけれど、よりにも寄って魔王さまに命じられたわけでもないのに、ベスティアリが来ちゃったからなあ。
その理由があれですよ。魔王さま、凹んでるから帰ってきてあげて、って……。部下に気を使わすなよー。どんだけしょんぼりしてたんだ、魔王さま。ベスティアリは、部下であると同時に同姓の友人という意識があるみたいなので、余計に魔王さまの気持ち慮って余計なお世話をしにくてくれたんだろうけれど、もう完全にこれ痴話げんかの仲裁ですよね〜。
でも敢えて言うなら、自分で来い!
いや、ベスティアリに行ってください、と頼んだわけじゃなく彼女が勝手に来たのだから仕方ないんだけれど、それだけ心配させてしまうくらい凹んじゃってるなら、もうちょっと自分でなんとかしましょうよ。膝抱えて引きこもってるのか。やりかねない、と思わせられる魔王さま像。実際はちゃんと働いてるんだろうけれど。
でも、魔王さまが悪いんですよねえ。悪いと言い切っちゃうのも何だけれど、魔王さま寄りのベスティアリからして、ケータが可哀想と言っちゃうくらい魔王さまがヘタを打ってしまってるんですよね。
魔王さまもわりとか弱い儚げな少女系なんで仕方ないっちゃ仕方ないんですけれど……男の子の心は乙女のように繊細で壊れやすいんですのよ!?
一途系なら尚更に。女の子も面倒くさいかもしらんが、男の子だってそれ以上に面倒くさいのだ。女々しいし乙女だし、拗ねるし根に持つのだ。みっともないというなかれ、それが自然というものなのである。
ベスティアリとしては、悪いのは魔王さまだし大元帥には大変同情さし上げるが、ここはどうかそっちが折れてくださいよ、って頭をさげに来てるんですよね。態度、奔放で偉そうで自由極まりないけれど、真摯なんですよね。部下としてではなくフードゥの友人として、お願いしにきてたわけだ。
だが断る! と蹴っ飛ばすケータはノーと言える日本人ですね、流石です。
いやうん、ベスティアリには悪いけれど、ここは譲らん方がいいよ。ちゃんと、魔王さま本人に来てもらった方がいいよ。でないと、多分拗れる。お互い面倒くさいタイプなだけに、間に入って取り持ってもらったら格好はつくかもしれないけれど、変な距離で固まっちゃう。
あの魔王さまを動かすのは、相当に大変っぽいけれど。

さて、ゴタゴタは人間の学園サイドでも進行中で、前回ライラだけ地上に取り残されて死線を潜らなかったことが、こうも影響出てくるとは……。
本人はまったく悪くないどころか、クラスメイトたちを助けるために頑張ったのに、結果として孤立を深めてしまうことになってしまったわけで。地下で戦ったクラスメイトたちも、ライラが悪いとは思っていないのだけれど、それでも死地を一緒にくぐり抜けた戦友意識は、地上に居たライラとは分かち合えないわけで、かねてからのライラの特別扱いと相俟って、人間関係はこじれにこじれまくることに。
ライラもライラで、長年の習性から表面を繕うことに長けていた、というかそれを強いられる人生だっただけに、内面と外面の乖離が酷いことになって、えらいことに。
ケータがこの絡まってしまった結び目を解けたのは、ある意味当事者じゃなかったからなのかなあ。自分と魔王の件に関してはあれだけ意固地になってしまってるくせに。人の事ならよく見える、という部分かもしれないし、形式に拘らずに自由にライラの囚われていた意識を打破してみせるあたりは、ライラのように今の立場に縛られているわけではなく、彼の学生という身分が今唯一絶対のものではなく、大元帥という別の世界をくぐり抜けていた社会経験があってこそ、と思うとなかなか面白い。
ライラは、父の期待する娘としての立場や学生としての自分を捨てられないし、しがみついていかないといけないけれど、ケータは今の立場を「諦める」ことが出来るんですよね。その自由度こそが、思考の幅に繋がるのか。過酷な戦場での経験、というのは彼の強さの要素の一つですけれど、この自由度の大きさも結構占めてる気がするなあ。

で、ケータを召喚した相手も判明したわけだけれど、あれ? 黒幕的なものじゃなくて、アクシデントの要素多めだったの!? これは、召喚時の召喚者側の思惑から現状が相当に外れてしまっていることからも、事態は錯綜していると思われるし、ついにケータの正体に気づく娘も出てきてしまったわけで。
むしろお膳立てが揃って、ここからが混迷していきそう。

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